2011/05/22 UP | |||||||||||||
J鉄局TOP>珍車ギャラリー>JR東日本 901系
JR東日本 901系 (→209系900番台)901系は試作車です。にもかかわらず10両編成が3本=合計30両製作されました。何という数でしょう。 ちなみにJR四国では、121系で38両。6000系などは試作車でもないのに総勢6両に過ぎません。 でもJR東日本にあっては、たかが30両。 その電車の総数から考えれば、30/11249(参照;JR電車編成表 93年版)にすぎないのです。 いかにJR東日本がガリバー企業であるかが、ここからも伺えます。 30両という数だけではありません。 901系はそのバリエーションも凄いのです。 A編成(川崎重工業),B編成(東急車輌),C編成(川崎重工業)+(JR東日本大船工場)と 異なる仕様の3編成が従来の車両メーカーに加えJR東日本の自社工場となる大船工場でも製造されました。 制御装置については、各編成毎に別タイプのインバータが搭載されています。 A編成ではパワートランジスタを使用した個別制御。 B編成は高耐圧小容量のGTOによる2レベルインバータで個別制御、 C編成は低耐圧大容量GTOによる3レベルインバータで4個一括制御 という具合で様々な方式が試されたわけです。 メーカーも富士電機 東芝 三菱と これらを分担させ、競わせています。 とはいえ好き勝手に競わせたわけではありません。明確なコンセプトがありました。 重量半分、コスト半分、寿命半分です。 試作車には二通りのパターンがあります。 次世代の先進的なテクノロジーを実用に供するか否かを判断するためのものと、 実際に営業運転に就かせながら、より実態に即したものであるかどうか、判断するためのデータを得ようとするものとです。 後者は先行量産車などと呼ばれています。 901系はこちらに属するものといっていいでしょう。 ここからフィードバックされたデータから209系が生み出され、量産されてゆきます。 そして、901系は試作車としての使命を終え、 1994年1~3月にA、B、C編成がそれぞれ209系900/910/920番代に改番されました。 ところで、JR東日本では、各メーカーに対し、均一に同じ車両を作れとは強制しませんでした。 川重では妻面にビートを設けその強度をUPさせることを提案してきましたが、 そのやり方を901系→209系でも踏襲させています。 コストも含め、要件を満たしていれば、メーカーの言い分も聞くといった柔軟な姿勢を示したのが901系→209系の特色です。 しかしコストを重視すれば、品質面は目をつぶらなくてはやってゆけません。 軽量化も省エネにつながる重要な要素です。 でも同時に堅牢さを求めるのは無理があります。必要最低限の強度では、これを長持ちさせることはできないでしょう。 JR東日本は、あえて寿命半分を打ち出しました。 さて、電化製品の寿命っていうのは、おおむね10年というところでしょうか。 ウチの電化製品には、私の趣味で購入日と購入金額を記したシールを貼っているのですが、 テレビにせよ冷蔵庫にせよ。 「10年になるなあ。もうボツボツおだぶつかな。」と思っていると、 動かなくなることが多かったですね。 もっともウチの電化製品は優秀で、最初の一年を乗り切れば 大抵一度も故障することなく、10年は活躍してくれました。 もちろん10年以上活躍してくれたものもたくさんありました。 でも私が子どもの頃は、そんなことはありませんでした。 特にテレビがよく壊れました。 その度に電器屋のおじさんがやってきてテレビのウラ蓋を開け、 テスターでチェックしながら、真空管やら抵抗器やらを一つ二つ取り替えて、帰って行かれたのですが、 時にはチャンネルの接点になにやら細工をして、なにも取り替えずに帰って行かれたのも憶えています。 今は修理自体が少なくなりましたが、修理といっても、 大きいものなら、その場で問題となるユニットをゴソッと入れ換える、 小さいものなら、とりあえずメーカー送りにされ、忘れた頃に帰ってきたその本体には、 取り替えられた部品が(別にいらないんですけど、)一緒に送り返されてきたりします。 これもまたユニットあるいは電子部品が多く実装された基盤です。 きっと、この中の何かが壊れているのでしょう。 昔と違って、壊れていない部分も購入させられていると考えられるわけですが、 今時の電子部品はブラックボックスのようなものですから、これも仕方のないことだと思います。 修理代が高くつくのも無理はないと思われます。 そんなわけで、今は購入後10年もたっていれば、 修理の見積もりを聞くまでもなく、新しいものを買うようになってしまいました。 新製品は、単に新しくてキレイだというだけでなく、例外なく、より高機能になっています。 (もてあましているきらいもありますが…、) とりわけ省エネ性能が進歩しており、電気代(ランニングコスト)が、大幅に削減されているというのです。 高額な修理代をかけて古いのを維持するほうが、結局高くつくというのであれば、 買い換えるのが当然の選択となるわけです。 長い寄り道になってしまいましたが、これが901系のコンセプトです。 でも、壊れてもいないのに買い換えをするというのはいかがなものでしょう。 終了してしまいましたが、エコカー補助金というのがありました。 また家電製品についても、エコポイントなるものがついていました。 「早く買い換えるのがお得ですよ。」 と、なにかせっつかれているような日々だったように思いますが、なんか乗せられたみたいで、釈然としませんでした。 やっぱり、なんかもったいなくて、まだ使えるものを廃棄することが私にはエコとは思えなかったのです。 自慢じゃありませんが、我が家では地デジチューナーが内蔵されていないブラウン管のカラーTVが、まだ現役です。 2002年ビクター製。故障はいままでただの一度もありません。 かさばっていることが欠点ですが、画像も不満はありません。 でも、これも、アナログ放送終了とともに、あと50日ほどの命です…。 30年ほど前の話になりますが、水間鉄道の車庫を見学させてもらったとき、 作業員の方とこんなお話をしました。 (古いことなので創作部分もあるかもしれませんが、大筋は間違いありません。) (私)「水間鉄道では、南海のお古である1201形をずっと使い続けていらっしゃるわけですが、 今国鉄では、新性能車である101系などに大量の廃車が出ています。これを譲り受けるとかいうのは考えないのですか?」 (作業員のおじさん)「国鉄?国鉄のはダメだ。時期が来れば、黙ってても新しいのが入ってくるもんだから、 そこまで持たせることしか考えていない。だからお払い箱になったときはもうガタガタだ。 ウチみたいな中小は、おいそれと新車なんて買ってはもらえないんだ。だから大切に使う。 南海の1201形はいい電車だ。古いがまだまだ使える。」 実際、南海はその当時貴志川線で1201形を使っていました。 今でもそうです。本当に南海という会社は電車を長く大切に使う会社だと思います。 南海線の7000系は、片開き4ドアのスチール製抵抗制御車です。 そう聞けば、いかにも古くさい。 しかし、虚心坦懐になってその乗り心地を体感してみてください。 抵抗制御とはいえバーニア制御のステップレスでスムースな乗り心地は、 1960年代の車両とは思えないほどです。 103系には悪いのですが、まだ今なら新今宮乗り換えで103系と乗り比べができます。 是非おためしください。 さすれば7000系が、南海本線で10000系とともに今なお特急サザンにも用いられるのも納得いただけると思います。 確かに7000系は209系より電気は食うでしょう。 レトロともいえない中途半端な古くささは見た目にも個性に乏しく、 人気車両とはいえないのですが、意識して乗ればこそわかる名車です。 こんないい電車をただ古くなったからと、お払い箱にしない南海の姿勢こそエコといえるのではないでしょうか。 それだけではありません。 今あるものを大切に使うことは、技術(ノウハウ)の伝承という観点からみても大切なことなのです。 10年では見えてこない弱点(欠陥)も20年30年と使い続けている内に見えてくるのです。 今日本は鉄道を輸出産業にしようと考えています。 しかしコスト面では後発の韓国や中国に太刀打ちできません。 日本の技術のいいとこ取りをされているようで、なんか悔しいのですが、 日本の車両メーカーと実際に車両を運用してきた現場が長年積み上げてきたノウハウの数々において 日本が負けるはずはありません。 だからこそ、これを失ってしまってはいけないのです。 今後電車を発注する途上国にとって、大切なことは 初期投資の費用もさることながら、長い目で見れば、 信頼性の高い高品質なもの… つまり故障知らずで長持ちする車両こそがもっとも期待されているのではないかと私は思います。 1992年にデビューした901系は、209系900番台に量産化改造され、 2007年.10月~2008年.1月にかけて廃車されてしまいました。 予定通りとはいえ15.6年という寿命はやはり短すぎるような気がします。 209系量産車についても、このあとを追うもの…と私は思いこんでしました。 ところがなんと言うことでしょう! 209系2000番台がデビュー。2009年10月から運行開始したではありませんか。 これは京浜東北線でお払い箱になった0番台を改造したものです。 先頭車については座席をセミクロスシートに改造し、強化型スカートを取り付けました。 また2号車(モハ208)にはトイレを設置するなど近郊形電車の仕様となって生まれ変わったのです。 まだまだ使える。209系は予想に反し!まだまだ使えることが立証されたのです。 これは、重量半分、コスト半分そして寿命半分という命題を突きつけられながらも、 しっかりしたモノ作りにこだわった日本の車両メーカーの底力と 寿命半分であろうがなかろうが、手厚くメンテナンスしてきた 浦和電車区の”士気の高さ”があればこそできたことなのではないでしょうか? 「-走るんです-とは言わせない!」 そんな現場の意地が、901系から209系に引き継がれていったように私には思えるのです。
参考文献;鉄道ピクトリアル 「特集 JR東日本 209系 E231系」No732 2003.6 ほか新車年鑑 ;JR電車編成表 93年版 |
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