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  JR西日本 U@Tech クモヤ223-9001  2011/06/11 UP
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JR西日本 U@Tech クモヤ223-9001
JR西日本 U@Tech(ユーテック) クモヤ223−9001 スペック 
モーター WMT-926   出力 270kw×4   ギヤ比 98:15
制御装置 WPC-902 1C1M
2レベルPWM制御 IGBT VVVFインバータ制御
M台車 WDT-56XA
ブレーキ;回生、発電協調ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキほか
参考;鉄道ピクトリアル 鉄道車両年鑑2005年版 」No767 2005.10
R西日本 U@Tech(ユーテック)編成表    
←米原                            下関→
クモヤ223-9001 サヤ213-1 クヤ212-1
もとクモハ223-9001 もとサハ213-1 もとクロ212-1
JR西日本 U@Tech クモヤ223−9001             撮影 2004.11  京都駅

JR西日本の在来線技術試験車「U@Tech(ユーテック)」

U@tech(ユーテック)は、JR西日本の「在来線技術試験車」として、
2004年10月、デビューしました。

U@techの意味は、yoU(利用客) 、Urban Network 、Ubiquitous(ユビキタス 偏在) 、fUture(未来) を表すUに、
technologyを組み合わせたものだそうですが、
在来線改革のためのtechnologyとして何をこの試験車に求めたのでしょう。

まずは、地上との大容量デジタルデータ伝送です。
地上と車両を3〜10Mbpsという高速大容量通信で結ぶ「沿線無線WAN」が搭載されました。
たとえば何か事故やトラブルがあった場合に映像や故障データを発信し、乗務員に対し迅速に適切な支援を行うことが可能になります。
地上の保守作業員にとってもこれは保安上有効な情報となるでしょう。
また駅や車両基地などでもより早く対応策を練ることができます。

これならLANでもいいじゃないかとも思うのですが、
むしろWANのほうがコスト面で優位なのかなという気もします。
加えて乗客にとっても、正確でリアルタイムな運行情報はありがたいものです。
となれば、やはりインターネットですね。

車両をコントロールするデータ伝送もデジタル化されました。
各車両に端末を配置し、基幹配線はイーサネットを利用した10Mbpsのものを、各機器間にはRS485接続の500kbpsのものを配線しました。
これらはラダー状の2重配線になっており信頼性を向上させています。

台車はWDT-56XAですが静粛かつ乗り心地のよい次世代の走り装置を目指して、試験台車を導入する予定です。
これは、これまでの実績や研究のもとに台車の設計パラメータを変更したり試験部品を取り付けられるようになったもので、
様々なデータの収集が期待されるものです。

モータも270kwという223系中最強のものを搭載してデビューしました。
最高速度は130km/hで、加減速度も223系2000番台と同じです。
なお新開発の永久磁石同期電動機を試験的に取り付ける予定です。
これは電力損失が極めて少なく、省エネルギー、省メンテナンス、かつ低騒音という
3拍子揃った優れものです。
今では当たり前のようになったシングルアームパンタグラフも取り付けられました。

さて冒頭で、2004年10月デビューとは申しましたが、
このU@tech。実は、新車ではありません。
川崎重工業兵庫工場で放置されていた223系2000番代の試作車クモハ223-9001(1998年製 無車籍)に、
お役御免となったマリンライナー用のクロ212とサハ213を組み合わせた編成です。
それぞれ、クモヤ223-9001、クヤ212-1、サヤ213-1、に改称されました。
中身はともかく、アーバンネットワークの主役である223系に、
国鉄時代の車両を組み合わせるという凄い編成です。
事実、よーく見ると寄せ集めであることがよくわかります。
でも3両とも青系統のラッピングが施され、イメージの統一が図られました。
たまたまこの3両だったのかもしれませんが、
私にはこの3両だからこそU@techとして強烈な個性を打ち出しているように感じられるのです。いかがでしょう?

配置区所は吹田工場です。
しかし、不思議なことに,デビュー当初、JR電車編成表には、その存在が記載されていなかったのです。
つまり、改造後も無車籍(機械扱い?)の状態が続いていたことになります。
でも、ここで掲載している画像は、2004年11月2日の白昼に京都駅で撮影したものです。
こんなのアリ?とは思うのですが、詳しい事情はわかりません。
なにはともあれ、JR電車編成表08年版には 2007年3月31日に、車籍が登録されたことが記載されています。

ところで、クモヤ223-9001の種車となるクモハ223-9001(1998年11月 川崎重工業製)とはどんな車両だったのでしょう。
ちなみに、この車両の所有者は川崎重工業です。JR西日本ではありません。
車両メーカーが、所有者のままであったという例については
日立製作所製の電気機関車ED500-901があります。
これは日立製作所が、日本海縦貫線や東北本線などで、
ED75形重連に相当する機関車として設計・提案したものです。
運用試験のためJR貨物に貸し出されました。結局セールスは不調に終わり、
ED500-901は日立製作所に返却されました。
クモハ223-9001も川崎重工業のセールスの一環として製作されたのでしょうか?
どうやらそうではないようです。
クモハ223-9001は223系2000番台に先行する試作車という位置付けになるのですが、
新快速を130km/hで運転することについては、もはや1000番台で対応がなされており、走行上の問題ではないことが明らかです。
1000番台との違いはといえば、車体側面のリブの有無です。
2000番台では2シート工法なるものが導入されリブがなくなりました。
どうやらクモハ223-9001は2000番台の量産に先立って
川崎重工業が車体の製造工法確認を目的として試作したものだったのです。
つまり、本線上で使用されることは想定されていなかったわけで、
評価試験後は車籍を与えられることもなく工場内に眠っていたのはそういうわけです。
とはいえ、形式、番台区分まで与えられていたというのは、どういう訳なのでしょう。
所有者であった川崎重工業の意向と言うしかないですね。

でも、名前があったからこそ、試験車にと声がかかったのではないでしょうか。
そして「U@Tech」が、誕生したのはクモハ223-9001があってこそという気がします。
思えば、クモハ213形を使う手もあったわけです。
しかし3両とも国鉄形のスタイルでは、たとえ、足回りをごっそり変更していても、U@Techの名は似つかわしくありません。
211系を引き継ぐマスクでは先進のテクノロジーと謳ってみても、それは説得力に乏しいといえるでしょう。
クモヤ223-9001であるからこそ、先進のテクノロジーを感じさせるU@Techなのです。

同じ事業用車でも、 JR東日本の901系のように、長期実用試験をするためのものではなく、
U@Techは、新技術の開発にあわせデバイスをテストする試運転列車用の特別車両です。
スケジュールに従って走行する検測車や配給車などとも違い、
走行頻度が極めて少ない車両であるというのはわかります。
でもU@techは前述したようにJR西日本のイメージリーダーでもあると思うのです。

昨年2010年10月23日、吹田工場が一般に公開されました。
私はU@techに逢えるものと期待して出かけたのですが、
どこにもその姿はありませんでした。
こういうときにこそ、U@techの存在をアピールして欲しかったなあ。


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参考文献;鉄道ピクトリアル 「鉄道車両年鑑2005年版 」No767 2005.10 
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