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2007.7.16UP | |||||
J鉄局TOP>珍車ギャラリー>JR東日本 EF58 61 お召し本務専用機EF58 61 −最初で最後のロイヤルエンジン−鉄道車両も数々あれど、この車両ほどカメラにその姿を納められた車両は、他にないのではないでしょうか。それでなくてもEF58は人気の車両です。 これに加えてお召し列車専用機という、これ以上ない晴れ舞台を任されたEF58 61は、特別な車両という点で、 鉄道マニアなら、まず知らないという人はいないといっていいでしょう。 またこのページをご覧いただいている皆様にとっても 「思い出深い機関車だ。」と思っておられる方が多数いらっしゃるのでは。と拝察いたします。 当 J 鉄局の珍車ギャラリーは、珍しい鉄道車両の画像をウリにしているわけですが、 そうした点では、ご紹介するには及ばない気さえする車両です。 しかし、なぜEF58は、これほどまでに人気の電気機関車となったのか? また、お召し列車とは、専用機であるEF58 61とは、いったいどんな車両なのか? とつっこんでみると、意外に知らないことも多く、調べてみて初めて 「ほお、そうだったのか。」と興味深いことが次々と湧いて出ます。 EF58は、本当に奥の深い車両で、番号をいうだけで一台一台その違いについて延々と語り出すマニアがいらっしゃるほどです。 私は、そんなお方ほどのうんちくを披露することはできませんが、まずはEF58のアウトラインからご紹介しようとおもいます。 EF58は急行旅客用電気機関車私は子供の頃、絵本でEF58のことを知りました。そこでは足の速さを自慢するEF58と力持ちであることを自慢するEF15が登場し、互いの自負心から、EF58は、 「フン、そんなにノロくていいんだったら、幾らでも運べるぞ!。」とEF15を鼻で笑い、EF15も、何くそと 「こんなに軽いんだったら、幾らでも飛ばしてやる!。」と豪語するのです。 話の成り行き上、両者は仕事を取りかえっこするのですが、結果は双方とも全くだめで、 何につけ、適材適所が大切なのだということをその絵本は教えていたのでした。 何を隠そう、EF58は急行列車を高速で運転するために作られたものなのです。 事実、EF58は東京-大阪間の特急「つばめ」「はと」の先頭に立ち、国鉄の花形だった機関車です。 EF58の人気の秘密は、まずこの点です。 でも、その人気は、特急列車を牽引したからだという単純なものではありません。 EF65やEF66は、特急列車も貨物列車もこなせる万能機関車ですが、スペシャリストでない分どういうわけか。 EF58ほどの魅力に乏しいのです。 その人気の秘密は、スタイルにもあります。 先端を少し絞った湘南形のスリムな面立ちに、電車並に長いスマートなボディー、そしてメカニカルな足回りも 新型電気機関車には見られない魅力です。 ところが、EF58はデビュー当初、車端にデッキのついたEF15のようなスタイルで登場しているのです。 調べてみると、EF58は戦前の急行用機関車EF53.57の流れを受け継ぐものではなく、 戦時中に作られた貨物用機関車EF13を母体としたものだったのです。 客車の暖房用SGすらもたないEF58 1次形は、電動機をはじめ多くの部品を共用するEF15と、 ギヤ比が違うだけの兄弟のようなものであったともいえます。 車体構造も後輩のEF60以降の電気機関車とは全く違います。 まず台車ですが,EF58では、電動機を取り付けた3軸の動輪を持つ主台車に2軸ボギーの先台車を取り付けた構造で、 これらの台車を2つ、中間連結器で繋いだ構成(2C+C2)になっています。 そして連結器は双方の先台車の先端に取り付けられているのです。 私の言っていることがおわかり頂けるでしょうか。 普通、電車でもそうですが、電動機付きの台車のパワーは、車体(ハコ)で受けとめられ、 車体についた連結器でパワーを他車に伝えます。 しかしEF58では、台車からじかに他車へパワーが伝えられるのです。 そんなわけで、台車はめっぽう頑丈ですが、車体は乗っかっているだけなので、ほどほどでいいということになります。 大きな期待を持って迎えられたEF58形でしたが、なまじ高速運転するものでしたから 振動も、騒音もハンパではなく、たてつけの悪さも手伝って乗務員からはオンボロ機関車のレッテルを貼られる始末でした。 また故障も多く、現場からは疎んじられる存在だったというのも信じられない気がします。 それでも、EF58はそれらの欠点を克服し、SG(暖房用蒸気発生装置)も取り付け、 車体をストレッチして、スマートなあのEF58に生まれ変わってゆきました。 デッキ付きの旧タイプも車体を載せかえ、昭和33年には、総勢172両のEF58が勢揃いしました。 外観もさることながら、これほどまでに手を加えられた電気機関車はあとにも先にもないのではないかと思われます。 EF58が旧型といわれるのには、その制御方式が旧態然としている点も挙げられます。 新型は、駆動時一気にノッチアップしても、定められた電流値になれば自動的に抵抗の繋ぎを変更し加速してゆきます。 しかしEF58では、単位スイッチ式となっており、手動で繋ぎを変え加速してゆくのです。 EF58の運転台の右手には、大きなマスコンが備えられていますが、レバーのところには幾十もの刻みがつけられ、 機関士は、これをカチン、カチンと切り替えてゆくのです。 ブレーキについても応答性が悪く、EF58の機関士であった方の手記を読むと EF58こそは機関士の技量が試される取り扱いの難しい機関車であったようです。 とはいえ新型には負けない素晴らしい早さをもつ機関車で、それがまた誇らしいことであった。とも述べられています。 そんな誇りが、お召し列車専用機EF58形の背景にあります。 お召し列車専用機 EF58 61お召し列車とは天皇陛下がご乗車になる特別列車で、日本全国で行われる国民体育大会や植樹祭などでのご利用が中心となっています。 その他、皇太子殿下をはじめとする皇族の御乗車用列車として、 また外国からの賓客をお乗せする特別列車にも、お召し列車は使用されました。 当然非電化区間も走るものですから、古くは蒸気機関車がお召し列車を牽引しています。 普段はススにまみれた車体がこの日ばかりはピカピカに磨き出され、その姿は本当に美しいものでした。 このようにお召し列車を牽引するために指定された機関車は多数いたのですが、 その中でも蒸気機関車ではC51 239号機。 電気機関車ではEF53 16号機などは、お召し列車専用機として特別に扱われてきました。 しかし、それぞれその折々に調子の良かった機関車が指定を受けたに過ぎず、 生まれながらにしてお召し列車専用機の指定を受け発注されたのはEF58の60号機と61号機しかいないのです。 なお、EF58お召し列車専用機計画を推進した西尾源太郎氏によると、 あくまで本務機は、61号機であり、60号機は補佐的な役割を持って充当された。 とのことですから、61号機こそが、唯一の生まれながらにしてのお召し列車専用機ということができるでしょう。 また、61号機を含むロットは1次車から較べて、格段にメカも車体も洗練され、 特に前面窓が大型化された最も美しいグループだといえるでしょう。 61号機の美しさは、単に塗色が違うから、ステンレスの帯が違うからというだけではないと思われます。 国鉄時代のデータですが、61号機は、昭和28年から60年までで、110回を超えるお召し列車の先頭に立ちました。 一方で61号機は一般の列車の牽引にも使われています。 しかしそれはあくまで電気部品の劣化を防ぐものであって、足慣らしといってもいいものです。 昭和50年半ばのデータから見ても、 一般機の走行距離のほとんどが、400万キロを超えていたのに対し、61号機はその半分程度でした。 名前が変わったりはしましたが、ずーっとあの東京機関区の地を離れることなく大切に使われ、手入れされてきたことが、 長く生き延びられた大きな理由であると思われます。 先日の朝日新聞によると、「JR東日本は、皇室専用「お召し列車」に新型電車を導入、この秋より運用を開始する。」とのことです。 現在のお召し列車は、 昭和35年に国鉄大井工場で作られた1号御料車をはじめ、昭和6年製の供奉車(=ぐぶしゃ 4両)により構成されていますが、 これを機に引退。さいたま市にできる「鉄道博物館」に移されるそうです。 もう、お召し列車専用の機関車が、作られることはないでしょう。
お召し列車専用機関車の時代は終わりを告げました。最初で最後のロイヤルエンジンの姿を、どうか皆さま。今一度、思い出してやってください…。
参考文献;鉄道ファンNo370;特集「お召機EF5861」の各記事 1992.2 ;「EF58形式の構造とメカニズム」荒金孝延氏 鉄道ジャーナル 1984.2 ;「EF58形の運転室から」西郷清氏 鉄道ピクトリアル No428 1984.2 |
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