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  箱根登山鉄道 1000系 2200形  2016/08/31 UP
  
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箱根登山鉄道 1000系改 ベルニナ号3連 01、03F
←小田原、強羅①   出山(信)上大平台(信)②→
クモハ1000-モハ2200-クモハ1000
  Mc1-M-Mc2  
1001+2201+1002    1003+2202+1004
参考;私鉄車両編成表2011年版
-鉄道車両写真集-
箱根登山鉄道 1000形 2000形 3000形

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箱根登山鉄道 1000系03F? 2200形 2202  撮影 2016/08 大平台駅 

「ベルニナ号」になった「サン・モリッツ号」 - 箱根登山鉄道 1000系2200形-

1000系は45年ぶりとなる新型車両です。1981~84年に2編成が増備されました。
箱根登山鉄道は、言わずもがなの山岳路線です。
80パーミルという急峻な急坂で運行するために他社にはない特殊な装備が満載されています。
詳しくは珍車ギャラリー 箱根登山鉄道 モハ2形 110ご覧ください。

1000系については主電動機に東洋製のTDK-8150-A(95kW×4)を採用。
これを中空軸平行カルダンで駆動します、歯数比は6.0。
制御器はPE36-A(1C4M)を搭載。力行13段・抑速電制13段となっています。
ブレーキはHRD-1を採用。別に保安ブレーキとして、箱根登山鉄道全車に装備されているレール圧着ブレーキを装備しています。
また空転・滑走を自動検知し、発生時には車輪の回転を抑える再粘着機構も装備しています。
さて箱根湯本以北では600Vとなるため在来車では手動で電圧の切替を行っていましたが、
1000形では電圧検出継電器を使用、自動的に切替できるようにしました。
45年の歳月を経て、ようやく箱根登山鉄道は新時代の車両を手にしたのです。
しかし冷房装置を導入することはできませんでした。
冷房車の投入にはまだ5年の歳月が必要だったのです。

初めての冷房車として1989年に登場したのが2000系です。
2000系「サン・モリッツ号」についても触れておきます。
主要な機器は5年前に登場した1000系「ベルニナ号」と同一仕様です。
すなわち2000系「サン・モリッツ号」は、箱根登山鉄道初の冷房車であることから形式を改めたといっていいでしょう。
とはいえこれが特殊な路線条件の箱根登山線には大変なことなのです。
まず半径30mの急曲線を通過するため車体長が短い上に、急坂を登り切るため全て電動車となっています。
ですから床下に機器を艤装するスペースが確保できません。
屋根の上にも抵抗器があるため、こちらにも取り付けスペースがない。
結果、客室内床上にインバータ式床置き冷房装置(13,000kcal/h)を1両あたり2台設置することにしました。

さて1000系です。デビュー以来20年を経た2004年にようやく冷房化改造が行われることになりました。
この時、1000系の輸送力を増強するため2000系の中間車2両を1000系の編成に組み込むことにしたのです。
でも中間車を引っこ抜かれることで2000系が2両編成になってしまい結果としては輸送力増強にはつながりません。
なぜそのようなことをしたのでしょう。
実はこの中間車が冷房化の鍵だったのです。
2000系と同様、1000系でも客室内に床置き式冷房装置を搭載すればよさそうなものですが、
1000系に装備されている電源装置では容量が小さく、冷房用電源の確保することができなかったのです。
そこで、大容量の電源装置を装備する2000系の中間車を連結し、そこから冷房用の電源を確保することにしたのです。

そのようなことができたのは、1000系と2000系が基本的に同じ足回りであったからです。
中間車に新車を投入することも可能ではあったでしょうが、
車齢が20年も違う新車を組み込むのはいかがなものでしょう?
いずれ1000系にも引退の時期が来るでしょう。その時に新車の中間車を廃車にするのはあまりにもったいない。
かといってその中間車にあわせて新車を造るのも時代錯誤であるように思われます。
中間車を引っこ抜かれることで輸送力増強にはつながりませんが、このことで冷房車を増やすことはできたのです。
1000系引退の折には、中間車は2000系に戻してやれば最後の最後まで有効利用できます。

輸送力増強という目標よりも冷房化を優先させたようにも見えますが、
1982年からは各駅停車用の車両も乗り入れさせ箱根登山鉄道の輸送力はUPしているのです。
かねてから、箱根湯本まで小田急の特急ロマンスカーが乗り入れていましたが、
2000年には小田原-箱根湯本間の登山電車は朝夕のみとなり、2006年にはすべての列車が小田急の車両に置き換えられました。
そして同区間(正確には車庫のある入生田-小田原間)で登山電車が乗り入れるための標準軌レールも撤去され、
今や小田急の路線といっても差し支えないほどです。
でもそのことで箱根登山鉄道は自社の登山電車を箱根湯本以北の山岳線に集中投入できます。
しばらくは旧型のモハ1形2形を3連で使用して、2000系には新型の3000系を増結することで繁忙期をしのぐ…。

1000系の3連化にはそんなしたたかな計算があったのです。


参考文献:「特集 関東地方のローカル私鉄」鉄道ピクトリアル:1996年4月号 No620

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