2007.2.25UP 2012.11.16 更新 |
|||||||||||
のHP TOPへ | |||||||||||
J鉄局TOP>珍車ギャラリー>近鉄 3000系 ステンレスカー
近鉄唯一のステンレスカーであり、電機子チョッパ制御車。 3000系阪急の2200系や南海の8000系と同じく、近鉄にも電機子チョッパ制御の試作車(実用試験車というべきか…)が、これまた一編成だけ存在していました。3000系です。 阪急2200系及び南海8000系については既述しました。 現在それぞれ、他系列の一員として存在してはいますが、自慢の制御装置は外され、形式消滅してしまいました。 しかし近鉄3000系は、2012年まで3000系として現役で活躍していたのです。 ここで、もう一度、彼らのことを振り返ってみたいと思います。 2012/11/16 まず、なぜ、この3000系に電機子チョッパが採用されたのでしょうか。それは、京都市営地下鉄烏丸線に乗り入れることを想定していたからです。電機子チョッパ制御の魅力に、「抵抗器による発熱がない」ということが挙げられます。 トンネル内の温度上昇を抑えるということですが、 かつて大阪市営地下鉄御堂筋線梅田駅は、地下駅であるのにもかかわらず暑苦しく、 進入する電車(抵抗制御車;30系など)が、到着する度に、 むあーっと床下から熱を吹き上げているのに閉口したのを覚えています。 また電機子チョッパ制御は、ブレーキ力を再度、電気エネルギーに変換する回生ブレーキの 「回生効率が良い」ということもその魅力に挙げられます。 でもこれは回生した電力を消費してくれる電車が近くにいてくれることが大前提です。 高加減速を繰り返すことに加えて、列車本数が多い地下鉄線は、電機子チョッパ制御にうってつけというわけです。 ですから営団地下鉄が、電機子チョッパ制御車を採用し続けたのは、 別に意地になっているわけではなく、ちゃんと根拠のあることだったのです。 そんなわけで、日比谷線に乗り入れる東武20000系。千代田線に乗り入れるJR(国鉄)203系をはじめ 各都市の地下鉄車両が、電機子チョッパ制御を採用しています。 とはいえ、80年代以降、各社は、高価なデバイスである耐高電圧トランジスターを搭載する 電機子チョッパ制御に見切りをつけ、界磁チョッパ制御や、界磁添加励磁制御を導入するようになります。 過去の方式である抵抗制御の改良型ともいえる方式ですが、より経済性の高いこれらの方式を優先させたわけです。 _それは、近鉄としても同じことなのですが、近鉄は次世代のハイテク制御、つまりインバータ制御の導入に積極的でした。 インバータ制御は、電機子チョッパと同様、高価な耐高電圧トランジスターを採用するものの、 メンテナンスフリーの交流(誘導)モーターが使えるなど、経済性を含めたメリットは多く、 21世紀となった現在、生産されている電車のほとんどがインバータ制御です。 路面電車や第三軌条の地下鉄など、使用電圧の低い車両から導入が始まったインバータ制御でしたが、 1500Vの鉄道線で初めて導入したのは近鉄です。 そんな記念すべき車両である1250系インバータ制御車が登場したのは84年のことでした。 84年といえば、3000系のデビューから5年の歳月が過ぎたことになりますが、 81年5月に北大路−京都間が開通した烏丸線は、近鉄との接続である竹田駅までたどり着けずにいました。 免許の申請時、北山−竹田間は76年3月に同時開業するはずだったのですが、 車両基地の用地買収等に手間取り、工事は遅れに遅れていたのです。 結局、近鉄が烏丸線に乗り入れたのは、1250系のデビューからなお4年後の88年8月となります。 その折には、もはや確立した新型の制御装置をもつインバータ電車3200系が量産され、烏丸線に乗り入れました。 そして残念なことながら3000系にはお声がかからなかったのです。 もし烏丸線への近鉄乗入れが、5年早ければ、電機子チョッパ制御である京都市の1000系(80年製)と同様、 3000系が量産されていたかもしれません。 3000系は、近鉄唯一の電機子チョッパ制御車であるというだけでも十分個性的な珍車なのですが、 近鉄唯一のステンレスカーという点でも異色の珍車です。 でも、なぜ近鉄は、ステンレス車両を登場させなければならなかったのでしょう。近鉄の車両は、現在その全てが、近畿車輛によって生産されていますが、近畿車輛は、東急車輌などど同じく国鉄/JRなど数多くの鉄道会社に車両を納入している大手の車輛メーカーです。 世界に誇る日本の新幹線車両もその一部を近畿車輛が製作しているのを御存知でしょうか。 さて3000系が登場した79年という時代、国鉄は201系、203系という電車を登場させていました。 しかしこれからJRへと移行するこの時点で次期通勤用車輛となる205系はステンレスカーとなることが決まっていました。 近郊形の211系も同様ステンレスカーです。 近畿車輛はかつて、タイ国鉄からセミステンレス製の客車を受注していましたが、 東急車両や川崎重工(帝国車両)ほどの実績やノウハウはありません。 今後オールステンレス製の車両をJR各社から、大量受注するためには自前の技術力を高め、 「近畿車輛もステンレス製の車両を作れるんだ。」ということをアピールする必要があったといえるでしょう。 ちょうどこのタイミングに3000系がダブってくるのです。 近鉄においては3000系以後、ステンレスカーが量産されることはありませんでしたが、 近畿車輛はJR205系1000番台をはじめ多くのステンレスカーをJRより受注します。 『JR編成表07年冬号』によるとJR西日本の新車321系の全てと223系の多くが近車の手になるものです。 ステンレス製の車両を手掛けなかったアルナ工機が、鉄道線車輛の生産から撤退したことと合わせて考えれば、 3000系が近畿車輛においていかに重要なものであったかが見えてくるような気がします。 京都市営地下鉄烏丸線乗り入れに対応すべく、 全電気指令式空気ブレーキ(MBS-2R)を採用、 しかし地下鉄烏丸線乗り入れには、アルミ合金製車体のVVVF制御車3200系を新造して充当することになりました。 結果、量産されることもなく、性能的に孤立した3000系は在来車と互換性がなく、 運用上ネックとなっていたため、 2002年には車体更新も施工されたのですが、2012年その姿を消してしまいました。 参考文献;「最新ハイテク電車のトレンド」鉄道ファン#331 ほか鉄道ファン「アルミステンレスカー特集」#294、#366
|
|||||||||||
|
|||||||||||
のHPです |