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2008.8.23UP |
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特急列車とは?−最もスローな特急−特急列車とは何でしょう。目的地に向かって急いで行くという意味をもつ急行列車の中でも、特別に早く、快適に仕立てられた列車のことをいうのでしょう。 (もっとも、現在JRにあって、急行はほぼ絶滅状態であって、JR九州においてはその姿を見ることはできません。) 普通、旅客というものは、早く目的地に着きたいと思うもので、ビジネス客ならなおさらのことです。 まあ早いといっても、それが5分や10分というのなら、あえて特別料金をはらってまで特急に乗ることはありますまい。 しかし、長距離となれば、それに比例して目的地に早く着きたい思いがつのるのは当然と申せましょう。 日本の鉄道において、その願いに最大限に応えているのが新幹線ということになるでしょう。 さて、列車が速いとはどういうことをいうのでしょう。 確かに最高速度300km/hで走る「のぞみ」はもちろん早いのですが、 東京〜博多間の営業キロである1174.9kmを単純に300km/hで割るわけにはいきません。 途中には停車駅があり、速度が制限される区間も存在します。 当然、初速から300km/hが出るはずもなく、加速中(減速中)の速度も考慮に入れる必要があります。 そこで、実際上の列車性能を測る指標として表定速度というものがあります。 表定速度=運転区間の距離÷運転時間(走行時間+停車時分) たとえば、のぞみの東京〜博多間の表定速度は、 1174.9km(東京〜博多間の営業キロ)÷5(運転時間約5時間)=となり、 約235km/hということになります。 (ちなみに最速の「のぞみ1号」は東京6:00→博多10:55で、4時間55分) 表定速度というものUPさせたければ、停車駅を減らすという単純な方法があるのですが、 「のぞみ」デビュー時には、名古屋を通過させるというダイヤに猛反発があり、一筋縄では行きません。 逆に今や、すべての「のぞみ」が品川、新横浜に停車します。 これは、航空機に対抗する手段としてとられているものですが、 集客力のある(首都圏の)停車駅でこまめに乗客を集めて、大量に運ぶという鉄道の優位性を最大限に活かしたものです。 とはいえ、これだけの停車駅という足かせがありながら、 航空機に対抗し、アドバンテージをとる、東海道新幹線N700系の性能は本当に凄いですね。 さて、速いものがいれば、遅いものもいるのが、この世の習いです。 表定速度が、一番低い特急列車は、何でしょう? といえば、もうおわかりいただけると思います。 今回の主役、JR九州の特急「はやとの風」です。 その中でも「はやとの風3号」は 吉松−鹿児島中央間68.5kmを1時間44分かけて走ります。 この列車の表定速度はというと 68.5÷104×60=39.5 なんと40km/hに満たないのです。 それだけではありません。 使われている車両が、ただ者ではないのです。 キハ147形とは、国鉄時代に、キハ17など老朽化した車両を取り替えるべく近郊形気動車として登場したものですが、 早い話、普通列車用として登場(S52〜)したキハ40系の一族です。 急行用として登場した車両(キハ65.58)が、特急となる例(ゆふいんの森1世etc)はあります。 また普通列車用の40系が、急行となる例(急行宗谷etcで活躍したキハ400etc)もあります。 しかし、一足飛びに、特急となった例を私は知りません。 もちろん、特急として使用するわけですから、改造工事は施されました。 前述の「ゆふいんの森1世」にしても、種車となるキハ65.58とは似ても似つかぬほどに改造されています。 しかし、この「はやとの風」はというと基本的なフォルムは、40系気動車のままです。 特にキハ147と増備車であるキハ47は、両開きのドアのままで、いわゆるデッキ部分がない通勤形車両のようです。 足回りはというと、確かに、220馬力から、360馬力のエンジンに換装されパワーアップしています。 しかし、キハ47 1045が、エンジンを換装し、キハ147 1045に名を改めたのは、彼が篠栗線で働くことになった時のことで、 特急使用とするためにパワーアップしたわけではないのです。 台車はというとDT-22。キハ40系(暖地形)の標準台車、つまりコイルバネのままです。 絶滅危惧種となりつつあるあの103系や113系と同じタイプです。 いまや通勤車でさえ、エアサスが当たり前の時代に、コイルバネの台車をもつ特急が、なんと21世紀に登場したのです。 ほかに適当な種車となる車両がなかったのかともいいたくなるのですが、 同じ鹿児島で毎日顔を合わせる「なのはなDX」キハ220−1102は、「はやとの風」と同じ2004年に登場しています。 それも特急ではなく、快速の指定席車としてデビューしました。 あえて、「はやとの風」にキハ40系を使ったとしか思えません。ではなぜ? 「霧島、指宿のんびり切符」から見るJR九州の思惑何年か前に、肥薩線の旅を計画しました。そのときに利用した切符はというと、「霧島、指宿のんびり切符」です。 肥薩線の全線と日豊線の霧島神宮以南、それに指宿までの指宿枕崎線がフリー区間となった切符で、 フリー区間は、特急の自由席が利用できます。また フリー区間までは、特急の指定席が利用できるだけでなく、九州新幹線を片道に限り利用できるという切符です。 ちなみに、博多−鹿児島中央までの往復運賃は新幹線利用で18840円ですから、12000円という価格は格安と申し上げるべきでしょう。 仮に、往復とも新幹線を利用すれば5330円プラスになるわけですが、このほうが安い。 そんなわけで、この切符の利用者すべてが肥薩線を利用することはないでしょうが、 私にはこの切符が、旅客の肥薩線利用を促しているようにしか思えないのです。 九州新幹線の開業によって、身近なものとなった鹿児島の旅。 しかし、鹿児島市という点を新幹線という線をつなぐだけでなく、新幹線によって得られた余裕の時間でもって、 旅客の行動範囲を拡大し、在来線を活性化するというJR九州の戦略を感じるのです。 だとすれば、JR九州は、このチャンスを活かし肥薩線ルートの魅力をアピールする必要があります。 九州新幹線は、最速の「つばめ1号」で鹿児島中央−新八代 35分というとんでもない早さで駆け抜けてしまいます。 加えて、鹿児島中央を発車した「つばめ」は、すぐさまトンネルに入り、地上区間での走行は思った以上に少ないのです。 とてもじゃないが、車窓を楽しむ列車とはいえません。 それに対し、肥薩線ルートは、まず情緒豊かな球磨川沿いをゆき、 人吉−吉松間では霧島高原の雄大な眺めを楽しむことができます。 そして、フィナーレは、鹿児島のシンボル桜島…。 これはもう立派な観光資源です。 ただ、そこを日常的なありきたりの車両で旅するとなれば、たとえそれが特急車両でも値打ちは半減してしまいます。 時間は九州新幹線がひねり出してくれたのです。スピードは二の次です。 のんびり切符の名が示すように、ほっと癒されるような印象的な車両で、ゆったりとした心に残る旅を提案しよう。 これが、新たな肥薩線観光列車に求められたコンセプトなのではないでしょうか。 そこで、キハ40系の登場です。 確かに普通列車用に作られた車両で、そのまんまでは何のインパクトもありません。 しかし、そのスチール製で重量感あふれるシルエットは、実に堂々としていると思われませんか。 現在、ローカル線に於いて、重量のある車両は軌道への負担とされ、 第3セクターのレールバスをはじめとして、JR各社も30t以下の軽量気動車が主流となっています。 しかし、それらはいずれも安物臭く、ぺらぺらで弱々しい感じを否めません。 事実、JR北海道の軽量気動車であるキハ130は、わずかデビュー以来14年間でそのすべてが引退し、 後継の車両はといえば、なんとキハ130が駆逐したはずのキハ40だったというのも皮肉な話です。 武骨ではあってもがっしりとした車体は、安心感を与えます。 これは想像に過ぎませんが、JR九州のデザインを担当するドーンデザイン社のデザイナーは、 キハ40系のフォルムに、言いしれぬ安定感があると見抜いたのではないかと思うのです。 「はやとの風」に用いられたキハ40系のカラーは黒。 ![]() これも、新型特急に用いるカラーとしては、普通考えられない色遣いです。 考えてもみてください。黒一色の800系新幹線「つばめ」なんて想像できますか。 しかし、元来、黒はとてもおしゃれな色で、ダンディーな男でないと着こなせません。 「はやとの風」のデザイナーは、キハ40系にこの黒を選んだのです。 はっきりいって、こんなにしっくりくるとは思いませんでした。 法人向けの超高級車センチュリーやプレジデントも色は黒ときまっています。 乗ったことはありませんが、きっと何ともいえぬ安心感に包まれているのでしょう。 また「はやとの風」は木を基調とした上質なインテリアを備えているばかりでなく、 座席数も少なく、じつにゆったりとした空間を提供してくれています。そう見れば 通勤車両向けの両開きドアも、他の特急専用車両にはない贅沢な仕掛けだと見えてくるから不思議です。 ハードだけではありません。 この肥薩線ルート(「はやとの風」「いさぶろうしんぺい」「九州横断特急」)を支える もう一つの柱。 それは、客室乗務員(つばめレディー)です。 本来の「つばめ」に対するのと同様、エレガントなお辞儀で列車を迎え、 笑顔とさわやかな心遣いで、私たち旅人を魅了します。 前述したように、「はやとの風」自体は定員も少なく、あまり収益が望めるものではないでしょう。 しかし、南九州の鉄道の旅を心に残る印象的な旅にすることは、 これからのJR九州の命運を握っているといっても過言ではありません。 なぜなら、かつての国鉄 鹿児島鉄道管理局を継承したJR九州 鹿児島支社を JR九州は、平成16年(2004年)本社直轄としたのです。 気合いの入れ方が違います。 適当な中古車でお茶を濁しているのでは決してない。ということは言えそうです 参考文献;鉄道ピクトリアル 新車年鑑 04 06 参考Webページ はやとの風の風の風
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