鉄道写真管理局 珍車ギャラリー
  江ノ電 旧 500形  2010/09/11UP
JS3VXWのHP toppageへリンクHP  
 J鉄局TOP珍車ギャラリー>江ノ島電鉄  旧500形
江ノ電 旧500形 502 腰越 江ノ島電鉄 500形502 1956年 東洋電機製造
500形編成表
←藤沢@        鎌倉A→
デハ500-デハ550 Mc1-Mc2
−鉄道車両写真集−
○江ノ島電鉄 旧型車 300形 500形 600形 106形 
     1000形 (1000番台 1100番台 1200番台 1500番台)
 
2000形
 
レトロ電車 10形 20形 新500形 
の車両たちへJUMP
江ノ電 旧500形 502   江ノ島−腰越間 

江ノ電500形が生まれた当時

物事には,順序というものがあるのですが、
世の中そうはならないこともままあります。
江ノ電には現在300形という古い電車が存在します。
1000系以降の車両とは見た目にも大きな開きがあります。
その番号の開き方をみてもそうですよね。
この番号の隙間を埋める電車はなかったのでしょうか?

実は500形という電車が存在していたのです。


もちろん2006年に新製された新500形のことをいっているのではありません。
2003年には姿を消していまっている旧500形のことです。
以下500形とあれば旧500形をさすと思ってお読みください。

500形電車のことをお話する前に、少し江ノ電の歴史を振り返ってみます。
江ノ電は今でこそ、2+2の4連で運行するのが普通になり、
そこそこ乗客も乗車しています。
実は、私自身も江ノ電で座れた記憶があまりないのです。
しかし かつては経営状態が厳しく、新車を調達するのにも余裕がないという有様だったそうです。

そこで当時の江ノ電では、都電や東急玉川線など路面電車タイプの中古車を購入。
これを改造して走らせていました。
ちなみに,現存する最後の300形、305-355の車体は、
京王の前身である玉南電気鉄道1形の車体台枠を再利用したものです
これもいわゆる路面電車の車体です。

そんな中にも、江ノ電オリジナルの新車が誕生しています。
それが旧500形です。
生え抜きの、江ノ電にとっては虎の子の電車と申せましょう。
普通なら愛着もあり長く使われるのはこちら、と考えるのが普通です。
でも、こちらが先に姿を消してしまったのです。

いったいなぜ?

500形という電車

丸みを帯びたしゃれたデザインの500形は江ノ電としては先進的な電車です。
両開きドアは今でこそ当たり前ですが、当時としては珍しいものでした。

一方古くさい一面も見られます。デビュー当時はポール集電です。
正面の中央部にあたる大きな窓は一段下降式になっていて
ここをがばっと開けてポールの上げ下げをしていたのです。
1973年にZパンタに切り替えられ、窓を開く必要もなくなったのですが、
このデザインゆえ多量の雨水が窓の下に流れ込み
この部分の腐食は半端ではなかったようです。

結局、嵌め殺しにしたのですが、今度は運転台への通風がままならなくなり、
それを改善するために側面にまで回り込むパノラミックウィンドウを分割、
これを開閉可能にしました。
このことで正面5枚窓ということになったのですが、
丸みを帯びた端正な顔つきは喪われてしまいました。
江ノ電 旧500形 改 鵠沼
江ノ電 旧500形 501  鵠沼 

話が横道にそれてしまいました。

500形が短命に終わったのは顔のせいではありません。
実は500形は、とある理由により冷房改造が出来なかったのです。
それこそが廃車となった大きな原因と思われます。

500形は冷房改造できなかった

冷房改造できない理由は色々考えられます。
まずは車体強度の問題です。
「東急の青ガエル」こと旧5000系は軽量がウリのボディでした。
柱で支えるのではなく面全体で支える張殻構造。
それ自体は問題ないのですが、
この車体に大型の冷房装置を乗っけるのには無理がありました。
5000系のうちいくつかは、地方で第2の人生を送ることになったのですが、
冷房改造ができず、そのほとんどが姿を消しています。

冷房改造にあたって車体の新旧は関係がありません。
旧式ではあっても300形は冷房改造されています。
広島電鉄などでもかなり気合いの入った旧型車両が冷房改造されています。
早い話が頑丈な車体であれば冷房改造は可能なのです。
さすれば500形は車体強度に問題があったのでしょうか?
と思って車体重量を調べてみました。結構重量があります。
500形は東急の青ガエルみたいな丸みを帯びた車体ではあります。
しかし張殻構造ではないようです。

では、何がいったい原因だったのか?

私には、長いことその理由が分かりませんでした。
そしてある日、参考文献「江ノ電―懐かしの電車名鑑 JTBキャンブックス」 に出会ったのです。
それによると
500形に冷房装置を取り付けれなかった理由は、
それは、なんと台車の位置が問題だったというのです。
300形と500形のサイドビューを較べてみるとよくわかるのですが、
台車と先端部までの長さ(オーバーハング)が40cmも違うのです。

もっとも、500形が普通の電車に較べて、台車間隔のバランスが変なのか?
というとそんなことはありません。
むしろ300形のほうが台車の間隔が異常に狭いといえるくらいです。
前述したように300形(305-355)は、
京王の前身である玉南電気鉄道1形の車体台枠を再利用したものです。
いわゆる路面電車の車体ですから、
車端部の乗降扉は一段低く設定されており、
台車の位置は中心に寄せざるを得ないという構造をもっていたのです。

江ノ電では、この台車の位置こそが大きな問題となりました。
今でこそ法律上、鉄道法となっている江ノ電ですが、もとは軌道法による鉄道でした。
今でも併用軌道区間が存在しているのはご存じの通りと思います。
そんなわけで、古い橋梁をはじめ軌道がヤワなのです。

かつて江ノ電は、単行で列車を運行していましたが、
今は連接車を2本つなぐのが標準の編成です。
さてこの時500形同士を連結すると、その連結部分に台車が寄ってきますから、
ここに車体重量が集中するということになります。
なお車体に冷房装置を取り付ければ、
それでなくても軽量の短冊レールに相当な重量を負わせることになるわけです。

一方300形ならその重量を分散できます。
路面電車であったがため
台車の位置を中心に寄せざるを得なかった300形ですが
でもそのことが、江ノ電の軌道にやさしく、
冷房改造工事に大きなメリットをもたらすとは、
その導入時、想像もつかなかったことだったのではないか。
と思われるのです。

かくして300形は生き延び、500形は不遇を託つことになりました。

でも500形は完全に消滅したわけではありません。
廃車後、台車などの足回り(1989〜に取り替えられたカルダン台車)は新製されたレトロ電車20形に流用されました。
また2006年に登場した新500形は、500形のイメージでもって車体が設計されているのです。
引き継がれたものは番号だけではありません。
かつて500形に寄せられた江ノ島電鉄関係者の方々の思いも引き継がれたように感じられるのです。

江ノ電 新500形 長谷
江ノ電 新500形 551   長谷駅 

参考文献;江ノ電―懐かしの電車名鑑 JTBキャンブックス 湘南倶楽部 - 2003/10/9
J鉄局 トップページへ  鉄道写真管理局 (JR/JNR)へ (私鉄/都市鉄道編)へ 鉄道車両写真集INDEX 
 鉄道切符管理局 
ローカル線切符紀行へ  リンク集へ   鉄道資料室へ
JS3VXWのHPです