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−若桜鉄道 C12-167 エアーロコ −

若桜鉄道 C12-167
−鉄道車両写真集−

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ローカル私鉄 データ              ファイルNo 107
会社 若桜鉄道 資本金  100(百万円 1986/10/14開業
区間 郡家−若桜 19.2km S5.12.1全通
前身 国鉄若桜線 対象 1次線、赤83 内燃機関
車両数 08年 気動車 5両 機関車 SL-1(展示運転用) 車庫の所在地  若桜
参照→.ローカル鉄道 (路線)データ
若桜鉄道 C12-167 撮影;2008.10 若桜駅構内

若桜鉄道にはC12-167がいます。
「います」と言ったのは、他でもありません在籍してはいないからです。
彼は展示保存用車両として若桜駅に常駐しています。
でも留置されているわけではありません。
−−「動くのです。」−−
構内限定ではありますが、彼はきちんと動くのです。
ただ…。フツーのSLとは少し様子が違っています。しずしず…と動くのです。
あの勇ましいドラフト音もなければ、モクモクと煙を吹き上げることもありません。

実は、圧搾空気で動いているのです。

もともと蒸気機関車は、ボイラーの火力でもって高圧蒸気を発生させ、これをシリンダーに送り込んでパワーを得ます。
この高圧蒸気をコンプレッサーで作られる高圧空気に置き換えたということです。

このような仕組みを持つ機関車ですが、他に例がなかったわけではありません。
火気厳禁の工場とか、鉱山などで実用化されていました。
私の購入した最も古い鉄道書は、その名も「蒸気機関車」です。
保育社刊のカラーブックスで著者は、かの有名な鉄道写真家 広田尚敬氏です。
その76ページに浜安善駅でたたずんでいるヘンシェル製の無火機関車が掲載されています。
SHELLと描かれた大きな緑色のタンクを持つこの機関車は、シリンダーこそキャブ下にあり、通常のものとは異なりますが、
その足回りは蒸気機関車のメカそのものです。
大正14年製の彼はこの本が発刊された昭和43年には予備機とはいいながら在籍していたようです。

さて、どういういきさつで、C12-167が、この若桜鉄道にやってきたのでしょう。

若桜鉄道は 1987年10月14日に開業した第3セクターの鉄道です。
JR西日本(旧 国鉄)若桜線を継承しました。発足当時、もちろん蒸気機関車はいません。
しかし若桜駅構内には1930年の開業から使用されてきた転車台や給水塔などの蒸気機関車用の設備がそのまま残されていました。

若桜鉄道では、これらの施設の修復をこつこつと続けてきたのですが、
この活動を継承しするため、NPO法人「若桜プロジェクト」を発足させることとなったのです。
2006年10月には、構内に残る設備に蒸気機関車を加えるべく「若桜駅SL遺産保存活動」が立ち上がりました。
やっぱり主役がいなけりゃあ絵になりません。

そこで白羽の矢が立ったのが、C12-167です。
彼は長年 加古川線で使用されたこともあって廃車となったのち、
加古川線の沿線自治体である加美町の役場前に保存されていたのです。
比較的近い距離に保存されていたということもありましたが、
彼が指名されたのは、昭和19年8月から昭和21年11月まで鳥取機関区に所属し、この若桜線を走っていたからです。
そんな縁があったことから、若桜町は彼を誘致することになったのです。

2007年8月。若桜駅に彼はやってきました。
その後、圧縮空気による運転に向け整備が進められ、2007年10月には試運転。
そして、2008年6月から公開運転が開始されました。

ところで、圧縮空気による蒸気機関車の動態保存については、もう一例あります。
群馬県川場村武尊高原にある・ホテルSLのD51-561です。
1976から95年まで20系客車(B寝台車6両)で営業していましたが、現在は通常の宿泊施設に転換しています。
SLだけが残ったわけですが、これではインパクトに乏しいというわけで、これを動態保存にすることにしたわけです。
しかし、この機関車は30年もの間、火を入れられることもなく野ざらし状態だったのです。
そのままで復元することは不可能な状態となっていました。
なにせD51のボイラーには14kg/cmの圧力がかかるのです。
到底それにはとても耐えられません。
ならば、「圧縮空気」を直接シリンダに送り込めばどうか・・・なんと2kg/cmで圧力で何とか動くではないか。
ということでエアーロコが誕生することとなったのです。

圧搾空気による走行運転を始めたのは2006年12月。
この前例に倣って若桜鉄道のプロジェクトもすすめられたのではないかと思われます。

ところで、若桜鉄道のC12-167を体験運転できるというのをご存知ですか。
期日限定で前回は2013年11月16、17日(土・日)に行われました。 
1日目SL体験運転された方は2日目DC体験運転、
1日目DC体験運転された方は2日目SL体験運転というプログラムになっていました。
運転取扱い及び車両の構造を図面と写真で講習を受け、教官がついての実車運転を2往復体験できます。
1泊3食、懇親会付きで25000円。
高いか安いかはさておき、「本物の蒸気機関車じゃあないじゃないか」とお思いの向きはあろうかと思います。

でも、自分の操作で機関車を動かせるのですよ。ワクワクしてきまませんか?

エアーは見えないけど、心をも動かすのです。

参考文献;「蒸気機関車」広田尚敬著 カラーブックス152 保育社刊 1968年
 若桜鉄道のHP 川場村SLホテルのHP

無火機関車には高圧蒸気をタンクに貯める無火蒸気機関車とコンプレッサーで発生させた圧縮空気を使用する機関車の2種類があります。
無火蒸気機関車は通常の蒸気機関車と同様の仕組みで動きます。
ただ、ボイラーはありません。水も燃料も積み込んでいません。
地上設備となる定置式のボイラーで高圧蒸気を発生させ、これを蒸気蓄圧器に送り込むのです。
機関車はここに貯めこまれた蒸気の力で動きます。
圧力が下がればおしまいです。長い距離は走れません。
でも、短い距離を行ったり来たりで済ませるだけなら、これも合理的なやり方といえるでしょう。
この機関車のことをfireless locomotiveといい、日本では「ファイアレス」と呼ばれているそうです。
また後者の圧縮空気を使用した機関車はcompressed air locomotiveと呼ばれます。
日本で「エアーロコ」と呼ばれているのはこちらとなります。
コンプレッサーを搭載すれば、自走も可能です。



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