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北越急行 683系8000番台 スノーラビット
−−−3セク鉄道会社が登場させた最速最新鋭の在来線特急車両−−−

−鉄道車両写真集−
北越急行  681系2000番台  683系8000番台
JR西日本 681系 はくたか用

JR西日本 489系 はくたか 白山色

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北越急行 683系8000番台 N03編成 6両編成、スノーラビット 新潟トランシス製
←金沢、福井@   特急はくたか用    E越後湯沢、和倉温泉→
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参照:JR編成表08年夏版 
特急 はくたか 北越急行 683系8000番台  撮影;2009.3 金沢

特急「はくたか」は日本で初めて160km/h運転した在来線特急です。
かつて長岡経由では果たし得なかった航空機との競争に打ち勝つために
はじき出された所要時間 東京−金沢間 3時間45分を実現するために設定されました。
その鍵となるのが北越急行です。
上越新幹線の接続駅となるJR東日本の越後湯沢を起点とする「はくたか」は六日町から北越急行線に入り、
JR西日本の接続点となる直江津を経由して北陸本線の各都市を目指します。
北越急行は3セクのいわばローカル鉄道です。
しかし、この区間で「はくたか」は160km/h運転をするのです。
新幹線との合わせ技とはいえ、北越急行の高速化なしには「はくたか」は存在し得ないのです。
「はくたか」用に北越急行が用意した車両は、「スノーラビットSnow Rabbit Express」。
当局の珍車ギャラリーでも、681系2000番台 N02編成ということで取り上げました。
ここでは、新潟鉄工製であることをメインにお話しさせていただいたわけですが、
今回は、新「スノーラビット」683系8000番台を取り上げます。

2015年3月の北陸新幹線開業により在来線特急「はくたか」はお役ご免となったことは皆様御存知ですよね。
2005年に登場した683系8000番台は最後のスノーラビットということになります。
思えば683系8000番台は10年しか使わないことが明白だったわけです。
なぜでしょう?今回は、そこんところに着目してみようと思います。

まず「はくたか」の車両分担についてお話を始めます。
「はくたか」は運転開始当時10往復が設定されていました。
そのためには9連×7編成が必要でした。
これを前述の各社が線路延長キロ(正確には営業キロ)の比率で分担し合うことにしたのです。

北越急行:犀潟-六日町間     59.5km:22.8%
JR西日本:直江津-金沢間     117.3km:67.8%
JR東日本:直江津- 犀潟間および六日町- 越後湯沢間  24.7km:9.4%

北越急行…… 7× 0.228 = 1.596(編成)
         →編成は1本単位なので北越急行保有は2編成
JR西日本… 7×0.678 = 4.746(編成)
        →編成は1本単位なのでJR西日本保有は4編成
JR東日本… 7× 0.094 = 0.658(編成)
         →編成は1本単位なのでJR東日本保有は1編成
と決定されました。
ただ、予備編成については、0.746切り下げとなったJR西日本が分担し、結果5編成となりました。(その分、福井、和倉温泉行きを設定)

ところで「はくたか」の運転区間は、越後湯沢〜糸魚川間が直流1500V、
糸魚川〜金沢間が交流20000Vと異なる電源方式となっているため、
用意する車両は交直流電車が必要になります。
各社は、この基本的な仕様(動力方式)に加え、
車両寸法、保安装置(ATSなど)、無線装置などを協議して取り決め、車両を準備しました。
さて、「はくたか」は日本で初めて160km/h運転する在来線特急です。
しかしJR西日本区間では130km/h運転です。
JR東日本においても上越新幹線の接続速達列車を設定するというだけで列車の高速化自体には寄与していません。

結果的に各社が準備した車両はというと、
JR西日本は同社が開発した160km/h運転対応車両である681系を新造しました。
(開業からしばらくの間、4編成中2編成は485系を使用。)

北越急行としても160km/h運転対応車両を用意しないわけにはいきません。
また極力使用車両を統一しておくことが好ましいことから、
JR西日本と全く同一の681系2000番台を2編成を自社発注。開業に備えました。

そしてJR東日本はというと、国鉄時代からの標準型交直流特急といえる485系のリニューアル車でした。
JR東日本の485系3000番台も160km/h運転対応?。まさか。
JR東日本は、160km/h運転対応の車両を用意できなかったということです。

「はくたか」の利用者数は増加傾向にあり、増発のニーズがありました。
しかし、1編成だけ485系が混在する状況下にあって増発は困難な状況だったのです。
一方、北越急行としては、160km/h運転を実施するために、地上施設についても多額の投資をしているのです。
首都圏と北陸を往来する多くのお客様の支持を勝ち取り「はくたか」をさらに発展させるため、
なんとか485系を160km/h運転対応車両への置き換えたいという思いがありました。
それはJR東日本の485系にあてがわれた1往復だけの問題ではありません。
160km/h運転対応車両で統一できれば、おそい「はくたか」はなくなります。
またすべての編成が制約なく共通運用できるようになり、車輌の運用効率も向上するのです。
さすれば現在の編成数でも増発の可能性もでてくるのです。

となれば、JR東日本が485系3000番台を置き換える。というのが筋というものです。
「はくたか」用車輌をJR東日本は1編成だけ準備すればいいことになります。
ところが実際にはそう単純にはいかないのです。
「はくたか」用車両は、交流直流両用でなければならないと前述しましたが、
交流区間(糸魚川〜金沢間)の周波数は60ヘルツです。
ところがJR東日本管内は交流区間の周波数は50ヘルツですので、
将来この車両が「はくたか」運用から離れ、他線に転用するには50ヘルツを含めた3電源の車両が必要となります。
新形式の電車を開発設計するためにはそれだけで何億円ものお金がかかります。
たった1編成のために、これほどのパフォーマンスをもった新たに車輌開発・設計をするのは決して効率的なことではないのです。
それでは、681系をJR東日本が購入し、681系7000番台などとする手もあります。
それでもたった1編成の異端児です。
どこか他線に転用した際、メンテナンスなどで厄介者となってしまうでしょう。
(もっともJR西日本の車両に対する考え方やアイデア、ノウハウを学ぶいい機会だとも思います。
しかしそれはJR東日本のプライドが許さない?。)

結局2005年、「はくたか」用に増備された車両は、北越急行が用意しました。
JR東日本、JR西日本、北越急行の三社が、一定の割合で「はくたか」用車両を持ち合ってきたのは、
初期投資を各社が分担するということと、車輌使用料の清算がなるべく出ないようにするためでしたが、
JR東日本がその運用権を北越急行に譲渡し、車両使用料を支払うという決断を下したのです。

こうして生まれたのが、北越急行683系8000番台です。

681系ではなく683系という新形式で登場したことにご注目ください。
ちなみにJR西日本の683系は160km/h運転対応車両ではありません。
683系は、2001年の681系量産車登場から6年という時間を経て登場した−いわば681系のバージョンアップタイプというべき存在です。
見た目そう変わらないとおっしゃる方もいますが、車体をアルミ製とした最新鋭車両です。
でも160km/h運転対応の「はくたか」用683系をJR西日本は増備しませんでした。
681系を凌ぐ性能を683系は持っていなかったのでしょうか。
いやいや、潜在的な能力はありました。
しかし160km/h運転対応とするためには、まずブレーキの構造を変えなければなりませんでした。
強力なブレーキ力を引き出すためにはブレーキシューで踏面を押さえつける従来型のタイプでは不十分で、
ディスクブレーキのように車輪を挟み込むキャリパー式としなければならなかったのです。
またトンネル進入進出時の内外気圧差も大きく、これに対応した車体であることも要求されました。
さらに信号システムも160km/h運転対応の独自のものです。

北越急行の683系はJR西日本の683系をお色直ししたものとはワケが違うのです。

北越急行としては、681系の増備ですませたかったでしょうね。
あと10年とわかっていても、あえて160km/h運転対応683系を自社で増備した北越急行。
JR東日本への車両使用料の支払いがなくなり、
逆にJR東日本・JR西日本から車両使用料を受け取ることができるという計算もあったでしょう。
でもそれ以上に、北陸新幹線開業後の経営を考え、
「はくたか」を増発、好調な間に出来うる限りの収益をあげておきたかったのです。
(160km/h運転対応車両のみになった段階で12往復へ、最終的にはJR西日本も1編成追加し、13往復に)

くびきのを過激に駆け抜けたスノーラビットたち。
思えば最速の在来線特急は単線区間を走っていたのです。
事故ともなれば、目も当てられない大惨事が必至です−−−。

北陸新幹線開業により、北越急行683系8000番台は、681系2000番台とともに無事その使命を終えました。

JR西日本に譲渡され、金沢以西でしか もうその姿を見ることができなくなった彼女たちを
北越急行の人々は、万感の思いで見送ったに違いありません。


参考文献:「北越急行”はくたか”の時代」大熊孝夫氏 鉄道ファン #646 2015.2 



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