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  近鉄 1420系 インバータ制御試作車  2008.1.5UP
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近畿日本鉄道 1420系 インバータ制御試作車(元1251系) モ1421 (旧モ1251) 1984年9月
(1987改番)
近畿車輌 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
20.720 2.740 4.150 39.0
駆動方式 制御器(電圧) モーター(kw) ギア比
WNカルダン HT−20A(三菱)
1500V/DC
MB-5014A
160×4
86:15
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
HSC-R 170(58) CU-19
10500kcal/h×4
KD-88B
(近車)
1420系 モ1421 撮影 鶴橋駅
鉄道車両諸元表(電車):出典は鉄道ピクトリアル 「特集近畿日本鉄道」No727

私鉄の車両13 「近畿日本鉄道U」によると1251の制御器は「SIV-G135」

周波数を変化させるということ −インバータ制御−

アマチュア無線では、AMラジオに近い中波と呼ばれる周波数から 電子レンジにも用いられる極超短波まで、様々な周波数で電波を出すことが認められています。
私は、現在訳あってアマチュア無線から遠ざかっていますが、かつては、この中でも、50Mz帯の周波数がお気に入りでした。
普段は高性能のアンテナを使っても、100キロから200キロ程度しか交信できないのですが、夏場など地球を取り巻く電離層にスポラディックE層というものが発生すると、ちゃちなアンテナでも、沖縄、北海道といった1000キロを超える範囲でも強力に電波が届いてくるのです。
ただ、50Mz帯の周波数の倍数に当たる100Mz帯は、ちょうどNHKテレビの2チャンネルにあてがわれていて、うまく調整しないとテレビ画面にノイズが出るなど障害が発生します。
アンテナのアースをしっかりとって、また余分な電波はフィルターを通すことで、私はこの問題をクリアしました。

そういえば携帯電話も、立派な無線機です。使っている周波数は、電子レンジにも用いられる極超短波です。
総務省は、その使用電力が微弱であることから人体に影響はないとしていますが、ある大学の先生の講演を聴いたとき、脳内温度のサーモグラフィーを見せられ、愕然としました。
まだ水分が多くやわらかな頭蓋骨の子供ほど携帯電話のアンテナを中心に赤く色づいているのです。
私は、とてもじゃないが子供たちに携帯電話を与える気にはなれません。
電磁波はエネルギー波です。目に見えないものですが、何をやらかすかまだわからないことも多々あるのです。

インバータ電車というのは、制御器で電圧と周波数を変化させ、3相交流誘導電動機の速度制御をおこなうというものです。
もっともその周波数は0Hzから300Hz程度と、前述した電磁波とは、かけ離れています。
また有線でもって流れてゆくものであって、無線機のように空中に発砲されるものではありません。
しかし電車を動かす電力はハンパではなく、誘導障害を起こす可能性は十分にあるのです。
鉄道の信号システムは、車両の位置情報をレールから得ます。そしてまたこのレールは、アースでもあるのです。
信号が誤動作でも起こそうものなら、とんでもないことになります。絶対的な信頼性を確保する必要があります。

インバータ電車開発の歴史

我が国におけるインバータ電車の先駆けは、熊本市電の8200形です。(1982年)
使用電圧が低いことから高耐圧デバイスの開発が比較的容易だったこともあげられますが、
路面電車にはもともと信号システムが存在しないことも、インバータ電車を導入できた大きな理由でした。

鉄道会社も、手をこまねいていたわけではありません。
ブラシレスでメンテナンスフリーの交流モーターを使用できるだけでなく、回生ブレーキの効率も高く、ソフトの設定により様々な線区、運用に対応でき、また様々な電機部品の統一仕様も可能となるインバータ方式のメリットは捨てがたいものがあります。
日立製作所は、営団6000形試作車を用いて、東洋電機も相模鉄道6000形をもちいて実車テストを行っています。
そうした実績をふまえて鉄道線の営業用インバータ電車が登場するのは1984年7月です。
東急が6000形電車に日立製のインバータ装置を搭載し、抵抗制御車と併結して、大井町線で運用を開始しました。
また同年、大阪市営地下鉄も、20系電車を新製、三菱、日立、東芝と三通りのインバータ装置を搭載し中央線で営業を始めました。
そして、この年の10月に三菱製のインバータ装置を搭載して登場したのが、近鉄の1250系です。
こういってはなんですが、大井町線や大阪地下鉄中央線は、ともに優等列車はなく、シンプルな運用です。最高速度も低く設定されています。
しかし、近鉄には、近鉄特急を始め、一般車においても優等列車がガンガン走っています。
また、近鉄の路線には急勾配の山越え路線も多く、そのような路線を避けて通るような新車は作れません。
現在のように、ありとあらゆる場所でインバータ電車見かけるようになったその先駆けとなるのは、やはり1250系ではないでしょうか。
当然ですが、1250系の導入に当たっては、様々な試みが見られます。
上り勾配の起動時には、周波数は変化させず、電圧のみを上げてゆく方式を採っているのも、また下り勾配で回生ブレーキが失効したときに、直ちに電気ブレーキを有効にするため、抵抗器をぶら下げているのも、以後のインバータ電車には見られないユニークなものです。
まあ普通、インバータ電車には、抵抗器なんてものは、いらないんですが、余分な電気は熱にして消費してしまうのが安全確実な方法です。
おかげで床下機器が多くなったため、クハである1350形にも多くの機器が搭載されています。
そんなわけで、編成あたりの重量は結構重くなってしまいました。
導入に当たっても、先に関係メーカーに車体ごと持ち込み完成車両として試験台上で入念なテストを繰り返し、必要な処置を施したうえで、本線での試運転を行いました。 これもまた無駄なようにも思えますが、安全性を最優先にした結果ではないでしょうか。
一方、ブレーキは在来車と混結するため、在来型のHSC-Rを採用しています。
こうしたことは近鉄ならではの事情だったともいえるわけですが、こうした共通運用を可能にする様々なノウハウが、以後インバータ電車が電鉄各社において爆発的に採用される契機となったものと思われます。近畿日本鉄道 1420系 インバータ制御試作車(エンブレム)

1250系は今後の鉄道車両の進むべき道を示した。

近鉄では、シリーズ21が登場する以前のインバータ電車には、インバータ装置を搭載していることを示すシンボルマークが戸袋のところに取り付けられています。
1250系にもこれが見られるわけですが、よーくごらんになってください。
1250系においては、レリーフとなるプレートが取り付けられています。
「我こそは、今後の鉄道車両の進むべき道を示したのだ。」
と語りかけているかのように私には見えるのです。





参考文献;鉄道ピクトリアル 「特集 近畿日本鉄道」2003.1 No727の各記事
   鉄道ファン「特集 VVVFインバータ車両」1991.5 No361の各記事
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