鉄道写真管理局 珍車ギャラリー
  近鉄 20100系 あおぞら号  2008.9.27UP
  2008.10.2更新
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近畿日本鉄道 モ20102 あおぞら号 モ20100 (あおぞら号) 1962年 近畿車輌 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
20.700 2.800 4.065 38.5
駆動方式 制御器(電圧) モーター(kw) ギア比
WNカルダン サ20200に MB-3020-D
125×4
15:82
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
HSC-D 148 なし KD-43
(近車)
1963年 ブルーリボン賞(鉄道友の会)受賞
1993年 廃車
鉄道車両諸元表:鉄道ピクトリアル「特集 近畿日本鉄道」No398 1981.12
モ20102      上本町駅 1979

1車両あたり148席。座席数日本一の電車 近畿日本鉄道 モ20100形

2008年現在、日本一の座席数をもつ車両はといえば、言うまでもなくJR東日本の新幹線MAXです。
中でもE1系MAXのE158形100番台は135席という座席数です。
ところが、この数をしのぐ148席もの座席を擁した車両が、新幹線ではなく、近鉄に存在したのです。
オール2階建てのビスターカー20100系です。
オール2階建てといえば、これまたJR東日本に215系がいます。これもまた120席と20100系には及びません。
ついでに言っておきますと、MAXのE158形100番台もモハ214も中間車です。
しかしモ20100形は、先頭車です。運転台のスペースもあるのです。
いったいどうやって148席もの座席を詰め込んだのでしょう。

20100系には、6人掛けのボックスシートと4人掛けのボックスシートが並んでいます。
加えてシートピッチも狭く、一人分に割り当てられた空間は極めてコンパクトなのです。
近鉄は記録でも狙っていたのでしょうか。

それは違います。
実は、20100系は、修学旅行専用車として作られたのです。

私が小学生の時の修学旅行は、伊勢志摩方面への旅でした。
当時の大阪市内の小学生は、近鉄で伊勢志摩というのが定番だったように思います。
もっとも、小学生以外の団体を乗せなかったわけではありませんが、
20100系は、子供たちを主たる乗客として想定した車両だったのです。
座席数を増やせたのはそういうわけだったのです。
20100系以降、修学旅行専用電車は新造されていません、
この記録を塗り替える車両は、まず日本には現れないでしょう。

私は、大阪の小学生でしたから、当然のごとく、この20100系”あおぞら号”に乗車しました。
あこがれの2階建てビスターカーでありながら、特別塗装で”あおぞら号”という名を持つ修学旅行専用の特別車両に…。

私の場合、中学時代は富士伊豆箱根で往復は東海道新幹線でした。
小学校時代に、叔父たちから、国鉄の修学旅行専用列車「きぼう号」で東京へ行った話を聞かされていた私はうらやましくてならなかったものですから、中学では新幹線に変わったと聞いてがっかりしたのを覚えています。

でも私は”あおぞら号”に乗れました。
どれほど、あこがれ、楽しみにしていたか。どれほどわくわくして乗り込んだか。今も目に浮かぶようです。

しかし、時代は変わりました。国鉄はさておき、JRでは修学旅行専用車両は存在しません。
近鉄においても、20100系の後継車両が、新造されることはありませんでした。

修学旅行というもの自体も変わってきています。

家族で海外旅行することも特別なことではなくなってきている現状からすれば、
修学旅行で遠出することの意味はもう失われているような気がします。
そんな昨今ですから、子供たちにとって修学旅行は、もはや「あこがれ」とは言えないかもしれません。
でも、小、中、高と学校時代で一番の楽しみでもあり、思い出に残るイベントであることには違いありません。

遠出することばかりが、自慢のタネとなり肥大化する一方の修学旅行でしたが、
物見遊山ではなく、体験学習形と称される、中身の濃い修学旅行に変貌しつつあることも事実です。
移動手段である交通機関も中身のある”思い出作り”に一役買って欲しいと思います。
もっとも、旅先で見る子供たちの多くは、耳にウォークマン、その手にはゲーム機と日常のアミューズメントを持ち込むばかり、
そんな彼らから、これらのものを手放させることは容易ではないでしょう。

でも、元来、旅は、非日常的なものであり、だからこそ新しい出会いに心躍らせるものなのです。
子供の時しか利用できない非日常的な車両として、最右翼に位置するのが、修学旅行専用列車です。
修学旅行の感想文に、「あおぞら」号と往路に乗った2200系電車のことばかり書いて
先生に怪訝な顔をされた私のような人間はまあ別としても
子供たちには、鉄道の旅の楽しさ、魅力をもっともっと知って欲しいと思います。

20100系あおぞら号は、1993年にその役目を終えました。
後継車両としては、団体専用列車として、18200系「あおぞらU」、そして20000系「楽」が近鉄に登場します。
修学旅行専用列車としては、18200系「あおぞらU」が、専らその任を引き継ぎました。
その後、1997年には、18400系が加わり、2005年には、12200系を改造した15200系が新「あおぞらU」として代替車両として登場しています。
でも、彼らは特別仕様車であるとは言いながら、18200系あおぞらUと同様、在来型特急車両の改造車であり、
2階建てのビスタカーでもなく、20000系「楽」ほどのインパクトはありません。
もっとも、15200系「新あおぞらU」が修学旅行専用車として登場したことを私はとてもうれしく思っています。
ただ15200系も、種車である12200系は1970年代に登場した車両です。
近鉄では、もはや古参の車両といえるもので、リニューアルされてはいるものの、
今後、どれだけ活躍できるか気がかりなのです。

うちの娘(6年生)が広島へ修学旅行に行きました。一泊二日です。
行きは山陽新幹線。帰りは観光バスで、宿泊地の良寛荘を経由し、翌日チボリ公園で遊んで帰るというコースです。
中学生(公立)の長男は、来年、沖縄へ行くそうです。もちろん飛行機でですが、贅沢になったものです。
近鉄に乗って伊勢志摩へ行く修学旅行も、その数はずいぶんと減っているのではないでしょうか。
いまや少子化も進んでいます。
修学旅行というビジネスにかつてのようなうま味はありません。
加えて、前述したように今時の子供たちは、ビデオモニターや、カラオケ、スピードメーター程度では、満足してはくれません。
ハードのみならず、ソフトの面でも、どんどんアイデアをだしてゆかなければならないでしょう。

でもその先には、新しい鉄道の旅の魅力が生み出されているに違いありません。
今こそ、次世代の修学旅行専用列車を創り出して欲しいというのが私の願いです。

もはや近鉄という鉄道会社の枠を越えて、
地元の観光業者に、コーディネート役の旅行会社、そして先生方…
そうだ子供たちにもアイデアを出してもらって、
魅力あふれる修学旅行専用列車「あおぞらV」を新車で(できたらやっぱりビスタカーで…)デビューさせて欲しいのです。


近鉄 20100系あおぞら号 サ20202 サ20200 (あおぞら号) 1962年 近畿車輌 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
20.700 2.800 4.150 43.1
駆動方式 制御器(電圧) モーター(kw) ギア比
ABFM
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
HSC 102 なし KD-43A
(近車)
サ20202   高安検車区 MG、およびCP×2を1階部分に装備 WCを2カ所設置
鉄道車両諸元表:鉄道ピクトリアル「特集 近畿日本鉄道」No398 1981.12


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参考文献;鉄道ピクトリアル 「特集 近畿日本鉄道」No398 1981.12 No727 2003.1
                  「近畿日本鉄道と修学旅行」 寺本光照氏 No727 2003.1

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