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  近畿日本鉄道 7000系 けいはんな線(東大阪線)用  2010/12/19 UP
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 J鉄局TOP珍車ギャラリー近畿日本鉄道 7000系 けいはんな線(東大阪線)用
モ7200 1986年 近畿車輌 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
18.700 2.900 3.745 37.0
駆動方式 制御器 モーター(kw) ギア比
WNカルダン VVVF(GTO) MB-5011A
140×4
14:103
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
HRDA-1 148 あり KD-92
(近車)
1963年 
鉄道車両諸元表:鉄道ピクトリアル「特集 近畿日本鉄道」No727 2001.1ほか
近畿日本鉄道 7000系 けいはんな線(東大阪線)用 7101  九条駅

近畿日本鉄道 7000系 けいはんな線(東大阪線)用

第三軌条の電車といえば、地下鉄と相場は決まっています。
パンタグラフがない分トンネルの断面を小さくできるからです。
まあ、それくらい地下を穿つことはお金がかかることなのです。

でも第三軌条では、高電圧の架線が地面近くにあるということになりますので、
踏切などから軌道に不用意に侵入されようものならこれは危険きわまりないことです。
また踏切にサードレールを設置できませんから、
ここは無給電のデッドセクションになり、これも困りものです。
そんなわけで郊外に路線を延ばすのなら高架線にする必要があるのです。

さて近畿日本鉄道7000系は、大手私鉄にあって唯一の第三軌条の電車です。
もちろん近鉄が地下鉄路線を開業したわけではありません。
大阪市営地下鉄に乗り入れるために、あえて地下鉄車両に規格を合わせたのです。

なぜでしょう?
その理由は、奈良線の輸送力が限界に達していたからです。
今となっては信じられない話ですが、
かつての奈良線は小型車が走る路線で、大阪線より1ランク低い路線でした。
それが今や逆転し20mクラスの広幅の大型車が朝のラッシュ時には
10両編成でガンガン大阪市内に乗り入れてくるのです。
その迫力は他の在阪私鉄でも例を見ません。
でも、これ以上の増結が無理となれば、
この混雑を解消するにはもはや線増しか残されていません。
そこで、大阪市営地下鉄中央線に乗り入れすることにしたのです。

幸い中央線上には、阪神高速道路東大阪線があります。
この延伸に合わせて長田駅以東石切までを高架線で建設すればよいのです。
あとは生駒トンネルです。
どうせ掘るなら断面の小さい地下鉄規格のほうが安上がりです。

近畿日本鉄道は、1977年、東大阪生駒電鉄を設立。
1979年、東大阪線の完成にむけて建設が始まりました。
奈良線のバイパスとして建設したわけですから、
一体的に経営することが望ましいと考えた近鉄は、
工事がほぼ完了した1986年4月に東大阪生駒電鉄を吸収合併、
10月に近鉄東大阪線(長田 - 生駒間)として開業しました。

奈良線の乗客は、大阪ミナミのターミナル=難波を目指しますが、
多くの乗客、とりわけビジネス客の大半は、そのまま地下鉄御堂筋線などに乗換え、
大阪の中心部となる本町周辺に向かってゆくのです。
東大阪線には待避線は設けられず急行運転することはありません。
しかし乗換なしのメリットは大きいと考えたのです。

それと地図を見てもらえばおわかりいただけると思いますが、
奈良線は瓢箪山で進路を変え石切まで生駒山の山腹を北上することで高度を稼ぎます。
おかげで美しい眺望を楽しむことができるのですが、
これは少し遠回りをしていることになります。
遠回りといえば、難波−本町間もそうですね。
ここでは乗換もありますから時間もロスする事になります。

ですから、東大阪線は、現実的ないいアイデアなのです。

ちなみに生駒→本町間、平日朝、7時30分発で駅探検索すれば、
その所要時間は、東大阪線経由なら29分、奈良線経由なら31分。(乗り換え4分)
料金は650円対590円です。
少し高くつきますが、東大阪線経由なら乗り換えはないので楽ですね。

大阪きっての繁華街である難波に立ち寄るメリットは捨てがたいのですが、
おサイフのヒモも締めてかからねばならぬ昨今、誘惑を断ち切ることも必要かな?

話がそれてしまいました。
7000系です。
大阪市営地下鉄に合わせる以上、
近鉄としては第三軌条というかつてない独立した路線をもつことになります。
もちろんかつてない仕様ということになるのですが、
大阪市交通局に車両のメンテナンス(検修)を丸投げするのは、
近鉄としてはそのプライドが許しません。
自社工場には蓄積されたノウハウがあり、
車両の設計にあっても近鉄らしさを採り入れてゆきたい。
加えて他の路線の車両と合わせて一括して扱うほうが効率的ではありませんか。
近鉄ではレールの幅が違う南大阪線の電車でさえ、
橿原神宮前駅で仮台車に履き替え、
牽引車にひかせて五位堂の工場まで搬送しているのです。
そう、そこです!東大阪線の車庫は東生駒にあるのですから、
そこに線路を繋げ、牽引車でもって、五位堂の工場まで搬送すればいいのです。
もともとレールの幅は一緒なのですから、仮台車を履かせるまでもありません。

しかし、そうは簡単にはゆきません。
大阪市営地下鉄の車体幅は2900mmです。
対して、五位堂の工場がある近鉄大阪線の車体の幅は2740mm。
このままでは、ホームに接触してしまいます。
そこで、奈良線の車両と同様、裾を絞ることにしました。
でもそれでも足りません。なおも裾をぎゅっと絞ると…。
おおっ!これではすき間がありすぎて、とても怖い!
というわけで、ステップを取り付けることにしました。
JR東日本の新幹線「つばさ」「こまち」のように折りたたむことはしませんが、
五位堂の工場に搬送するときだけ取り外せばよいのです。

かくして、そろばんの珠(タマ)のような7000系ができあがったのです。
まあ苦肉の策のフォルムだったわけですが、
今までにない大胆かつシャープなデザインは高く評価され、
通産省認定のグッドデザインに選定されました。
鉄道車両では、初めての栄誉だそうです。

これに気をよくしてか。
近鉄は「けいはんな線」の開業(2006年)に合わせて、
2004年に89年以来15年ぶりの新車7020系を投入します。
しかし、基本的なデザインは7000系と何ら変わりません。
大阪市営地下鉄中央線では、これまでに
50系→30系→旧20系→新20系と
めまぐるしくそのスタイルを変えているのとは対照的です。

初めのうちはKINTETSUのロゴまで入れて
これも近鉄車両なんだとアピールしなければならなかったわけですが、
今や、7000系(7020系)はしっかり近鉄の車両として定着したようです。
近鉄7000系(リニューアル車) 7602(もと試作車)   九条駅

近畿日本鉄道7000系は東大阪生駒電鉄時代である1984年にク7103−モ7503−モ7502−ク7602の4連が先行試作されています。
86年4月には近鉄に編入され、 10月の近鉄東大阪線の開業時には量産車01F〜08Fの8本が増備されました。
89年には10Fが追加され、E×9本(54両)が在籍します。
なお制御装置はVVVFインバータ(GTO)で偶数編成は日立製、奇数編成は三菱製となっています。
また、編成番号01F〜05Fは軌道線、06F〜08F、 10Fは鉄道線所属となっているのもおもしろいところです。
7020系は2006年「けいはんな線」の開業にあわせて新製されました。現在、E×4本(24両)が在籍します。
制御装置がIGBTインバータに変更されました。
ちなみに7000系は7020系の内外装に合わせてリニューアルされています。


−鉄道車両写真集−
  近畿日本鉄道 7000系7020系 けいはんな線(東大阪線)用
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参考文献;鉄道ピクトリアル 「特集 近畿日本鉄道」No398 1981.12 No727 2003.1
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