鉄道写真管理局 珍車ギャラリー  JR貨物 EF210形300番台 2016/09/30 UP
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EF210形
300番台
301 2013年 川崎 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
18.600 2.887 4.078 100.8
制御方式 主変換装置 モーター(kw) ギア比
PWM方式
電圧形VVVF
インバータ
IGBTインバータ FMT4×4
(565)
5.13
ブレーキ パンタグラフ 台車
発電ブレーキ付き
電気指令式
空気ブレーキ
FPS4A FD7S/FD8S
参考文献:鉄道ピクトリアル 鉄道車両年鑑 2014年版

セノハチを飛び出したモンスター

さきにEF210形についておさらいしておきましょう。
EF210形は1996年に試作機901号機が登場、
1998年から量産が始まった直流電気機関車です。
全長18,20 全幅2,887 高さ3,980 運転整備重量は100.8t。
最高速度は110km/h(設計最高速度120km/h)
1時間定格出力は3,390W。VVVFインバータ制御で、0番台はGTO素子(1C2M)

EF200形の後継機ではありますが、1,600t貨物の牽引を念頭に製造されたEF200のパワーを抑え、
従来EF65、EF66形が牽引してきた1,300t貨物を運転することを目標に製造されたものです。

2000年以後製造されているグループは100番台(101~173号機)となります。
VVVFインバータの整流素子をIGBTに変更し、制御システムも1C1M(主電動機1基に対して1基の制御装置を搭載)に変更しました。

そして2012年に登場したのが300番台です。
「セノハチ」用EF67-0番台の置き換え用として、100番台をベースに製造されました。
新型緩衝器を搭載し、そのため全体で400mm全長が長くなっていますが基本性能は変わりません。

そう、100番台と基本性能は変わらないんです。そこがポイントです。

え? とお思いかもしれませんが、いままで「セノハチ」用に投入された電気機関車は同区間専用の特別仕様車なのに対し
300番台は「セノハチ」専用機という位置づけではないのです。

ここで「セノハチ」をご存じない方のためにご説明させていただきます。

 広島から東へ約20km。瀬野駅から八本松駅の10.6km区間には山陽本線きっての「難所」があります。
両駅の頭文字をして通称『セノハチ』と呼ばれるようになりました。
22.6‰(パーミル)という急勾配が続く難所で、1894年の開業以来、蒸気機関車が補機として使用されてきました。
 私の記憶にあるのは、電化以後、EF59形が補機として使われてきた時代からです。
運用区間や連結両数は列車によって異なっていました。
基本的に貨物列車は瀬野駅から重連で後補機運用を行うのですが、切り離しは八本松駅手前で走行解放されました。
600t以下の貨物列車、旅客(荷物)列車については単機で補機運用が行われました。
前述のように瀬野駅で後補機を連結するのが基本ですが、
寝台特急列車や高速貨物列車については広島駅(操車場)にて補機の連結が行われ、瀬野駅は通過というパターンもありました。
 また走行開放を行わず連結したまま西条まで走行し、そこで解結されるというパターンもありました。
 さて瀬野八は上り方向への片勾配です。
よって後補機の勤めを終えたEF59形は瀬野まで回送されるのですが、列車密度の高い山陽本線ゆえに単機で回送されることはまれで、
最低でも重連、最高で六重連を組成して回送を行っていました。

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ここでEF59形についてお話しします。
EF59形は1962年のセノハチ電化後、従来のD52形蒸気機関車を置き換えるべく投入されました。
しかし新造車両ではありません。
信越本線電化および東北本線・高崎線の客車列車の電車化により余剰となるEF53形を改造して補機専用機としたものです。
(EF53形は1968年までに19両全機がEF59形に改造。のちにEF56形からの改造車が5両が追加され、EF59形は計24両が在籍しました。)
主な改造内容は 歯車比の変更(2.63 → 3.67)並びに重連総括制御装置の設置、
そして上り方に、走行解放用の連結器自動解錠装置を取り付けたことです。
下り方に、V字のトラ模様(警戒色)を塗装したことも挙げておきましょう。

なお、10000系貨車で組成された高速貨物列車で補機運用を行うには、ブレーキ管やジャンパ連結器の接続が必要です。
そこでこれらの解放作業を簡略化するため、電空式密着自動連結器も取り付けました。
結果、上り方の連結器周りは、非常にいかめしい面構えとなりました。

1977年、セノハチに新しい仲間が登場します。EF61形200番台です。


これもまた改造車です。クイル駆動のEF60形(初期車)を、セノハチ用補機に改造しました。
200番台という番台区分となっていますが、EF61形のオリジナル(=基本番台)とは何の縁もゆかりもなく、
別形式にしてもおかしくない機関車です。
1,000t以下の列車においては単機で、それ以上の重量の列車においては重連で使用することを前提に改造されました。
その改造内容はというと--
上り方に貫通扉とデッキを設置。連結器を電空式密着自動連結器に交換し、これに走行解放用空気シリンダーを設置しました。
重連で使用するため総括制御用ジャンパ連結器も設置しています。
つまりEF59形の機能を引き継ぎながらパワーアップした仕様といっていいでしょう。
しかし、重連使用時に不具合が見つかり、14両改造する予定が8両のみの改造となってしまいました。
(EF60 1・3・4・6・7・9 - 11→EF61 201・203・204・206・207・209 - 211)

そんなわけで、旧型電機であるEF59形×2が1,200t級列車の補機用として引き続き使用されることになったのです。
とはいえ、EF59形は旧型電機がベースの機関車です。
寄る年波には勝てず、1982年、新型が導入されることになりました。
それがEF67形です。
今回も新製とはならず、すべて改造車です。
EF67形は、 EF60形からの改造車である基本番台(1982年~)と EF65形からの改造車である100番台(1990年~)に分別されます。

基本番台
基本番台はEF60形の3次車から3両 (1 - 3)改造されました。
(EF67 1  2 3→EF60 104  129 88)
改造車とはいえ、今回は、EF59形2両重連によって行われていた1,200t級列車の補機仕業を単機で行えることを目標に製作されました。
まず、粘着力確保の観点から制御方式を電機子チョッパ制御(1C1M)としました。
回生ブレーキも採用しました。もちろん回生ブレーキを使用するのは下り列車です。
セノハチでは復路は機関車単機回送のみであることから、
両端台車の4個の主電動機を走行に使い、中間台車の2個は回生ブレーキ専用とするアイデアを盛り込んでいます。
なお台車や主電動機はそのまま利用されていますが、電動機1基あたりの出力は50kW増加、475kWとなりました。
EF61形200番台同様 上り方には貫通路・デッキを設け、走行解放用に連結器は自動解放装置を備えた密着自動連結器を装備します。

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100番台
EF61形200番台を置き換えるため、1990年からEF65形の基本番台最終グループを改造して5両 (101 - 105) が製作されました。
(EF67 101~105→EF65 134 131 133 132 135)
走行解放仕様を省略したのが大きな特色です。
ですから上り方のデッキは省略され貫通路も設置されていません。
ただ緩衝器を上り側の連結器に装備したため、EF65と比べ車体長がわずかですが長くなっています。
101・102号機は0番台と同様のサイリスタチョッパ装置を搭載しました。
103 - 105号機はGTO素子を用いたチョッパ装置を搭載します。
0番台と同様に、空転防止用の「均衡ハンドル」が、回送時用の「前進回生ブレーキ」が追加されています。
ただ通常の列車牽引運用も考慮に入れ、0番台と異なり下り方が先頭となる場合でも主電動機6基での運転を可能としています。
2003年より更新工事を受け、パンタグラフがシングルアーム式に、尾灯が角型のLED灯に変更されました。
窓回りを黒く塗装するなど外観にも変化が見られます。
まだしばらくは活躍を続けるでしょう。

お待たせしました。ここでEF210形300番台の登場です。
前述のセノハチ用EF67-0番台 (1 - 3)の置き換え用として
2012年度(301)・2013年度(302, 303)
計3両が広島区に配置されました。これでおしまい。となるところですよね。
ところが2015年度以降、300番台は追加され、鉄道車両年鑑2016年版によると309まで確認できました。
それだけではありません。当初広島区に配置された300番台がこぞって吹田区へ転属しているのです。
東淀川駅で撮影をしていた私は300番台と遭遇してびっくり。なんで?と思っていると
2016年のダイヤでは,
吹田から一旦は高松へむかったEF210形が、その後広島貨ターミナルへ向かい、
セノハチ運用を何本かこなしてから幡生へ、というような運用が設定されているそうです。


前々回、「えちぜん鉄道5000形」のことをお話ししました。
実は娘たちと「モンスターストライク」というスマホゲームをやっていたことがきっかけになっていたお話です。
その奇妙な展開についてはそちらをご覧いただくとして、
今回、EF210形300番台のお話をさせていただくきっかけとなったのも「モンスト」です。

「モンスターストライク」というゲームをご存じない方に、簡単にご説明します。
画面に配置されている敵モンスターに味方のモンスターをぶっつけて攻撃、敵を殲滅するというスマホゲームです。
味方のモンスターはボール状になっており、これをひっぱってはじき出すことで、
スマホの画面内を転がり周り多くの敵を次々に仕留めてゆくものです。ビリヤードをイメージしていただくとわかりやすいかなと思います。

なお、このゲームにはマルチ対戦というのがあって、同じゲームを仲間でリアルタイムに共有、
つまり同じ画面を見ながら敵を一緒にやっつける機能があります。
一人一人順番に攻撃を仕掛けるのですが、ウチの場合、私が攻撃に失敗すると
「お父さん。なにやってるのお!」となるわけです。
さて敵モンスターと壁との間の狭い隙間に自分のモンスターがいた場合、
水平方向に自分のモンスターを射出するとカンカンカン…とその隙間を往復し、敵モンスターにぶつかった分スコアがアップします。
私は当然のようにそう攻めていたのですが、娘たちは違います。
数回カンカンしたのち、必ずモンスターを隙間から外に放り出すのです。
なぜかというと、モンスターには友情コンボというのがあり、味方のモンスターとぶつかることによって力が覚醒。
一緒になって敵を攻撃できるのです。

つまり狭い隙間にモンスターを残しておくと、味方を援護することが難しく、
自らもまた援護を受けることができないというわけです。


かつて瀬野機関区に配属された機関車たちはセノハチスペシャルとしての使命を果たしてきました。
しかし彼らを維持するために設けらられた瀬野区は今やありません。
走行解放することもなくなり、特別な機材を維持する必要もなくなったからです。
本来なら、セノハチの補機自体を不必要とするのが一番効率的な方法です。
そうするには、関ヶ原越えする下り列車のように勾配を緩和する別線を敷設するのが一番です。
しかし、セノハチは地形上、また用地確保の面からも今更そんなことはできません。
ならばすべての機関車にセノハチを単機でクリアできる性能を持たせるという手もあります。
とはいえわずかに10.6km。この難所に合わせた性能をすべての機関車に持たせるというのも非現実的です。
ですから現状では、補機用機関車=EF210形300番台を他の区間で利用できるようにするというのが一番のようです。

娘たちの「モンスト」ではありませんが、モンスターを外に出すことによって攻撃のパターン、すなわち運用の幅をを拡げることができます。
また外に出してさえいれば、協力させることでチーム力をUP、すなわちメンテナンスの効率化を図ることができます。
EF210形は特に強力なわけでも、速いというわけでもありません。
EF65形に替わるスタンダードな機関車といえるでしょう。
しかし、外に飛び出すことで、縦横無尽に大活躍する300番台。
その発想からして今までにないパフォーマンスをもったモンスターと言えるのではないでしょうか。

参考文献:鉄道ピクトリアル 鉄道車両年鑑 2014年版
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