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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>JR九州 DF200-7000 - ななつ星in九州-
牽引するという誇り- JR九州 DF200-7000ディーゼル機関車-ななつ星in九州-JR九州は2013年、九州各地を巡るクルーズトレイン『ななつ星in九州』をデビューさせました。 寝台車5両とダイニングカー、ラウンジカーで構成された7両編成。 寝台はすべて個室で、スイート12室、DXスイート2室の計14室。 定員は合わせて28名という少人数のセレブための列車です。 そんなクルーズトレイン『ななつ星in九州』を牽引するのが 「DF200-7000」ディーゼル機関車です。 『ななつ星in九州』の専用機として、川崎重工業にて製造されました。 ところで、JRになってから旅客列車を牽引するための機関車として製造されたのは JR東日本のEF510形500番台とこのJR九州のDF200-7000しかありません。 客車列車はそうそうお目にかかれないようになってしまいました。 今や機関車は貨物列車牽引するための車両と言えそうです。 もちろん、JR貨物以外のJR旅客鉄道会社にも機関車はいます。 しかしその多くは除雪用、あるいは保線(レール輸送)用で、 これらでさえ現在その数を減らしつつあります。 そもそも機関車というものは、自力で走行できない客車や貨車を牽引するための車両です。 かつては朝夕のラッシュ時には長い編成の客車を牽引し、昼間や夜間では貨物列車を牽引したり入れ換えに従事したりと機関車は大活躍でした。 しかし、貨物列車は拠点連絡型になり、需要の少ないローカル線から貨物列車は姿を消し、 操車場で貨物列車を仕立てるための入れ換え作業も劇的に減ってしまいました。 そして、客車列車も電車や気動車に取って代わられることになります。 高加減速運転が苦手な客車列車はラッシュ時の高密度ダイヤについて行けないというのが大きな理由です。 JR東日本のEF510形500番台とこのJR九州のDF200-7000について、 大きな違いがあります。 JR東日本のEF510形500番台は従来の機関車と同じように、 貨物列車をも牽引しましたし、今やJR貨物に移籍し貨物列車を牽引しています。 しかしJR九州のDF200形はもっぱら客車列車を牽引するための機関車であり、 貨物列車を牽引することはあり得ないという発想の基に作られた機関車なのです。 もっとも、DF200-7000はその形式から、またその姿からもわかるように、 JR貨物が開発した電気式ディーゼル機関車DF200形「ECO-POWER RED BEAR」が基本とはなっています。 しかしDF200形は九州にいませんし、よしんば いたとしても交代要員にはなり得ません。 なぜなら、DF200-7000は特別仕様に改装されているからです。 77系客車にあわせたぴかぴか(ロイヤルワインレッド)の外見ばかりではありません。 まず連結器が違います。 貨車ではなく、『ななつ星in九州』77系客車と連結するのです。 これとあわせた密着式自動連結器を採用しています。(在来の車輛とも連結可能) 密着自動連結器を採用したのは、連結面間のアソビをなくし、 列車引き出し時や制動時に客車に伝わる衝撃を緩和するためです。 加えて、ダブルアクション式の緩衝器も追加されています。 機関車と客車とを繋ぐものは、それだけではありません。 さらに、1号車と7号車には、空気圧式のフルアクティブダンパが搭載されています。、 他、各台車に取り付けられた空気ばねの空気圧をコントロールするのも機関車からの指令です。 クルーズトレインにふさわしい乗り心地を提供するのに 客車のみならず、機関車にも相応の仕掛けを施しています。 しかし、最も大切なものとは何でしょうか。 それはブレーキではないか。と私は思っています。 国鉄時代。14系客車の臨時夜行急行に乗ったときのことです。 乗り心地の悪さに辟易した記憶があります。 14系客車は12系とは違い、特急電車並みの車体を有し、台車もエアサス付きです。 しかし、そのときの乗り心地は最悪でした。 しゃくるように前後動を繰り返して停車したかと思うと、 バア-ン!という音とともに発車。 前後に大きく体を揺すられ、簡易リクライニングシートは容赦なく、 跳ね上がり、私が眠りにつくことを許しません。 停車駅ごとに、これが繰り返されたわけです。 私はまどろむことさえできませんでした。 機関士は当然スムーズな運転をしたかったに違いありません。 そうならなかったのは、 なまじの腕前ではどうにもならなかったブレーキシステムに問題があるのではないか。 と私は思うのです。 当時の列車に装備されていたのは自動(CLE)ブレーキと呼ばれるシステムです。 これは、機関車からのエアーの増減でもって、各車両のブレーキ量を加減するというものですが、これについて もうすこし詳しく解説します。 自動ブレーキについて、すでに知っておられる方はすっ飛ばしてください。 そもそも、客車は(貨車も)コントロールされることはあっても、 自ら動き出すなどということはあってはならないことです。 ですから、機関車から切り離されている状態では動けなくする --つまり、解放時はブレーキがかかっている必要があります。 さあ、そこに機関車が連結されました。 機関車は客車へBP管経由でエアーを送り込み、 各車両に備え付けられた元空気だめに十分なエアーを充填します。 そうすることで、初めてブレーキシューが解放され、走行が可能になるのです。 ブレーキを懸けるときはというと、逆です。 BP管からエアーを抜くことでブレーキがかかります。 機関士は、BP管の圧力を加減することでブレーキ力をコントロールします。 走るホテルと称された20系ブルートレインでは、この自動ブレーキに一工夫こらし、 AREBブレーキが搭載されました。 従来の自動ブレーキでは110km/h運転できないことから開発されたものですが、 高速域での初期ブレーキ力をUPするため、BP管の減圧を促進するというものです。 そのために各車に備え付けられた電磁吸排弁を作動させエアーを抜きます。 しかし、そのためには機関車からの指令を受けるための電気回路が必要です。 また、元空気だめのエアーを激しく消耗するため、 BP管とは別系統のMR管で別途エアーを充填することになりました。 当然、そのシステムに対応した機関車が必要になります。 EF60形500番台。EF65形500番台です。 ブルートレインに合わせた塗装は伊達ではなかったのです。 さて、先だっての14系ですが、CLEブレーキを採用しました。 低圧の空気だめを用意し、そこにエアーを導きBP管の減圧を促進するシステムです。 これも元空気だめのエアーを激しく消耗するため、別途エアーを充填することが必要です。 14系では空気バネ台車を導入しています。 スハネフ14形に搭載された空気圧縮機から空気バネにエアーが充填されるのですが、 このエアーでもって元空気だめのエアーも補填することにしたのです。 この方法なら機関車からエアーを送る必要はありません。MP管は不要です。 電磁吸排弁を使わずともエアーの抜けは早いので、機関車からの制御回路も要りません。 すなわち、どのような機関車でも牽引が可能です。 しかし! 最後部の車両にエアーがたどり着くまでタイムラグが少なからず生じてしまいます。 どうしても応答性に問題があるのです。 停車するたびにぎくしゃくするようなことがあってはクルーズトレインとは申せません。 そこで『ななつ星in九州』では電気指令式空気ブレーキを採用しました。 機関車から客車へのブレーキ指令は従来通り、ブレーキ管の圧力変化でもって行います。 ただこれを電気信号に変換する読替え器を経由することによって、 電気信号で各車にブレーキ指令を送り 一斉 作動させることにしたのです。 なお、このテクノロジーはJR東日本の「E26系(カシオペア)」に導入されたものです。 『ななつ星in九州』では1号車と7号車にブレーキ読替え器を搭載しました。 機関車からも元空気ダメ管を連結して客車で必要な圧縮空気の供給を行いますが、 空気ブレーキに使用される圧縮空気は4・6号車に搭載したMH3095K-SC1500形電動空気圧縮器からも供給されることになりました。 機関車からのエアーが届くのを待つ必要はありません。 (なお電気指令式空気ブレーキが使用できない場合には、バックアップとして従来型の自動空気ブレーキに切替えて運転を継続できます。) 電気指令式空気ブレーキは新性能電車では当たり前のシステムです。 でも『ななつ星in九州』も電車と同様の操作で済ませることなどできません。 機関車のブレーキと客車のブレーキは別物です。 運転台にも別々に操作するブレーキ弁があります。 システムがいかに進歩しようが、この二つを使い分け、ブレンドしながら制動するということは電車とは別次元のものです。 上手な機関士は、最後尾の車両にまで神経を行き届かせ、 編成全体の連結器が、引き延ばされた状態か、圧縮された状態か。背中で感じながら停車させるというのですが、 これがいかに困難な技であるか。想像に難くないところです。 特にJR九州 鹿児島本線 博多-鳥栖間は、特急「つばめ」がなくなった今も、 高頻度でかつ様々な種別の列車が走行しています。 『ななつ星in九州』だけゆっくりじわじわ運転してて良いわけがありません。 だからといって、停車するたびにぎくしゃくするようなことがあっては クルーズトレインとは申せません。 『ななつ星in九州』の機関士さんはこのプレッシャーを常に受けつつ、 秒刻みのタイムテーブルどおりに、スムーズに走行し、定時ぴったりに それも数センチ単位の誤差もなく停止位置に すっ… と何事もなく停止させるのです。 メカニズムに的を絞ってお話しするつもりでしたが、。 やはり、最後は「ひとのちから」なのですね。 番台区分は、『ななつ星in九州』にちなんで7000番台としていますが 車両番号は7001ではなく7000です。 77系客車はすべて7000番台なのですが、その番号の末尾は号車にあわせています。 つまり3 - 6号車は、マイネ77-7003 ~7006という具合です。 機関車ですから0号車扱いということで納得できますね。 型式表記は「DF200-7000」。77系客車同様2編成目=2両目は意識されていないようです。 トラブルが起こったらDE10型ディーゼル機関車で対応するようですが、 基本そんなことはあり得ないというスタンスです。 唯一無二の存在なんですね。 客車が7両編成となったのは列車名『ななつ星in九州』にちなんでのこと、 といいたいところですが、 定員28名というのはいささか少なすぎるように思われます。 もっとも、このことで希少性が高められ、プレミアム感がましていとことも事実でしょう。 しかし、営業サイドからすれば、 「せめてあと、もう1両増でもやせないか。」というところでしょう。 「ななつ星in九州」が7両編成となったのは、駅設備等の制約があるため、 機関車を含めて8両(約160m)が限界だったからということだそうです。 編成表をご覧ください。 JR九州 77系 ななつ星in九州 ←① ⑦→ マイ77-7001+マシフ77-7002+マイネ77-7003+マイネ77-7004+マイネ77-7005+マイネ77-7006+マイネフ77-7007 下一桁が、号車番号と一致している点にご注目ください。 さすれば、牽引機であるDF200-7000の下一桁が1ではなく0であることに 納得がゆくところです。 さて、機関車の代わりに客車(7008?)を導入できたなら、定員を増やすことができますね。 機関車を不要にする方法。 それはクルーズトレインを電車、あるいは気動車にするということです。 JR東日本の「四季彩」もJR西日本の「瑞風」も、動力を客車に分散することで10両編成となりました。 「ななつ星in九州」の個性を際立てているものは展望車の窓です。 曲面ガラスを採用せず、窓枠付きの1枚窓となっているのですが、これを額縁に見立て、「30億円の額縁」と呼ばれています。 (30億円は77系の製作費用にちなむもの) この窓から観る風景が、額縁の中の1枚の絵となるという発想です。 ところが、機関車がつながっている側は…、というと ずーっと機関車の顔を見ていなければならないことになります。 実のところ、機関車で牽引するメリットはあまりなさそうです。 列車の動力を分散するというのは、いろんな意味で合理的です。 且つ優れた方式であるからこそ、新幹線というテクノロジーが確立したとも申せましょう。 動力をもたない客車たちは、いつも素直に動いてくれるとは限りません。 時には、足を引っ張り、時には、機関車を突き上げてくることもあるのです。 でも、だからこそ、それらをコントロールできたときに得られる充足感こそが、 機関士の誇りとなるのではないでしょうか。 --牽引する--すなわちリードするからこそ憧れの存在となり得るのです。 JR九州は、「機関車が牽引する列車」というスタイルにこだわりました。 --牽引する--というロマンから魅力を引き出したことによって、 JR九州は、クルーズトレインという新たな鉄道の可能性をリードしたのだと私は思うのです。 参考文献:鉄道のテクノロジー2「寝台特急」 2009年6月 三栄書房 鉄道ピクトリアル No896 鉄道車両年鑑 2014年版
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