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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>jJR九州 8620形蒸気機関車 58654 あそBOY
JR九州 8620形蒸気機関車 58654伊予鉄のサハ502という電車がこのほど廃車されてしまいました。新性能車ではありながら、そのルーツは大正13年に遡るという珍車です。 そのルーツが何に由来しているかということなのですが、それは、台枠(フレーム)です。 機械というものは、簡単に言えば、フレームに部品(パーツ)を載っけたものだということが言えるでしょう。 蒸気機関車の場合、フレームにボイラーを載っけて、そこから発生した高圧蒸気を機関部分であるシリンダーに送り込み、そこで発生したエネルギーを走り装置である車輪にロッドを介して伝達する。という仕組みになってます。 ですから、それらのパーツについて、痛んだらそれを取り替えるということで再び業務に携わることが出来るのです。 でもそれらのパーツを支持する台枠(フレーム)がダメになってしまったら、 それらを有機的に機能させることが出来ないわけで、その機械(車両)はおしまい。ということになります。 しかし、フレームもまたパーツであることに違いはありません。 新たにこれを作り直し、各パーツを載せ替えれば再び蘇るのです。 あそBOYとして活躍していた、58654が台枠の損傷により、運転休止に追い込まれました。 もはやこれまでと思われていたのですが、この度、SL人吉として蘇ることになりました。 なんと台枠から、作り直したのです。図面があったから出来たというわけですが しかし実際はそんな簡単なものではありません。 書き込まれていたインチをメートルに換算するところから、作業は始まりました。 今では手に入らない素材や部品もあります。組み立てるための施設や工具が揃っているわけもありません。 コストの問題もあります。新しい部品や技術でこれを補ってゆく工夫も欠かせません。 もっとも、ボイラー部分にディーゼルエンジンを積み込み、火床部分に液体変速機を装備するという手もありますが、 それではもう8620形蒸気機関車とはいえないでしょう。 図面が示しているのは、石炭の燃焼でもって、13kg/cm2気圧の高圧蒸気を発生させ、 ここから 759馬力のパワーを叩き出し、数両の車両を牽引しながら、 最高速度95km/hで走行する8620形蒸気機関車の潜在能力です。 文字通り、その力を発揮してこその8620形蒸気機関車なのです。 同じDNAをもってしても、クローン羊のドリーは長く生きることは出来ませんでした。 また同じDNAもった人間の双子ちゃんもその育つ環境如何で大きくその人生が変わってゆきます。 生物と機械を同様に論ずるのは無茶なことかもしれませんが、 DNAも図面も万能ではない、つまるところ、どのように生み出し、どのように育てるかが肝なのです。 58654の履歴は、画像の横に載せておきましたが、 58654(あそBOY)は,1988年に復活し、2005年に運行休止となるまで、17年間、おもに豊肥線で活躍してきました。 なかでも、58654が立野のスイッチバックを登る姿は圧巻でした。 2001年の春。私は幼い息子とともに、オハフ50(あそBOY)の展望デッキで、 じっと目前の58654を見つめ続けていたのですが、まさにボディを軋ませながら、 「バッバッバッバッ。バッバッバッバッ。…」とあえぐように急坂に挑んでいました。 忘れることができない素晴らしい思い出です。−−−でも、やはり無理をさせていたんですね。 ウエスタン風のコンセプトを狙った「あそBOY」の姿は、阿蘇山のカルデラ風景にマッチしたものでした。 しかし、当時ボイラーも一新し、足回りも手入れしたとはいいながら、大正11年ものの58654には厳しすぎる仕事でした。 8620形蒸気機関車の台枠は、D51等の棒台枠とは違って板台枠です。 曲線を通過させる際には、これをたわませることでレールに車輪を追随させていました。 当然ひずみが発生するわけで、急勾配、急曲線の路線をフルパワーで走行させれば、傷みが早く来るのは当然です。 今回の、58654の復活にあたっては、この板台枠をどうするのかというのが大問題となりました。 台枠を受注した日本車輌は、板台枠に求められる性能の解析を元に、素材の「鉄」から鉄鋼メーカーとともに究明しました。 図面どおりに作る以上の陣痛をともなって生みだされたものです。 かくして復活なった58654は、SLあそBOYでの反省をふまえ、 「SL人吉」として肥薩線の八代−人吉間、いわゆる川線を走ります。 最急勾配は10パーミルにすぎません。 58654に永く活躍してもらうためにも、いい働き場所を与えてもらったものだと思います。 私は、かねてから肥薩線全線が、ユネスコの世界遺産に相応しい産業遺産だと思っていました。 またこれで新たに、肥薩線に役者が揃ったわけです。 近いうちにまた、霧島,指宿のんびりキップを使って、「つばめ&肥薩線」の旅をしたいものだと思っています。 参考文献;鉄道ジャーナル No513 「特集蒸気機関車 運転の現状−蒸気機関車がゆく−」鶴 道孝氏 2009.7
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