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2011/09/1220112011.9.12UP 2014/04/28 補筆訂正 |
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![]() えっ これもキハ11形?−JR東海キハ11形300番台−人は、そのものの特色やイメージでもって把握したものに対し、名前をつけてそれを認識−分類区別します。 JR車両の場合、名前ではなく系列(形式)と番台区分という形で区別されます。 改造による番台区分はさておき、新製時におけるこれらの違いは、 モデルチェンジとマイナーチェンジといって差し支えないでしょう。 しかし見た目、これは別系列(形式)とはとても思えないと思えるものもあれば、 同系列(形式)とするにはあまりに姿カタチがかけ離れているものもあります。 前者の例としては、113系と115系があります。 こちらについては、「珍車ギャラリーJR東日本 115系91編成 房総各線用−全く同じに見える2枚の写真を−」をご覧ください。 後者の例としては、415系基本番台と1500番台があります。 かたやスチール製である115系列の車体をもつ基本番台に対し、ステンレス製である211系列の車体をもつ1500番台。 顔カタチがみごとに違います。こうした例は他にもあります。 今回はこの例としてJR東海のキハ11形300番台をご紹介いたしましょう。 基本番台/100番台とは、見た目が大きく違います。 ![]() さてここで、キハ11形とはどういう車両なのかということについて、まず、触れておく必要があるでしょう。 国鉄末期、日本には民間会社の経営努力だけでは到底成り立たない超閑散路線が数多くありました。 JRはその発足にあたって、いくつかそうした路線を切り離すことができたのですが、 地方交通線と呼ばれる長大な路線を引き継ぐことになります。 ただ国鉄から引き継いだ車両の多くは当該路線の輸送需要には見合わないものが多く、 JR各社は、ローカル線むけに独自の新車を投入することになるのです。 JR西日本のキハ120形200番台やJR北海道のキハ130形などもそうした車両ですが、 これらは前述の超閑散路線を引き継いだ第3セクターの車両と基本的に変わるところはありません。 しかし地方交通線が比較的少なく、経営体力のあるJR東海は、 ひと味違うローカル線むけ車両を独自に開発することになりました。それがキハ11形です。 JR東海のキハ11形は1988年に 暖地用の0番台(1 - 10) と寒地向けの100番台 (101 - 123) が合わせて33両製造されました。(新潟鐵工所製) ひと味違うポイント。それはまず、強力なエンジンです。 C-DMF14HZAは英国カミンズ社製。 パーツの共有化を図ったからですが、キハ85系特急気動車と同じのを1基搭載しています。 一方変速機にはお金をかけず軽快気動車用のC-DW15を使用することから、出力は多少抑えています(350ps→330ps)。 それでも、3セク向け軽快気動車が230〜250psであったことからすれば、大幅なパワーアップとなりました。 もっとも車体の軽量化もあいまって、従来車に比べ走行性能は格段に向上しています。 台車は、C-DT58(動台車)、C-TR242(付随台車)。エアサス台車で乗り心地もUP。 なお動台車は2軸駆動となり加速・粘着性能の向上が図られています。 結果、最高速度こそ95km/hのままですが、20‰の上り勾配で60km/h以上、25‰でも50km/h以上での走行が可能となりました。 ポイントその2は、輸送力の増強です。 3セク向け軽快気動車が15〜16mであるのに対し、18m級にサイズアップ。 大は小を兼ねるという発想で、 1両であっても輸送需要に柔軟に対応できるようにしました。 冷房付きはもちろんのこと、ゆったりとした快適な車内は、乗客をつなぎ止める重要なファクターです。 なおJR各社をはじめ、3セク各社でも、この2つのコンセプトを引き継いでゆくことになります。 ただ、キハ11形にも欠点がありました。トイレがないということです。 JRが発足して数年後のことですが、芸備線でキハ120形に乗車していたときのことです。 酔客が、走行中であるのにもかかわらず 「この電車には、トイレもないのか!」 と運転手さんにからんでいて、不愉快な思いをしました。 ほんの数年ほど前、この運転手さんは運転にだけ集中していればよかったのです。 今は、扉の開け閉め、運賃の収受、案内放送…そして、立小便さえしかねない難儀な乗客の相手まで! ほんとに気の毒な話です。 閑散区間で列車が長距離を走るのなら、トイレの設置は必要不可欠といえましょう。 トイレのために下車したら最後、2時間待ちなんて、笑い話にもなりません。 酔客の肩を持つ気はありませんが、彼にしてもきっと切迫していたに違いありません。 もっともキハ11形がトイレ付きのキハ40系列などとの混結ができれば、この問題は解決するのですが、 ブレーキシステム自体が違うのでこれは無理です。 (注 JR東海の運転手のご指摘によりますと、やってやれないことはないそうですが、保安上問題ありとのことです。) キハ11形が高山本線の長距離列車に使われていないのは、パワーの問題ではなくこういう理由があるからです。 さて、この欠点を克服したのが、キハ11形300番台(301 - 306)です。 1999年、10年ぶりに増備されました。暖地向け改良車という位置づけです。 改良点はもちろんトイレの設置だけではありません。 エンジンはC-DMF14HZB(350ps)にパワーアップ。 台車はボルスタレス式のC-DT64/C-TR252となり走行安定性能もUPしました。 またゆったりとした快適な車内をさらに推し進め、車体の背も高くなりました。 ただ、このままでは、重量がかさむばかりです。 ステンレス車体とすることで、これを解決しました。 ほか、側窓を固定化し、貫通路上部に前照灯を増設するなど 結果スタイルも大きく変化しました。 これらは10年間の経験を反映したものと申せましょう。 全車が伊勢車両区に配置されました。 唯一トイレを持つ利点を生かして長距離列車の多い紀勢本線で主に運用されています。 6両しかないため2両以上で運用される時は0・100番台と組み合わせて使用されます。 キハ40系とも混結できるということにでもなれば、新形式は当然与えられたでしょう。 しかし300番台は、キハ11形の発展完成形というべき存在です。 キープコンセプトという点で「名は体を表す。」と考えたいと思います。 ただ。6両しか仲間がいないのは、いかにも寂しい。 新形式で現れれば、注目も浴び、その存在を示すことができたのに…と思わないではありません。 2010年、JR東海はキハ25系をデビューさせました。 キハ313系とすればよかったのに、と思えるほど、313系電車とコンセプトもスタイルもよく似た気動車です。 別に皮肉で言っているわけではありません。キハ25系はよくできた気動車です。 武豊線に配備されましたが、電化されるまでの一時的措置のようです。 その後は高山本線に配備され、40系気動車の後継となるのでしょう。 でも、その実態からして、キハ11形300番台の寒冷地バージョンがあれば、 その方が高山本線に似つかわしいような気がするのですが、いかがでしょう。 両開きの3ドア車は飛騨路の山里には似合わない気がするのですが…。 参考文献 鉄道ファン 特集JR新世代気動車 の各記事。No419 1996.3 鉄道ピクトリアル 新車年鑑1990年版 No534 1990.10 鉄道ピクトリアル 新車年鑑1999年版 No676 1999.10 JR車両ハンドブック 2009年版
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