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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>JR九州 883系1000番台
「デザインは物に凝滞(ぎょうたい)せずして、能く世と推移す」-JR九州 883系1000番台-883系は1995年4月より特急「ソニックにちりん」としてデビューしました。大分自動車道の全線開通が間近だった事もあり、ライバルとなるのはズバリ自動車。 鉄道整備基金の認定を受け、高速化事業の一環として日豊本線の小倉 - 大分間の線路設備強化をおこないました。 しかし、もともとカーブの多い日豊本線です。 特急「にちりん」をスピードアップするために、新型車両にはカーブを高速で通過できる振り子装置を採用しました。 結果、博多 - 大分間は従来より20分ほど短縮されることになります。 883系に求められたのはスピードだけではありません。 イメージアップです。 787系「つばめ」もそうなのですが、至る所にロゴがあしらわれ、 ワイパーや連結器のカバーには不思議な形をしたものが取り付けられています。 そして車内の座席にはミッキーマウスのような形の耳がついていたりして、非常に楽しい車両となっているのです。 車両デザイナーである水戸岡氏が開発に至る経過を語っておられるのをYouTubeで見ました。 当時の日豊本線の特急は乗客は少なく、いわゆる荒れた状態だったそうです。 石井幸孝JR九州社長は、こうしたイメージの払拭のためにも、 新形車両のデザインにあたって、思い切った刷新を水戸岡氏に期待していたのです。 デザインに遊び心を取り入れ、走行する上で不要な部品をあえて取り付けているのは、 ーー楽しい旅の思い出に家族が電車をバックに記念写真を撮る。ーーということを意識してのことです。 1995年にはグッドデザイン商品に選定されました。 1996年にブルーリボン賞、そしてブルネル賞(長距離部門)大賞までも受賞します。 人気がその後押しをするかのように 1994年度に1次車7両編成2本、 1995年度に2次車7両編成1本、 1996年度に3次車7両編成2本、 1997年度に4次車5両編成3本の計50両が製造されました。 このようにファンのみならず利用客を大いに楽しませていた883系でしたが、 2005年より早くもリニューアル工事が進めらました。 そして、2008年には1000番台が追加されるのです。 需要の増加に見合う増備ということになりますが、 このことで5連であったAo6~Ao8編成を7連化し運用の制約を解消することもできました。 追加されたのが、モハ883形1000番台とサハ883形1000番台です。 さて、ここで画像をご覧ください。 既存の883系との外観の差異が一目で判別できますよね。 側面のビートが廃止され窓の形状も異なっています。 あんなにデザインにこだわっていた883系だったのにこれはどういうことでしょう? 883系がステンレス車だったのに対しアルミ合金製車体となったためです。 実は883系1000番台は885系の車体がベースになっているのです。 ここで885系についてお話しします。 885系は2000年にデビューしました。 長崎本線特急「かもめ」の速度向上を目的とした新型車両です。 JR九州には振り子式車両として、すでに883系が存在していたわけです。 最高速度も883系と同じ130km/h。 VVVFインバータ制御がGTOからIGBTに変更されているなど、変化はありますが、 足回りは基本的に変わりません。 883系のデビューから6年しか経っていないわけで、マイナーチェンジですませても良さそうなものです。 そうならなかったのは883系とは車体構造・デザインが徹底的に変更されているからです。 デザインは883系同様、水戸岡氏主宰のドーンデザイン研究所が担当したわけですが、 車体がステンレスからアルミニウム合金に変わった以上、一から見直すのはある意味当然でしょう。 ではなぜアルミニウム合金製になったのでしょう。 アルミは軽量かつ耐候性にも優れた素材です。 しかし工作するには難しくコストも高くなるという欠点がありました。 しかし日立製作所ではモジュール構体システム「A-train」を開発、これらの欠点をクリアすることに成功したのです。 もともとJR九州では工場が近いということもあって日立製作所(笠戸工場)に発注していました。 コスト面で折り合いがつくならためらうことはなかったでしょう。 そして、新しいデザインで列車をイメージアップする効果が大きいことは「ソニック」で証明済みです。 しかし長崎本線の「かもめ」を883系に置き換えたのでは、新鮮さはありません。 885系の白いボディはフレッシュな「かもめ」を見事に演出しました。 これに味をしめたわけでもないでしょうが、翌2001年には885系「白いソニック」もデビューします。 もし、逆だったら長崎の人々は拗ねちゃったかな。 それはさておき、 そうなれば883系ソニックも負けてはいられません。 リニューアルです。 883系1000番台は、車体がステンレスからアルミ合金へ変わり、形状はかなり違和感のあります。 おそらく、ともに在来塗装のままだったなら…目を覆いたくなるような編成だった気がします。 しかし全身をブルーメタリックで塗装した883系1000番台は、私にはすんなり受け入れられるのです。 ひょっとしたら、2005年にリニューアルデザインを決めた際、こうなることを予想していたのではないだろうか。 と私は感じたくらいです。 水戸岡氏はどのようにお考えだったのでしょうか? 「デザイナーは物に凝滞(ぎょうたい)せずして、能く世と推移す」というところでしょうか。 参考文献:鉄道ピクトリアル 「新車年鑑」1995年版 1995年.10月 No612/2000年版 2000年10月No692 の各記事 |
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