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  名古屋鉄道 6000系 9.10次形  2013/2/26 UP
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−鉄道車両写真集−
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名古屋鉄道 6000系 SR車 2両編成 編成表
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ク6000-モ6200  Tc -Mc  
6050F: 6050--6250 非貫通2連は45-52F。 
参考:私鉄車両編成表07年版 撮影 新安城 2008.12  
 6000系 6050F: モ6200形  6250  撮影 犬山 2012.8
 6500系 6501F: ク6400形 6401  撮影 東枇杷島 2008.4

 6800系 6802F:モ6200形 6903  撮影 東枇杷島 2005.3

−「鉄仮面」の正体は?−− 名古屋鉄道 6000系 9,10次形 

上の3枚の写真は、いずれも非貫通型で、鉄チャンが言うところの「鉄仮面」と呼ばれるデザインの名鉄電車です。
左上のは6000系、左下は6500系、右下は6800系です。
皆さんは、区別がつきますか?
私だって、番号がなけりゃあわかりません。
さて、この3枚の「鉄仮面」。なにがどう違うというのでしょうか?

まず、6000系からお話をはじめましょう。
6000系は、1976年にデビューしました。
名鉄の通勤形を代表する車両と言っていいでしょう。
通勤型車両としては異例のブルーリボン賞を受賞しました。
ことに気をよくしてか、名鉄では6000系を85年までの長期にわたって増備し、
多くのバージョンが存在することになります。
1〜4次車(76〜79年)は側窓が7000系パノラマカーのような連続窓でした。
5〜8次車(80〜83年)は側窓がドア間3つの独立窓に変更されました。
でも、いずれも貫通路付きの、いわばありふれたマスクです。
そして今回、タイトルで取り上げるところの、9,10次車(84,85年)になって、はじめて「鉄仮面」がつけられることになったのです。
6000系は総勢262両、うち「鉄仮面」は16両ですから、全体の一割にも満たない少数派です。

次に6500系です。
6500系は84年に6000系の発展型としてデビューしました。
6500系は最初から、非貫通型の「鉄仮面」でデビューしているので、
「6500系=鉄仮面」と思い込んでおられる方も多いのではないでしょうか?
もちろん「鉄仮面」だけではありません。
制御器を抵抗制御から界磁チョッパ制御に変更し、回生ブレーキも採用しました。
車体に目を向けてみます。「鉄仮面」は非貫通形です。
私は、当初、「6000系4連は、非貫通形の6500系に変わったのだな。」と思いました。
貫通型か非貫通形かは、運行上区別すべき大きな違いと思ったからでもあります。
「さすれば、6000系は貫通形として6500系の登場以後も製造が継続されたのだ。」
といいたいところです。
しかし前述したように6000系9,10次車も6500系同様、いわゆる「鉄仮面」のスタイルに変更しているのです。

結果、抵抗制御の「鉄仮面」と界磁チョッパの「鉄仮面」が存在することになりました。
つまり、6000系と6500系の違いは制御器の違いです。
でも、ここで注目していただきたいのは、6000系(9,10次車)の製造年次です。
84〜85年です。
つまり新型である6500系がデビューしたあとにも、
旧タイプの抵抗制御車である6000系が継続して作り続けられたということになります。
6000系、9,10次車を珍車として採り上げたのはこういうわけです。
それにしても、どうしてこのようなことになったのでしょう?

その答えは編成両数にあります。
6000系は、4連用と2連用が製造されたのですが、
6000系の発展型である6500系には4連しかありません。
それというのも6500形がMMユニットを採用したためです。
6000系は1M方式でしたので、Tc-Mcの2連が可能でしたが、
6500系のMM方式だと2連は、Mc-Mcとなり、
高価な電動車が増えることになってしまいます。
また6500系では制御器が抵抗制御から界磁チョッパ制御に変更されました。
界磁チョッパ方式は、電機子チョッパ方式ほどではないものの
やはり高価なデバイスを用いるのです。
6000系4連には2台の制御器が用いられましたが、
6500系ではこれを1台にしてコストを抑えるという手に出ました。
加えて2連は、増結用に用いられる一方で、ローカル線で用いられることが大前提です。
せっかく新システムが回生ブレーキで電気を発生しても、
電気を使う電車が近くにいなければブレーキ自体が効きません。
世の中の省エネ志向に乗っかって界磁チョッパ車を導入しても
これでは宝の持ち腐れということになります。

最後に6800系です。
6000系4連の増備はMMユニットの6500系に変更されましたが、
2連は6000系の1M方式を継承し、界磁添加励磁制御に回生ブレーキ付の6800系としてバージョンアップすることになりました。
さすがに、もう抵抗制御は時代遅れというわけですね。
6800系は1M方式であることから6000系の増備車とされることもあるのですが、
外観・客室などは、6500系に合わせて変更されており、
6500系の2連バージョンと考えた方が理解しやすいかもしれません。
すなわち、6800系初期車(01〜08F)は、6500系初期車(01〜17F)と同様「鉄仮面」デザインですが、
6809Fからは大型の正面ガラスを採用した「ゴーグル」デザインに変わりました。
側面が連続窓に変更されたのも、6500系の18F〜と共通します。
またセミクロスシート車(01〜31F)とロングシート車(32〜39F)が存在し、
セミクロスシート車については順次ロングシート化という昨今の流れも同じです。
しかし、6800系が単純に6500系の2連バージョンでないことは、もうおわかりいただけていると思います。

そう、制御方式が違います。

界磁添加励磁制御というのは、国鉄が主体となって開発した方式です。
ちなみに、国鉄に界磁チョッパ車というのは存在しません。
国鉄が、省エネ車両として導入したのは電機子チョッパの201系、203系でした。
ただし電機子チョッパは、高価な大容量パワートランジスタを用いたことから、国鉄最後の量産型通勤車である205系には導入されず。
界磁チョッパより、なお安価な方式である界磁添加励磁制御が導入されることになるのです。
界磁添加励磁制御は、抵抗制御の最終進化形と呼んでよいもので、
デバイスの省コストに加え、直巻電動機を使用できることからメンテナンスでも有利な方式です。
それでいて界磁チョッパに劣らぬ省エネ効果が得られるのです。
6800系が、この界磁添加励磁制御を採用したのは、至極、納得がいく選択だと思います。
6800系が、92年に生産を中止し、そのバトンを新世代のVVVF車である3500系に引き継ぐまで、
6800系は2連×39=78両を数えます。(6500系は、4連×24=96両。)

で、その時期に焦点を当ててみると、
結局「鉄仮面」は84年〜87年の名鉄通勤用モデルということになります。
4連用の6500系が「ゴーグル」タイプにイメージチェンジした87年。
2連用の6800系もともに「ゴーグル」タイプに変更されてますものね。

このへんでまとめてみましょう。

「鉄仮面」が3つの正体(=3通りの制御方式)をもつのは、
ちょうどその時期が抵抗制御から、省エネタイプの新方式に移行するタイミングにあたったからです。
名鉄にあっては、4連用と2連用でその方式を変更したということですね。

そう言ってしまえば、「なあんだ。」ということになるかもしれません。

しかし、私には、当時の名鉄が、生産コストと省エネ効果を秤にかけていた様子がしのばれるのです。

したたかな「鉄仮面」の素顔を垣間見た。というところでしょうか。



参考文献 「6000系第9次車」「6500系」鉄道ピクトリアル 新車年鑑 1985年版 No448
 「6800系」鉄道ピクトリアル 新車年鑑 1998年版 No496

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