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  西武鉄道 10000系 NRA  2011/02/11 UP
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西武鉄道10000系 10707 特急小江戸   撮影 2007.7  所沢駅
西武鉄道_10000系スペック (10112Fをのぞく)
起動加速度 2.7km/h/s
営業最高速度 105km/h
減速度 3.5km/h/s(常用最大)4.5km/h/s(非常)
モーター HS-836-Nrb(日立) または TDK-8010-A (東洋)
出力 150kw×4   ギヤ比 5.73
制御装置 MMC-HTB-20E (日立)電動カム軸式抵抗制御
駆動装置 中空軸平行カルダン駆動
台車 FS542B・FS042=FS342系の改良台車
(軸箱支持方式をペデスタル式から緩衝ゴム式にしたもの)
発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ (HSC-D)・抑速ブレーキ
参考;鉄道ピクトリアル 新車年鑑1994年版 ほか
−鉄道車両写真集−
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西武鉄道10000系 10707 特急小江戸   撮影 2007.12  所沢駅

フラッグシップとして再生した1969年のメカ−旧101系−

西武鉄道10000系は、5000系レッドアローの後継車両として、1993年12月に営業運転を開始した特急専用車両です。
当初は新宿線特急「小江戸」として営業運転を開始しましたが、
翌年からは秩父線特急の5000系の置き換えが開始され、1995年までには全編成の置き換えが完了しました

さあ、これで西武鉄道は、新時代を迎えたということになるわけですが、車両のスペックを見てびっくり。
台車以外は5000系と何ら変わるところがありません。台車が違うといえば違いますが、これにしたって基本はFS342系です。
もっといえば、このスペックは、1969年に登場した101系と同じです。

よくよく調べてみると、なんと、10000系は、旧101系(一部 新501系 5000系)の機器を流用したものだったのです。

普通、特急車両というものは、鉄道会社のフラッグシップともいうべき存在で、注目度も高く、
その性能にあっても先端の技術を投入するのが当然のような気がします。
事実、10000系NRAが投入された1993年。
近鉄は伊勢志摩ライナーとなる23000系を、JR東日本ではスーパーあずさ用にE351系を投入しています。
いうまでもなく、ともにVVVFインバーター制御です。
23000系にいたっては、33パーミルという急勾配を均衡速度120km/hで走行するため200kwという大容量のモーターを装備しています。
E351系にしても、制御付き自然振り子装置を導入してスピードアップを図る高性能車です。

こんなふうに較べてみると、西武鉄道は車両の高性能化に興味がないかのようにみえます。
しかし、決してそんなことはありません。
10000系が登場する2年前には、VVVFインバーター制御の6000系をデビューさせています。
運転室にはELディスプレ-のモニターを設置、客室にもドア上部に案内表示器を取り付けるなど先進の装備が満載です。

ではなぜ、西武鉄道は、10000系に先端の走行メカを導入せず、6000系に先端のメカを導入するのでしょうか。

まず6000系は営団地下鉄有楽町線に相互直通運転することを念頭に作られたものです。
他社の車両と較べて見劣りする車両を投入するわけにはゆきません。
未来を見据え、今後とも西武鉄道の基本となるべく設計された車両でなければなりません。
もっとも見栄を張っているだけではありません。
VVVFインバーター制御により効率よく得られた回生ブレーキのエネルギーは、列車本数の多い区間でこそ有効です。
列車本数の少ない西武秩父線に優先して投入しても効果はあまりありません。

西武鉄道の特急車両に必要なものは、VVVFインバーター制御ではなく、車内のアメニティーであって
足回りについては、長年の実績に裏付けられた信頼性をもつ旧101系の性能で何の問題もないと判断したのです。

このあたり、西武鉄道は実にポリシーが合理的なのです。

旧101系の大きな特徴は、出力アップした150kwのモーター(HS-836-Nrb・Prb/TDK-8010-A)を搭載し、
電気ブレーキ付きの電磁直通ブレーキ(HSC-Dブレーキ)を採用したことです。
これは急勾配が続く西武秩父線を走行するための装備であり、
それゆえ同時期に登場した秩父線特急5000系レッドアローもこれと同様の装備を有することとなるのです。
もっとも、旧101系は山線専用ではありません。
池袋線でも十分通用する性能を有し、登場時は「ASカー(All round Service Car)」と呼ばれていました。

さすがに寄る年波には勝てず、旧101系は2010年11月をもって引退を余儀なくされました。
しかし、1993年にお払い箱になった旧101系のパーツが、そう、いわば40年以上前のメカが
今も、西武鉄道のフラッグシップたる10000系NRAにしっかり引き継がれているのです。
なんか、私には愉快に思えてなりません。

最後に、10000系の名誉のためにも言っておきたいことがあります。
確かに、足回りは旧式ですが、車内は5000系レッドアローと違ってゆったりとしたものになりました。
シートピッチは1070mm。これは前述のE351系普通車より100mmも広いのです。(ちなみに23000系は1050mm)
デザインも堂々とした貫禄を感じさせながらも、
サイドの赤いラインがスピード感をアピールするものとなっています。
通産省選定のグッドデザインとなったのもうなずけるところです。


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参考文献;鉄道ピクトリアル 「新車年鑑1994年版」No597 1994.10 
私鉄の車両6 西武鉄道 (復刻版)ネコパブリッシング
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