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  JR東海 300系試作車  2004.1.10UP
2007.5.26 Renewal
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 J鉄局TOP珍車ギャラリー>JR東海 300系9000番台 試作車
JR東海 322−9001(300系新幹線試作車) 322-9001 (300系試作車) 1990年2月 日立製作所 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
26.050 3.380 4.440 39.4
駆動方式 制御器 モーター(kw) ギア比
平行カルダン VVVF誘導電気
駆動方式
TMT−1 2.96
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
交流回生ブレーキ
電気指令式空気ブレーキ
100 床下搭載 TDT203
鉄道車両諸元表(電車):出典はJR全車両ハンドブック 95
322-9001。300系試作車です 1−4号車;川崎重工業製  5−10号車;日本車輌製  11-16号車;日立製作所製
JR東海 300系新幹線 322−17
−鉄道車両写真集−
300系9000番台 J1編成    100系9000番台 X1編成
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−鉄道資料室−
 東海道山陽新幹線 車両データ
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322-17 300系量産車です。 試作車とは前部のスカートの形状と運転台の窓の形状が違います。

写真上の300系9000番台は、私が浜松駅から乗車した「ひかり」に使用されていたものです。
 内装がいつもと違うような気がしたので番号を確認し「やったー!」とばかりに下車駅の東京で撮影したものです。

 一心不乱にホームを駆け抜け、肩で息をしながら撮影したのが懐かしい…・

さよなら、300系試作車(J1編成)
   ここでもう一度、彼らの凄さを振り返ってみたいと思います。

 とうとう新幹線300系試作車編成(J1編成)が姿を消すことになりました。
 当J鉄局”珍車ギャラリー”のトップを飾った車両でもあり、廃車されることは、残念でならないのですが、
これを機に、もう一度300系試作車のことを振り返ってみたいと思います。

 東京-大阪間2時間30分

 300系試作車は、東京-大阪間を2時間30分で結ぶことを目標に作られた車両です
鉄道車両開発の歴史は、スピードの限界に挑戦することばかりが目立ちますが、
実際の営業路線は山あり谷あり、そしてカーブありと最高速度が出せる状況にあるとは限りません。
加えて通勤路線並みの高頻度で列車が走る東海道新幹線において、安全性の確保は言うまでもなく至上命令です。
騒音による環境問題もクリアーしなくてはなりません。

そのような条件下で、はじき出された時速270キロももの凄いことながら、
2時間30分で東京-大阪間を走ることの難しさは並大抵ではないと申せましょう。

でもJR東海は2時間30分にこだわりました。何故でしょう。

 ビジネスマンの気持ち

 私の友人のN川氏は、ヘッドオフィスを東京(虎ノ門)と大阪(堂島)にもつさる企業のビジネスマンです。
月に数回、多いときは十数回という東京出張をこなす彼ですが、
彼によると、2時間30分だからこそ、新幹線にアドバンテージがあるが、3時間だと飛行機を選ぶと言います。
東京-大阪間の料金は、新幹線のぞみ(指−普通)が、定価で14050円(チケットショップで13300円 ネットで調査07.05.25現在)
JALなら定価で20700円(チケットショップで14900円)です。
格安チケットでも1600円新幹線の方が安いのですが、ビジネスマンにとってはこの程度の差であれば、早いほうを優先します。
そこで所要時間です。時間については一概には言えませんが、
飛行機はフライト時間が1時間あまり(関空ならばプラス10分ほど)です。
しかし空港までのアクセスについては、1時間あまり(これまた関空ならばプラス10分ほど)新幹線より余計にかかります。
乗り換えポイントも増えるため2時間30分ならば、新幹線の方が優位に立つのです。
そして 最終「のぞみ」とアーバンネットワークとの終電リレーも、N川氏のお気に入りポイントです。
でも最終「のぞみ」が8時台というのなら値打ちは半減です。
9時台に東京を出発するには、やはり2時間30分運転が欠かせません。

 JR東海の危機意識

 今でこそ「のぞみ」の列車本数が多いことも、東京-大阪間のシェア拡大の大きな要因となっているわけですが、
JR東海発足当時、従来の新幹線システムの上にあぐらをかき、手をこまねいていたなら、どうなっていたでしょうか。
JR東海の旅客運輸収入をみると、在来線の1292億円に対し新幹線は9199億円です。(平成5年度の資料より)
1:9という比率は、他のJR各社には見られないものです。
これほどまでに新幹線に強く依存する分、
JR東海には、飛行機にシェアを奪われるのではないか。という危機意識が強くありました

昭和63年1月。JR東海は、プロジェクトを立ち上げ、300系試作車の具体的な開発設計を同年末より開始します。
そしてその1年後の、平成2年2月に300系試作車は登場することになるのです。なんというスピードでしょう。
300系試作車開発の基本は、当然いままでの新幹線技術の延長線上にあるものです。
しかし、前述のような、かつてない要求の高さを満足させるためには多くの課題が立ちはだかっていました。

 まず輸送力の確保、ビジネスマンのための「のぞみ」

 安定した走行するため重心を低くし、車両断面も小さくしました。
しかしその一方で輸送力の削減は行っていません。定員は1323名。
これは最新鋭のN700形に至るまでJR東海がこだわり続ける数字です。
このあおりで食堂車がなくなるということにもなったわけですが、「のぞみ」は観光列車ではない、
あくまでビジネスマンの支持を得ることこそが至上命令となりました。コンセプトが明確であったことが伺えます。

 次に環境への配慮です。

 先頭形状は、走行抵抗と騒音が少ないものとするため、風洞実験をこないCd値の小さい形状となりました。
パンタグラフについては大型のパンタカバーを付け、3つある内の後方2つを用いることにしました。
パンタグラフ自体についても、より追随性の高い高耐圧のものが求められました。
今でこそあまり新幹線公害という言葉を聞かなくなりましたが、騒音に対する周囲の目は、当時相当に厳しかったのです

 そして、課題の中でもまず達成されなければならなかったものは軽量化です。

 車体は、100系に較べて4割方軽量化しました
これには、アルミ軽合金押し出し形材を用いたことが、大きいのですが、それだけではありません。
インバーター制御にしたのも、軽量小型の交流モーターを採用するためです。
300系試作車のモーターは0系の876kgに対し390kgと45%ほどです。
出力に至っては、0系の185kwに対し、300系は300kwですから、
単位出力あたりの重量、つまりkg/kwでは27%。つまり3分の1以下です。
また交流回生ブレーキを使用することが出来たので、発電ブレーキ用の抵抗器を省略することが出来ました。
このことも重量軽減に寄与しました。
また、台車を軽量化するためにボルスタレス台車を採用。
車内に目を移しても座席の軽量化(1座席あたり100系の28kgから14kgと半減)と 
ありとあらゆるパーツの見直しがなされています。

 営業運転に供された300系試作車−−のぞみシフト−−

 前回の珍車ギャラリーでも、ご紹介しましたが、試作車と一口に言ってもいろいろあります。
今回の300系試作車に求められたレベルは、極めて高いものであって、
営業運転に供さない試験車としてデビューしてもおかしくない気がするくらいです。
しかし、300系試作車は、営業運転に供することを前提に16両編成のユニットで登場しました。
2年にわたる走行試験ののち、300系試作車は、平成4年3月から「のぞみ」としてデビューを果たしました。
営業運転当初、早朝深夜の運転だったのにもかかわらず「のぞみ」は好調でした。
それほど注目度は高かったのです。
0形についても初期故障は多発していますが、300系試作車もたびたびのトラブルに遭遇したようです。 
予備車はありません。しかし、関係者の努力と「のぞみシフト」と呼ばれる徹底した検査チェックが功を奏し、
新幹線は「のぞみ時代」へと着実にその一歩を踏み出しました。
3ヶ月後の平成4年6月には、量産車が登場、J0編成は山陽新幹線での試験に臨みます。
300系試作車は、量産化に向け多くの課題を提供し、当初の使命を全うしました。
そして同年末、量産化改造が施され、J0からJ1編成となったわけですが、
厳しいスケジュールを駆け抜けてきたのが、300系試作車だったともいえるでしょう。

 TGVなどど よく比較される新幹線

 スピード競争だけが先行して、新幹線の本当に良いところが、あまり注目されていないような気がします。
新幹線は、動力分散型の高速鉄道車両ですが、そのことで多くのメリットを獲得しています。
たとえば、TGVでは編成の両端部に動力車を配置し、プッシュプルで列車を牽引します。
当然、動力車は重くなり、軌道に負担をかけてしまうことになります。しかし
新幹線では、重量を分配しているので軌道への負担は軽減されています。

特に300系以後は、省エネルギーの面でも優れていて、
ブレーキ力を電気に変える回生ブレーキは、発電機でもあるモーターを数多く持つ動力分散型こそのメリットといえるでしょう。
東海道新幹線区間でシュミレーションしたところ、乗客一人あたりの消費エネルギーは、TGVの60〜70%で済むとされています。
また、回生ブレーキは、ブレーキシューの取り替えも少なくてすみ、メンテナンス上のメリットもあります。

  N700系デビューの陰に

 JR東海はN700系が、いかに優れたシステムであるか。いろんなメディアを通してアピールされています。
「凄いなあ。」と思うと同時に、そのコンセプトが300系試作車にあったのだという思いを、私はいっそう強く感じています。
 N700系の陰で300系試作車は、その姿を消してゆきます。
先頭車が、1両保存されるという話も聞きましたが、
他は全て解体され、300系のリサイクルに向けた取り組みにデータを残すことが最後の仕事となりました。
解体されてなお、試作車としての使命を全うすることになったそうです。

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 まだ0形が多く走っていた時代のことです。
300系「のぞみ」が、雨に煙る浜松駅を通過していったときの凄さを 私は、忘れることが出来ません。
本当に背筋がゾクゾクっとしたのです。「これが、時速270kmの凄さなのか…」
 
過激に駆け抜けていった300系試作車。その功績を心から讃えたいと思います。


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 東海道山陽新幹線 車両データ
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参考文献;鉄道ファンNo414;特集「新幹線300系」の各記事 1995.10
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