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2011/01/15 UP 2011/01/22一部訂正 |
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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>JR東海 313系1700番台
境界線を越える意味−−JR東海 313系1700番台−−JR各社においては国鉄時代から、車両の形式について番台区分という分類が行われています。113系の湖西線バージョンであれば、それは700番台という具合です。 JR東海でも、その手法は引き継がれ、国鉄から継承した113系のうちでも、 東京口へ乗り入れるためにATS-P型を装備することになったT編成は 新たに600番台を名乗ることになりました。 まあ、113系ほどメジャーな系列になりますと、 国鉄時代、JR化以後を通じて、様々な改造工事が施され、 現場としても、それを区別するべく、かなりな数の番台区分が生じてきたというのは当然の結果でしょう。 ただ、前述の600番台は同時に700番台も生じることになって、 湖西線用の700番台と同じ番台を名乗ることになったのは我々マニアにとっては困りものですが、 JR東海としては何にも困らないのでこれで良しということなのでしょう。 JR東海の路線はもちろん一様ではありません。 それぞれの路線に対応する、様々な車両が活躍してきました。 国鉄時代から引き継いだ車両でみてゆくと、 東海道線などの幹線には近郊形の代表選手とも言える113系がいました。 富士山の麓を走る身延線では、車両限界の小さい山岳路線用の115系がいました。 そして、純通勤区間とも言える名古屋口の中央西線では103系も走っていました。 また名鉄パノラマカーに挑戦状を叩きつけた新快速には117系を登場させるなど、 国鉄も本当に多種多様な車両で需要に応じていたのだなあと今更ながらに感じられます。 鉄道ファンとしては、その個性的な車両達こそがまた、魅力にあふれているわけですが、 多種多様であるということは経済的に見るとどうでしょうか。 開発段階から会議を重ね、設計図を新たに引き直し、その分、違った部品、パーツを用意しなればならないわけです。 当然、製造段階から費用はかさんでくることになります。 また運行する現場にあっても、保守整備をする立場からも、その煩雑さに忙殺されることになってゆくでしょう。 車体も足回りも諸設備の操作方法も共通にしておけば、あらゆる局面に於いてコストを削減することができるのです。 21世紀の鉄道車両はその基本性能が優れていることで、 同じ系列、形式であっても、余裕を持って各線区の需要に柔軟に対応できるようになりました。 JR東海においては、313系がまさにその代表選手と言える存在です。 313系は、現在、前述のすべての路線で活躍しています。 それこそ新快速から山岳ローカル線に至るまでです。 セントラルライナー用の8500番台こそ、多少見栄えが違いますが、 これでさえ同じように塗り替えてしまえば、外見上、ほとんど区別はつきません。 そんなわけですから、ぱっと見、313系はおもしろみを欠く系列とも言えそうです。 しかし、そんな313系もよーく見てゆくと、 各線区、各使用目的に合わせてきめ細やかな対応がなされています。 それを示すのが番台区分です。 313系は1999年にデビューし、JR電車編成表2011年冬版によると、 現在、以下の表に示すほどにバラエティーに富んでいます。 初期のものから数えても、製造後12年にもなりませんから、まだ改造車は存在していません。 しかし、番台区分は20近くもあるのです。 新造車両だけでそれも10年ほどの間に これほど細分化したバリエーションを持つ系列は他に例を見ません。
表を見ていただければおわかりいただけると思いますが、 大きな区分は座席の形状によるものです。 加えて何両編成仕様かでこれを細分化するのが基本となっています。 ただ、山岳路線を含むローカル線用には特別仕様の車両を用意している点にご注目いただきたいと思います。 それが、1700番台.2600番台です。 山岳路線仕様とはいえ、モーター(C-MT66C/185kw)もギヤ比(6.53)もMT比(1:1)すら、他の313系と違いはありません。 オールマイティな基本性能をもつ313系の実力が感じられるところです。 違いはなんでしょうか。 まず寒冷地仕様であるということと、それに伴って半自動ドアスイッチが設けられていることです。 2600番台のロングシートはいかがなものか。と思われますが、車内の快適さを重視する姿勢はうかがえます。 そして、1700番台は2600番台とともに発電ブレーキ、ブレーキチョッパ装置を装備するのが大きな特色です。 313系のブレーキは基本的に回生ブレーキを採用しています。 しかし回生ブレーキ時に発生する電気エネルギーを使用してくれる他の電車がいなければ、ブレーキはきかないことになってしまいます。 1700番台や2600番台が活躍する路線は、閑散路線です。 都合よく電気エネルギーを消費してくれる電車がすぐ近くにいることは期待できません。 よって、違うブレーキシステムを用意するのは当然といえるでしょう。 また、強力なモーターを使用する関係上、また落ち葉などが影響して空転する可能性も高いのが当該線区です。 セラミック噴射装置を取り付け、空転対策をとっています。 加えて1700番台では、集電効果を高めるため、パンタグラフを2つ取り付けました。これは霜取りの役目も兼ねています。 まさに、万全を期していると言っていいでしょう。 それにしても、不採算路線である飯田線用として投入される1700番台に、なぜこれほどの心配りが必要なのか。 さて、この1700番台の活躍場所に目を転じてみると、意外な事実に行き当たります。 飯田線北部を中心に活躍するのが1700番台なのですが、 飯田線の北限である辰野駅を越えて、JR東日本上諏訪駅まで乗り入れてゆくのは当たり前で、 なんとスイッチバックまでして松本駅、いやそれどころか、ずーっと先にある長野駅へその足を伸ばしているのです。 JR化以後、JR東海に限らず、JR各社の列車は、当初、国鉄時代の列車ダイヤを引き継ぎ、境界線を越えて列車を運行していました。 しかし、JR各社とも自社線区に応じた車両を作り、列車ダイヤも地域密着型となるに及んで、 自社線区を越える列車の設定が激減しています。 前述の113系T編成についても、 JR東海はE231系のような4ドア車となるその後継車両を用意していません。 いまやT編成の運用はなくなり、JR東海の在来線一般車である313系は、その高性能をもってしても 3ドア車であることからして、もはや、国府津より東へ乗り入れてゆくことはないのです。 この傾向は、他のJR各社でもおおむね同じです。 JR東日本にあっても、かつては松本電車区の165系が中央西線中津川駅に結構乗り入れていました。 しかし現在中央西線におけるJR東日本の車両は、かなり影が薄くなってしまったようです。 それなのに313系1700番台はJR東日本の路線である篠ノ井線を通り、長野駅まで乗り入れてくるのです。 なぜでしょう。 ひとつ考えられることは、JR東海が100%運行する「特急しなの」にとって、 篠ノ井線から長野駅に乗り入れることが大前提となっていることです。 考えても見て下さい。 塩尻で運転を打ち切られて、JR東日本の列車に乗り換えを強いられるとしたら、 「特急しなの」の値打ちは半分もありません。 事実、篠ノ井線を通過する特急列車は「しなの」のみです。 列車ダイヤを編成するにあたって、篠ノ井線を含むJR東日本管内での発言権を確保してゆくことは 「特急しなの」の命運にかかっていることなのです。 篠ノ井線において「特急しなの」だけではなく、JR東海が普通列車も走らせているという事実には 特別な重みがあるということになるでしょう。 JR東海は、「しなの」定時運行のために万全を期した普通列車用車両を投入しているのだ…と。 あと、313系1700番台が、飯田線−上諏訪−松本−長野ルートを走るそのウラには、 リニア−中央新幹線−の存在があるのではないでしょうか。 これは臆測にしかすぎませんが、 中央新幹線は、南アルプスの土手っ腹をぶち抜き飯田へ乗り入れる南アルプスルートで建設されることになりました。 中央東線沿いにリニア−中央新幹線−を建設したとしたら、 JR東日本は高尾以西についてその経営をJR東海に押しつけてくるかもしれません。 南アルプスルートならそんな心配はいらないでしょう。 また、南アルプスルートは名古屋への最短ルートであると同時に 政治的呪縛から解き放たれる事がそのメリットといわれています。 でもそれだけではないと私は思うのです。 もし、これが完成したならば、どうでしょう。 品川を起点と考えた時、 山手線に乗って新宿駅で乗り換え、「スーパーあずさ」を待っているうちに、飯田駅に着いてしまうのが、リニアの実力です。 目的地が長野駅であれば長野新幹線に軍配があがるでしょうが、松本や上諏訪ならば、 飯田線−上諏訪−松本ルートのダイヤ次第で、リニアに軍配があがるのではないでしょうか。 そうです。飯田線という不採算路線を活性化させる可能性を秘めているのです。 ただ、それには飯田線−上諏訪−松本−長野ルートを確保しておく必要があります。 莫大な費用が見込まれる南アルプスルートを自前で工面しようというJR東海の思惑。 そんなことを、感じさせるのが313系1700番台なのです。
参考文献;鉄道ピクトリアル 「新車年鑑2007年版」No795 2007.10 JR全車両ハンドブック 2008 JR電車編成表2011年冬版 |
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