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  小田急電鉄 20000系RSE  2012/2/29 UP
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小田急20000形「RSE」 特急"はこね" 小田原駅     2005.8 撮影 小田急20000形「RSE」 "Resort Super Express"
JR東海(御殿場線)との相互直通運転に使用する車両として
1991年に登場しました。
JR東海371系電車と基本仕様を統一。ただし足回りはLSE→HiSEと同タイプ。
第1編成(20001×7)は1990年12月、
第2編成(20002×7)は1991年1月に竣功。

RSE車および371系は2012年3月の改正で「あさぎり」運用から離脱し廃車。
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小田急20000形「RSE」 特急"はこね" 小田原駅     2005.8 撮影

小田急20000形「RSE」--JR東海とのコラボで得たものとは?

20000形は、
JR東海(御殿場線)との相互直通運転に
使用する車両として1991年に登場しました。

JR東海との協定により、371系電車と同じく、
③.④号車に2階建て車両(ダブルデッカー)を配置、
その2階に特別席を配置するなど基本仕様を統一しています。

よって、それまでのロマンスカーとは異なり
前面展望席は採用されていません。
そして、小田急ロマンスカーの特色ともいえる
連接構造を取りやめました。

ところで連接構造とは何でしょう。
なぜ小田急はロマンスカーに連接構造を用いてきたのでしょう。

少し脱線しますが、初代ロマンスカー3000形SE車についてお話しします。

高速走行のためには大出力のモータを使用して、粘着性能を稼ぐために車体も重くし、
頑丈な構造にするということが定石です。
しかし、当時(1956年)の小田急の軌道は脆弱で、カーブもきつく
変電所などの設備も十分ではありませんでした。
こんな悪条件の元でスピードアップするためには、
軽量でかつ高性能な車両という、かつてない技術が不可欠となったのです。
そんな技術の集大成が3000形SE車ということになります。

そこで考え出されたのが連接構造です。
連接構造とは、連結面側の台車を隣の車体の台車と共用にし、
車両のつなぎ目に台車を配置するという構造です。
これなら、普通2両分の車体に必要な台車、4台分を3台ですませることが出来ます。
3000形SE車は、8連ですから、
本来16台必要な台車を9台ですませることが出来ました。
台車はそれ自体重量物です。
この数を減らすことは、軽量化をいっそう促進することになりました。

なお3000形SE車の場合、一車体当たりの長さを短くしているので、
単純に比較は出来ませんが、車軸あたりの軸重は重くなっていますから、
粘着性能を期待できます。
すなわちモーター一つあたりのパワーもUPできるということです。
もっとも3000形SE車のモーター出力は100kwですから、
国鉄101系.151系に用いられたMT-46と同クラスです。
出力そのものは、たいしたことありません。
大事なのは車体重量とのバランスです。

加えて、連接構造ゆえ、一車体当たりの長さを短くしたのですが、
このことについても、曲線通過時に有利という副作用が得られました。

さてこのように見てゆきますと、連接構造は、いいことずくめのように見えます。
しかし、デメリットもあります。
連接構造では、隣の車体と台車を共用するので、
その編成を真ん中で切り離すなどということが出来ません。
通常のメンテナンス時に、また何かトラブルがあったときには、
仮台車を準備するなど、編成毎に対応しなければならずやっかいです。

また1両あたりの長さを短くしているので、
従来の電車とドア位置を同じにすることが困難です。
特急用と各停用にドア位置が違うというのなら、それはそれで意味があるのですが、
特急ごとに乗車位置が違うというのならば紛らわしいだけです。

さて20000系RSEです。乗り入れ先のJR東海に連接車は存在しません。
かつては3000形SE車だけが乗り入れていましたから、何とかなりましたが、
今回は、同じ特急「あさぎり」用にJR東海も371系を導入します。
足並みを揃えないわけにはゆきません。
でも、これに連接構造を導入するとなると、JR東海はたった一編成のために
連接構造車両の検修設備を別途準備しなくてはならないでしょう。
当然、オーソドックスな20mボギー車が導入されることになりました。
そこで20000系RSEが371系に合わせるのは自然な流れでしょう。
第1編成(20001×7)は1990年12月、
第2編成(20002×7)は1991年1月に竣功しました。

ここで、20000系RSEのスペックを見てみましょう。
制御装置は、抑速ブレーキ付電動カム軸式抵抗制御(1C4M)で、MM-39B形(東芝)。
主電動機は、出力140kWの直流直巻電動機で車内ではOER7000形と呼ばれる標準型モーターです。
(TDK-8420-A(東洋電機製造)とMB-3262-A(三菱電機)を併用。)
駆動装置は平行カルダン駆動方式(中実軸撓み板継手方式)で、歯数比は4.21。
ブレーキは、電気指令式電磁直通ブレーキのMBS-D形
台車も、電動台車がFS546、付随台車がFS046で、
連接台車からボギー台車に変わったとはいえ、
これも小田急標準型のアルストムリンク式空気ばね台車[住金]です。

つまり、基本的に足回りはLSE→HiSEと同じです。

もはや、20000系RSEは、…いや7000形LSEの時からすでに、
ロマンスカーが連接構造である必然性はなかったのかもしれません。

RSE車は7両固定の編成で、371系と同じく、
③.④号車に2階建て車両(ダブルデッカー)を配置しました。
371系の場合、2階部分はグリーン車なので、サロハとなりますが、
20000形では、特別席(スーパーシート)という扱いになりました。

このように371系とも共通運用できるように、条件をすりあわせたため、
371系が検査の際には20000系RSEがフォローに回り、
その日「あさぎり」全列車がRSEとなっても何の不都合もない状況となったのです。

さて、私はかつてJR東海の371系を珍車ギャラリーでとりあげました。
そこで、私は、JR東海が371系を導入する意図(メリット)として、
①首都圏におけるJR東海の存在感をUPする。
②小田急がロマンスカーで培ってきたホスピタリティーを獲得する。
ということをあげてきました。

では、小田急がこのコラボで得たものは何だったのでしょう?
それはJR東海の車両に対する徹底的な合理性ではなかったか。と思うのです。
JR東海の合理性は、新幹線の定員にもあらわれています。その数1323名。
これは最新鋭のN700形に至るまでJR東海がこだわり続ける数字です。
乗車定員を合わせることにより、
車両のトラブルが発生した場合、
あるいは天候その他何らかの理由で正常に運行できなかった場合でも、
共通運用できる車両があれば、
これを活かして迅速に対応できることを考えてのこだわりです。
たとえ系列が違おうが、とりあえずフォローができるのは強みです。
ちなみに東海道新幹線から、300系よりも早く500系が姿を消した理由は、
乗車定員の違いが大きかったからです。
タイムイズマネーを信条とするビジネスマンに応えることが、
まずJR東海に課せられた合理性なのです。

そうしたJR東海の合理性が小田急では、30000系EXEで結実しました。
季節による変動等がある観光特急は、どうしても波動輸送となりがちです。
30000系EXEでは、都市間輸送をメインとするビジネスユースに軸足を移動しながらも
弾力的な運用を行なうことを可能とするため、
分割・併合に対応した4連+6連=10連の構成となりました。
連結部の通り抜けを可能にする貫通路を設けることとしたため、
前面展望席は採用されないことになり、
また、ボギー車の方が定員増が可能であるため、連接構造は採用されませんでした。
(LSE車と比較して130人以上の定員増)
結果、もはやロマンスカーとは呼びがたい、どこにでもいる汎用の特急車となってしまい、
小田急ファンのみならず、30000系EXEはあまり評判がよくありません。

箱根特急の利用者数は1987年の550万人から、2003年には300万人程度に減少したそうです。
すべて30000系EXEのせいにするわけではありませんが、
50000系VSEのデビューは、失地回復を狙っているものであることは間違いないでしょう。
しかし、その後増備される60000系MSEは、デザインこそ50000系VSEのイメージを引き継いでいますが、
その編成をよく見れば、30000系EXEのコンセプトをそのまま引き継いでいます。
身障者対応のバリアフリー車両を除けば、車両定員も合わせてあり、
共通運用できることが、その視野に入っていることは間違いありません。

このように見てくると、20000系RSEが生まれたその背景にあるものが、
その後の小田急ロマンスカーの流れを左右したのではないかと思えてくるのです。

それにしても、なぜ、「あさぎり」の沼津乗り入れをとりやめたのでしょう。
それは新幹線品川駅が開業したことに尽きます。
池袋、新宿、そしてとりわけ渋谷からの利用客が沼津へ行くとき、
東京駅経由で新幹線を利用するお方がどれだけいたのでしょうか。
当時、品川あるいは新宿からJR東日本の特急「踊り子」に乗車して
熱海、三島経由で沼津に向かわれた方が結構いるのではないでしょうか。
品川-東京間は山手線で11分、新幹線でも7分かかるのです、併せて20分近いロス。
それでも、当時この方法でさえ最速でしたから、利用された方もあるでしょう。
しかし、新幹線品川駅ができた今、躊躇することなく新幹線を選ぶのが自然です。
JR東海は、小田急に頼らずとも、JR東日本に対し優位に立てるのです。
ほぼ、丸儲けで…。

371系は2012年3月の改正で「あさぎり」運用から離脱します。
かつてそうであったように、「あさぎり」は、御殿場止めとなり、
全列車、小田急車で運行されることになりました。
そして、この機に乗じて、輸送量に見合った効率的な運用をするため、
「あさぎり」は全列車60000系MSE車で運転することとなったのです。
そのあおりを食ったRSE車は廃車となる予定です。
7000形LSE車よりも早く、
20年ほどでお役ご免となるRSE20000系は、悲運と言うほかないでしょう。
今回の改正で姿を消すのは20000系RSE車だけではありません。
10000形HiSE車もそうです。
これは単なる偶然でしょうか。それは違います。
20000系RSE車が、短命に終わることとなったその理由は、
10000形HiSE車がかかえた問題点と同じだったのです。

それは、次回にお話ししたいと思います。

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*20000系RSEとすべきか 20000形RSEとすべきか。悩むべきところです。
SE車の場合、デハ3000形オンリーなので、3000形SE車としてもいいように思いますが、
RSE車の場合、形式は電動車がデハ20000形、付随車はサハ20050形となりますので、これらを統べるという意味で
20000系RSEとするのが自然なように思います。しかし小田急電鉄では20000形としてひとまとめにしているようです。
無節操な私は、20000系RSEでも20000形RSEでもヒットするように適当に混ぜています。
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