鉄道写真管理局 珍車ギャラリー
  近畿日本鉄道 1211F(1200系2410系2430系)  2013/1/16 UP
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近畿日本鉄道 モ1200形 1211  1211F@(1200系2410系2430系) 撮影2005.8 松阪駅
−鉄道車両写真集−
近畿日本鉄道 1200系(1201系) 2410系 2430系
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 近畿日本鉄道 1200系2410系2430系 1211F 4連 名古屋線系 編成表
 ←名古屋C     @→           モ1200;界磁チョッパ制御
 2592-2461-1381-1211 Tc-M-T-Mc   モ2450;抵抗制御
 11F/12Fとも全車、富吉車庫配属     サ1380はトイレ付き
              参考;私鉄車両編成表11年版    
近畿日本鉄道 モ1200形 1211  1211F@(1200系2410系2430系) 撮影2005.8 松阪駅

−極めつけの異種混結編成−−近畿日本鉄道 1211編成 

鉄道車両には、その用途、形状にあわせて一台一台に
「形式」が付与されているのですが、
路面電車はさておき電車の場合、単独では動かないものがほとんどで、
編成を組むことではじめて動かすことができるのが普通です。

近鉄でいえば…、例えば、ク2710形にはモータがありません。
同じ時期に製造された電動車モ2610形などと編成を組むことによってはじめて動かすことができるのです。
なお、このグループには、あとサ2760形とモ2660形があります、
これら4両がセットになって4両編成を構成するわけですが、近鉄ではこの4形式をひっくるめて2610系とよびます。
つまり、Mc車を基準とした命名です。(Mcが存在しない場合はM)

さて今回ご紹介する1211Fは1200系に分類されるといいたいところなのですが、
編成表をみてみると…
←名古屋C     @→    
   2592-2461-1381-1211
     Tc-M-T-Mc  
このように2000番台の車両が混じっているではありませんか。
ちなみにC号車は、ク2590形で2410系。
B号車は、モ2450形で2430系に分類されます。
つまり、1211Fは1200系、2410系、2430系という
3つの系列に属する車両から構成されているのです。
実際、別系列の編成を組み合わせて運転するということは、特に珍しいことではありません。
こと近鉄では日常茶飯事です。
しかし固定編成として組み込まれた車両の系列が多岐にわたるというのは、あまり例がありません。

なぜこのような編成ができあがったのかということをお話しする前に、
この1211Fを構成する3系列(1200系、2410系、2430系)についておさらいしておきましょう。

まず1200系です。1200系は1982年に登場しました。
1400系(4連)の2連バージョンという位置付けになります。(2連×10=20両)
おもに名古屋線で用いられ2000年から03年にかけて車両更新がおこなわれました。
ワンマン化改造もなされ、これらについては1201系と系列名が変更されています。
1211Fはワンマン改造はされていませんから
1200系として生き残っているグループとなります。
さて、ポイントはと申しますと、それは車体です。角形です。
この形態はいうとVVVFインバータ制御の車両が多いものですから、
そう思い込んでいる方も多いのではないかと思われますが、
1200系は角形でも初期形に属し、界磁チョッパ制御車となります。

次に2410系です。1968年、大阪線用に登場しました。
抵抗制御車である2400系の改良型で、
換気装置をファンデリアをラインデリアに変更したのが特徴です。
このことで天井、屋根がずいぶんすっきりしました。
1969年には、平坦区間増結用のTc(制御車)であるク2590形(2591 - 2593)が製造されました。
1211Fに組み込まれているのは、このク2590形です。

最後に2430系です。2410系の3連バージョンという位置付けです。
ですから、2410系同様ラインデリアを装備し、足回りも同じです。
1971年に河内国分駅以東まで運行される準急に使用するため、中間電動車となるモ2450形を追加しました。
Mc+M+Tcの構成となりM車の比重が高めパワーアップを図っています
1211Fに組み込まれているのは、この中間電動車となるモ2450形です。

ということでポイントは、ここでも車体です。丸形です。
2410系と2430系は、使用される用途が違うために別系列で登場していますが、同じ車体で同世代の車両です。
ついでに言うと2連バージョンである2410系は、1971年までに
2両編成18本(2411F - 2428F)と増結用Tc車3本(ク2591 - ク2593)の計39両が在籍していました。
しかし1973年には、なお2連を3編成増備することになったので、
2429F・2430F、そしてその次は2410Fと番号がさかのぼって付けられました。
2430系は2431F〜だったので、空いていた2430を2410系に割り当てたというわけです。
それにしても2430F は2430系ではなく2410系というのも無茶な話です。
その後2429Fと2430Fは中間電動車(モ2450形)に中間付随車(サ2550形)を加え、4連化されます。
2430系もまた中間付随車(サ2550形、サ1960形、サ1970形)を加え4連化したグループもできましたので、
もはや系列で編成両数を区別することはできなくなってしまいました。
かくなる上は、もう全部ひっくるめて2410系で良いじゃないの!といって差し支えないでしょう。

しかし、2410系と1200系と一緒にはできません。
まず、車体が1200系とは大きく違います。
角形の1200系に対し、2410系.2430系は1世代前の丸形です。
車体形状だけではありません。制御方式も違います。
1200系が界磁チョッパ制御であるのに対して、2410系.2430系は抵抗制御です。

近鉄には1211F以外にも異系列混結固定編成が存在しました。
名古屋線用の1000系と2430系です。
うち1001Fは3両編成。私鉄車両編成表00年版には、
←名古屋B  中川@→
ク2546-モ1051-モ1001   Tc-M-Mc
とあって、1000系にク2530形(2430系のTc)が混結されています。
一方、同じく私鉄車両編成表00年版には、
←名古屋C  中川@→
ク1101-サ1151-モ2466-モ2446   Tc-T-M-Mc
というのもあって、よくよくその番号を見ると、
ク2546とク1101-サ1151を交換したのだということがわかります。
ぱっと見には、なぜこんなことをするのかと首をかしげたくなります。
実は主電動機の出力が違うのです。
1000系が132kwであるのに対して、2430系は155kw。
T車を2両従えるには、より高出力な2430系を組み合わせるのが道理というものです。
近鉄では、このような工夫をして編成の足並みを揃えていたのです。
とはいえ、車体はというと同じ「丸形」。
加えて、主従関係がはっきりしています。
ク2546は1000系に引っ張っられてゆくだけの車両です。
つまり1001Fについては2430系側は電動車ではないので、1000系編成と分類すべきです。
そして逆の組み合わせである2446Fは2430系と考えるべきでしょう。

ところで1211Fの場合は、どちらが主とするべきなのでしょうか?。
どちらが主であるとは、言い切れないですね。
このようなことを悩まなくてはならない1211Fは、近鉄の中でも屈指の珍編成なのです。

さてここで、近鉄における系列の概念が、他の私鉄各社と大きく違うということを押さえておきたいと思います。
京成電鉄では、
*駆動方式がTDカルダンであろうがWN駆動であろうが、3000形。
*モーターの製造メーカーが違っていようが、3000形。
*Mc車であろうがT車であろうが、全部3000形。
というぐあいで、系列という概念さえありません。
一方、近鉄の場合は、
*8810系(4連)の2連バージョンは9000系。
*VVVFインバータ制御車について、三菱製なら1422系、日立製なら1230系。
*台車がボルスタレスタイプに変更されたので1259系…。
という具合に頻繁に系列を変更してしまいます。

そんなわけで、2011年現在、2013両を保有する近鉄には80あまりの系列が存在します。
対して、日本で総車両数が最も多い私鉄(JRを除く)である東京メトロ(2707両)には15系列しか存在しません。
ここからも近鉄が、いかに多くの系列に電車を細分化して管理しているかがわかります。
メトロだってきちんと車両を管理している。近鉄とは「考え方の違い」があるだけだ。
といってしまえばそれまでですが、こうなるのは、近鉄の切実な実情がその背景にあるのです。

東京メトロでは、その使用される路線によって、編成両数が揃えられています。
銀座線は5連、半蔵門線は10連といった具合です。
しかし、近鉄では、最小単位である2連が、やたら多いのです。
これは近鉄が2両で十分というローカル線を多く抱えている一方で、
都市部のとりわけ朝のラッシュ時には最大10連でその需要を捌かなければならない事情があるからです。

10連が必要といって10連固定編成を作ってしまえば、昼寝をするばかりです。
あるときには2連で、またあるときは4連でという具合に
TPOにあわせて増解結することで、車両を有効利用できるようにしなければならないのです。
編成両数が様々であれば、当然、車両、個々に要求される仕様も様々なものになります。
形式が増えてゆくのも道理で、それらを束ねる系列が増えてゆくのも自然なことなのです。
(ちょっと、近鉄は増やしすぎのような気はしますが…。)
それならば、いっそのこと全部2連にしてしまえば、やたら形式を増やさずにすみますし、編成を構成する自由度はUPします。
しかし、運転台付きの先頭車は、当然コストが高くつきます。また運転台がある分、定員減ともなります。
そこで、近鉄では、その折々の需要にあわせて、2連から6連まで様々な編成を用意し
車両を上手に組み合わせることで、やりくりすることにしたのです。

さて、2410系には、平坦区間増結用のク2590形が存在するということを前述しました。
しかし70年代後半、通勤圏は拡大し国分以東にも乗り入れできる編成が望ましいということになってきました。
また1982年には高安にあった工場を五位堂に移転する計画も着々と進行しています。
ク2590形はその存在価値を失ってしまったのです。
ではこれを有効利用するにはどうすればよいか?
そこで近鉄では2430系から中間電動車であるモ2450形を捻出、ク2590形に併結することで
他の2410系と同じ、1M1Tのユニットにすることにしたのです。
しかし、モ2450形には運転台がありません。
運転台を取り付け2連で使用するということもありですが、これはこれで結構手間です。
また2両編成ばかりが増えるのも考えものです。
そこで近鉄は、新車をあてがい4連で使うことを考えました。
つまり、1200系のうち、1984年に製造された1211F(1212F)は、当初から
在来の旧型車であるク2592とモ2461(ク2593とモ2462)と組成することを意図して作られた珍車なのです。
そのため、はじめから先頭車と中間車(Mc-T)という変則的なユニット(モ1200形-サ1380形)で登場したというわけです。

相方となるユニット(モ2450形-ク2590形)は、旧タイプの丸形ボディですから
編成中で車体断面および正面形状が異なる編成ができあがりました。
このような編成が登場した背景には、ちょうどク2592とモ2461を冷房化するタイミングだったということも影響しているのでしょう。
ともに1M編成で1C4M、モータの出力も同じなので、相方であるモ2460形と性能面での不均衡はありません。
しかし界磁チョッパ制御と抵抗制御の常時組み合わせとなります。
こんな固定編成が存在するというというのも他では例がありません。

でも近鉄では常日頃から、異種混結はあたりまえですから、
このような珍車も目立たないのですね…。


参考文献 鉄道ピクトリアル 特集「近畿日本鉄道」 2003年1月 No727

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撮影2005.8 松阪駅


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