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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>JR東海 キヤ97系R101編成 ロングレール運搬用気動車
ー 「異形のマスク−−そのわけは−」 JR東海 キヤ97系R101編成キヤ97系は在来線用のレール運搬車両として2007年に製作されました。国内初の気動車によるレール運搬車両で、 定尺レール(25m)運搬用となるR1〜4編成と、ロングレール(200m)運搬用のR101編成があります。 かつては機関車がレール運搬用貨車を牽引する形でレール輸送を行っていましたが、 JR東海ではこれを気動車でやることにしたのです。 なぜ気動車なのか? ということについてはすでに珍車ギャラリー「キヤ97系0番台」でご紹介しているのでこちらをご覧いただくことにして 珍車ギャラリー:キヤ97系 レール運搬車 今回は、ロングレール運搬車として特化したR101編成について、つっこんだお話をしたいと思います。 そのまえに「レール」について、お話しさせていただきます。 レールとは車両の車輪を支え、列車を一定方向に円滑に走らせるために作られた細長い鋼材 と言うことになりましょうか。 でもそんな単純なものではありません。 1本のレールの長さは、25 mに造られるのが標準です。これを「定尺」(ていしゃく)と呼びます。 またこれを200m以上に溶接したものをロングレールといいます。、 (なお25mより短いものは短尺(たんしゃく)といいます。 30kgレールはおおむね20m=短尺、また25m超え200mに達しないものは長尺と呼ばれます。) ロングレールは継ぎ目が少ないので、それだけ振動や騒音が減り、乗り心地もよくなるほか、保線作業が軽減されるメリットがあります。 そこで、定尺レールを現地で溶接するのですが、より効率よく作業を進めるために工場(レールセンター)で200mのロングレールにし、 それを現地で溶接、一般的には1〜2キロの長さにするというやり方で、ロングレール化は着々と進められています。 (世界最長ともなると東北新幹線の沼宮内−八戸間の60.4キロのロングレールというのもあります。) ですが、長くするには場所的・技術的制約があります。 まず、駅構内のポイント付近や急カーブの箇所などには導入が難しくなります。 ですから曲線半径600m以上という条件がつきます。 またレールは鉄です。暑いときには伸び、寒いときには縮みます。 ちなみにレールの温度が10度のとき、25mだったものは40度になると9mm近く伸びるそうです。 60キロだったら…、24mちかく???。新幹線車両1両分でこりゃあ大変だ! とはいえ、レールは枕木に固定されているので、実際はその計算値よりずっと少ない数字になります。 まあ、そのためには、レールには40Nレール以上を利用使用しなければなりませんし、 強固な道床が必須です。 スラブ軌道ならともかく、バラスト軌道の場合は 「砕石バラスト使用し道床の肩幅400mm以上、PCまくらぎを38本/25m以上、…(線路等級により差があります)」 などと取り決められています。 加えてレールは電気回路ということをこの際知っていただきたいと思います。 実はレールにも電気が流れています。 電車は架線から電気を取り込んで、モーターを回したりしますが、 その後は車輪を伝わってレールに流れ、変電所に戻る。これで電気回路は完成するのです。 それなら、うっかりレールに触ったりしたら感電するのでは?。などと思われるかもしれません。 もっとも、その心配はご無用です。 たとえば電線に鳥が停まっても感電しませんね。 それは、電極の片側だけ触ったとしても体に電流は流れないからです。 ただし人間の場合、プラスである架線のほうは危険です。 人が架線の他に体を接触させてしまうとそこがアースになって電流が伝わってしまうからです。 ただしレールはマイナス側だし電圧も低いから大丈夫です。 それと、レールと人間を比べると電気の通しやすさが違います。 確かに人間の体の一部がレールに触れると、地面などに触れている別の部分がアースとなってしまい電流が流れることになります。 しかし電流は電気を通しやすい方に流れていく性質があります。 レールは鉄でできています。電流は人間より流れやすいレールの方へ流れてゆくのです。 というと、レールはどうだっていいように思われそうですが、回路というものはきっちり接続されていないと働きません。 電気鉄道のレールにはそのつなぎ目に短い電線が接続しているのですが断線していたら終わりです。 加えて高周波になると思わぬものにも電気は流れてしまい その誘導電流が思わぬいたずらを起こしてしまうことがあるのです。 もし、それが信号回路であればただ事ではありません。 電車、電気機関車の場合は電気回路の一部となり 非電化区間においても、信号システムの一翼を担うレールの最大の弱点。それはつなぎ目です。 ロングレールを採用すれば、当然つなぎ目は減ります。メリットは乗り心地だけではないのです。 短い定尺レールでも現地で溶接すればロングレールになってゆきます。 しかし、レールの溶接は簡単なモノではありません。ロングレール化のための溶接には、高度な施工技量が必要です。 いい加減な溶接をすれば、そこから破断してしまうのです。 鉄道の安全は、まさに匠の仕事といってもいいものから成り立っていると申せましょう。 ですから近い将来、優秀な熟練レール溶接施工者が不足することが懸念される今でさえ ロングレールの状態で運搬できればそれにこしたことはないのです。 R101編成は、キヤ97形200番代(Mc)を先頭車に、 中間車としてキヤ96形0番代(M)を6両、キサヤ96形0番代(T)5両を連結し、計13両編成で組成されます。 このスケールでR101編成は長さ200mの60sレールを最大16本を積載できます。 先頭車となるキヤ97-200番台はレールの取り卸しをする車両となっています。 画像をご覧ください。 0番台も個性的な車両ですが、200番台のとりわけそのマスクのユニークさは他の追従を許さないほどです。 定尺レールの積込み、取り降ろしをクレーンで行う0番台とは違って 200番台では積載されたロングレールをレール方向に降ろすことになりました。 すなわち200mのロングレールをワイヤーで地上に固定、 車両を前進させて後部の運転台下部から引き出す方法をとります。 ですから運転台の床下にロングレールが通ることになります。 これが彼のマスクに隠された秘密です。 よって運転台部分は車両限界いっぱいまで高さを確保した高床構造となりました。 また、旧型の電気機関車のように妻部に扉があるのは、ここから乗務員が出入りするためです。 彼の個性的なマスクは奇をてらったわけではありません。 レールというのは結構曲がるようになっています。だからこそR101編成はカーブを曲がって走行することができます。 またカーブしているところに敷設するときはまっすぐのレールを曲げながら設置しています。 こう言うと結構融通が利くように思われますが、そうではありません。 実際、ロングレールを敷設する時期は、夏や冬など温度が高い時や低いときは避けるようにしています。 その理由は今更述べるまでもないですね。 R101編成は仕事にあぶれて昼寝を決め込んでいるように見えますが、それは違います。 ただただ、良い仕事をするために、じっと出番を待っているのです。 奈良県の葛城山の麓に一言主神社というのがあります。 地元では「いちごんさん」と親しまれている神様ですが、こんな伝説があります。 なんでもえらい修行僧である役行者(えんのぎょうじゃ)に橋を架けるように言われたのですが、 その際、異形の姿を恥じた一言主の神は夜だけ働くことにしたのだそうです。 実はこの伝説を耳にしたときに、私はどういうわけかキヤ97形200番台を思い起こしてしまいました。 もっともキヤ97系R101編成は昼間も働きます。 ユーチューブにも多くの動画が寄せられていてマニアにとって注目の車両であると言うことがわかります。 でも、彼がそのマスクからレールをはき出して作業する場面は夜間の画像だけでした。 昼間に移動し、夜間に作業をするのが彼のスタイルであるようです。 ところで、一言主の名前の由来をごぞんじでしょうか? 願い事は一つに限り聴いてもらえるということだからだそうです。 JR東海の一言主には「安全」の一言をひとえにお願い申し上げます。 参考文献:鉄道ピクトリアル 「鉄道車両年鑑 2008年版」 2008年.10月 No810 の記事 参照HP:鉄道用語辞典 | 日本民営鉄道協会/レール溶接研究室 | 研究開発 | 公益財団法人 鉄道総合技術研究所 |
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