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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>山陽電気鉄道 2000系 モハ2000etc…
*山陽電気鉄道_2000系 −その多様なバリエーションのわけ−鉄道車両には、番号が付いています。製造順に、ただただ単純に割り振るということは、創業時ならいざ知らず、まずあり得ないことです。 もちろん鉄道会社によってまちまちですが、 大概の場合、その用途、車体の形状、動力の有無そしてその性能などに応じて、番号を割り振ってゆくわけです。 そして、同一仕様のものは、同じ車両と見なされ”形式”が与えられます。 特に電車などの場合は、常に同じ編成で用いられることが、原則として決められているグループがあり、 それらをひとまとめにして”系列”とよびます。 山陽電気鉄道では、平成13年当時、車両部から「現有車両の車系及び車形についての公式見解」が対外むけに出されています。 それによりますと、山陽電鉄の車両も国鉄(JR)と同じく、Mcはクモハ、Tcはクハ、Tはサハと車種記号を冠するのが正式とされているのですが、車両番号で、車種の判別が可能なのでこれを省略するとされています。 つまり、山陽電鉄においても番号には規則性があり、 山陽電鉄の車両”について知っているというものは、 「その番号を聞いただけで、その車種が判別できる。」ということになります。 3000系を例にとっていうと まず、千の位の”3”は抵抗制御方式車を表します。 次に、3000系では、性能や設備に応じて 3000形 3050形(=製造時より冷房車) 3200形(=2000系の足回りを流用したもの)に分類されます。 又これとは別に、Tc車については百の位に6を T車については百の位に5を割り当てる…などが決められています。 でも”3639”といわれて、その電車を頭にイメージできるのは、よっぽどのお方ですね。 私でも、「そりゃあ、3000系のTc車だわな。」というのはたやすいことです。 でも、普通鋼製である3638の続き番号である3639がアルミカーだというのは、ちょっと確認しないと自信がありません。 せめて3600形の70番台とかに分けてくれて、他の3000系のアルミカーも同様、 全部、70番台と、あわせてくれたら、分かりやすいのですが, そういう区分はしてくれていません。
さて、今回の主役は、山陽電鉄2000系。 昭和31年に製造された山陽電鉄初の新性能電車です。 といってしまえばそれまでなのですが、そのMcとなる2000形は、とても同一形式でひとくくりにできるようなものではありません。 山陽電鉄_2000系といえば、 我が国初の全アルミ合金車体で有名ですが、 2000系には、アルミ合金車体製以外に普通鋼製もあれば、ステンレス製もあります。 それどころか、2ドア車と3ドア車が混在し、なんとロングシート車とクロスシート車までもが混在するのです。 時代の要請に従って、クロスシート車がロングシートに、2ドア車が3ドア車に改造される例は多々あります。 でも2000系は、違います。 新製時から、これらのバリエーションを有して登場したのです。 乱暴な言い方ですが、国鉄でいえば、車体の素材は103系と301系と205系。 車体の形状は、103系と113系と117系とも分類されるバリエーションが存在したということになります。 うーむ。2000系のコンセプトとはいったい何だったのでしょうか。 それを考える前に、表にして整理してみることにします。
年代順に並べたわけですが、こうすると何となく流れが見えてきます。
まず、@車体の素材にあっては、 普通鋼製→軽合金(アルミ合金、ステンレス)製 A車体の形状にあっては、 2ドア車→3ドア車 B座席については 転換クロスシート→ロングシート というところでしょう。 @について、 最後の2507,08が普通鋼製なのは、初期車である普通鋼製の2000及び2008編成の3連化に合わせて作られたのだから特に問題はありません。 でも、解せないのは、2000編成が、 「なぜロングシートで登場したか?」です。 ここで、昭和30年当時の山陽電鉄が、どういう状況にあったかを振り返ってみます。 山陽電鉄は、明石を境に西は神戸姫路電気鉄道、東は兵庫電気軌道が各々別に開業しており、1500Vの鉄道線である神戸姫路電気鉄道が、600Vのトロリーラインである旧兵庫電気軌道区間に、乗り入れてくるカタチで運行されていました。 これらの直通車両は、複電圧車であり、当然、サイズも兵庫電気軌道に合わせ、小振りのものでした。 しかし、戦災による車両不足により、山陽電鉄は、かつてない危機的状態に陥ったのです。 山陽電鉄では、このピンチをしのぐために、国鉄の63系電車を導入することにしました。 小田急や東武、関西では南海もこの方法をとったのですが、大手でもない、600Vのトロリーライン区間をもつ山陽電鉄が、なんと20m級の大型車を導入するのです。 終戦直後、集中豪雨による施設損壊があり、 「どうせ復旧しなければならないのなら、この際大型車を導入しよう。」 という考えが63系電車の導入に結びついたのかもしれません。 理由はどうあれ、これは大英断であり、今の山陽電鉄があるのは、この時、大型車である63系電車を導入したからといっても過言ではないでしょう。 この時、数ある小型車は、その多くが大型の車体に更新され、昇圧工事を施されました。 一気に近代化を推し進め、スピードもアップした山陽電鉄でしたが、 その後、昭和30年代にかけて、好景気の後押しもあって、乗客数はUP。 特急電車の運転も再開されました。 そこで、2000系です。 普通で考えれば、看板となる特急用に2ドア車のクロスシート車を…となるはずなのにそうはならなかったのです。 なぜでしょう? まず、朝夕のラッシュ時における混雑がハンパなものではなくなってきたのです。 もとは小型車だった250形更新車を特急運用に動員したのも、ロングシート車で収容力があったからです。 理由その1 朝夕のラッシュ時の混雑を緩和するため、何はともあれ収容力のあるロングシート車が必要だった。 つぎに、ちょうどこの時期、神戸高速鉄道の構想が具体化し、阪急、阪神両社線に乗り入れることを念頭に設計する必要があったということです。 ちなみに、当時の阪急神戸線、阪神本線の架線電圧はまだ600Vでした。 神戸高速鉄道が、開通した折には昇圧され、その必要はなくなりましたが、2000系は複電圧対応の車両として登場しています。 また、両社の輸送需要に合わせるためにも、乗り入れるならロングシートでなければ、という事情があったのです。 理由その2 より輸送力を求められる、阪急、阪神両社線に乗り入れるためにも収容力のあるロングシート車が必要だった。 そして、車体のデザインです。当時、私鉄各社は、足回りのみならず車体の設計についても意欲的な試みを競ってきたわけですが、 そのことでコスト高になるという反省がありました。 そこで私鉄経営者協会技術委員会は、私鉄標準車体の仕様を提案していたのです。 今でいえば、JR東日本の209系やE231系仕様の車両が、私鉄各社で導入されていますが、昔にもこういうことがあったのですね。 でも、当時はこの仕様に準拠した車両は、思いの外少ないのです。 しかして、山陽電鉄2000編成は、この数少ない標準仕様準拠車両となっています。 専ら山陽電鉄の車両を担う川崎車両にあっては、 「とりあえず地元の山陽電鉄で、まず標準仕様準拠車両を製造しておきたい。」 という思惑がそこにあったのではと思われるのです。 ところが、標準仕様に忠実に準拠したがために、そこに転換クロスシートを配置したら窓枠とシートピッチがあわないという結果に陥ってしまったのです。 もっともこれは私の推測でしかありませんが、それもロングシートを導入する理由の一つではないか?と思われるのです。 理由その3 標準仕様準拠車両であったがために、クロスシート車にしたら窓枠とシートピッチが合わなくなってしまった。 ということで3つの理由を挙げておきたいと思います。 しかし看板となる特急には、やはり2ドア車のクロスシート車を…という声が山陽電鉄社内には強くありました。 そうした意見が2次車以降に現れています。 そして当然、窓枠のサイズも、改められました。
さて、山陽電鉄_2000系といえば、普通鋼製以外に、アルミ合金車体製もあれば、ステンレス製もあります。 と前述しましたが、私はここにも 「様々な素材で、車体を製造できる技術が川崎車両にはあるのだ。その実績を示すためにも、 とりあえず地元の山陽電鉄用に、これらの車両を製造しておきたい。」 という川崎車両の思惑があるように思われてなりません。 もっとも2000系は、山陽電鉄のオーダーでその仕様が決定されてきたわけです。 でも標準仕様準拠車両を制作して提供する傍ら、その多彩なバリエーションをとり揃え、 2000系を川崎車両のショールームにする。 川崎車両サイドからすれば、それが2000系に対するコンセプトのようにみえます。 山陽電鉄車両制作のパートナーである川崎車両の強い思いが、そこにはきっとあるのでしょう。
参考文献;私鉄の車両F”山陽電気鉄道”S60.8 保育社刊 鉄道ピクトリアル;特集”山陽電気鉄道/神戸電鉄”の各記事 no711 H13.12
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