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名鉄8000系 準急たかやま→急行たかやま→特急北アルプスと 3階級昇格したディーゼルカー昭和40年8月、高山本線に20年ぶりの名鉄直通列車 準急「たかやま」が登場しました。準急とはいえ、固定式の連続窓をもつ近代的なスタイルの8000系は、1等車はもちろん、2等車までも、転換クロスシート付で、 当時まだ珍しかった冷房装置まで、備えていました。 翌年には、ブルーリボン賞まで獲得したのも、大いに頷けるところです。 当然、人気も高く、なかなか切符もとれなかったそうです。 翌年(昭和41年)3月。国鉄は急行料金制度を改定、準急「たかやま」は急行「たかやま」に昇格しました。 一等車(=昭和44年5月にはグリーン車に)は昭和44年8月に廃止されましたが、 昭和45年7月、8000系は、富山地方鉄道に乗り入れることになり、 その名も急行「北アルプス」と改め、3社直通運転が始まりました。 新名古屋駅は、もちろん当時から地下駅ですが、地下に乗り入れるディーゼルカーということも加えて、 本当に、話題に事欠かない名車でした。 昭和43年には、特急「ひだ」がデビューし、エースの座は奪われたかに見えましたが、 昭和51年10月、急行「北アルプス」は特急「北アルプス」に昇格。飛騨古川−富山間では唯一の特急となります。 準急→急行→特急と3階級昇格した車両は、これ以外ないのではないでしょうか。 こんな芸当ができたのも、8000系がその登場時から、優れたサービスを提供してきたからに他なりません。 一方、性能的には、ちょっと厳しい面がありました。 まずエンジンです。国鉄の代表的な急行用気動車キハ58系と同様のDMH17H(180馬力)を装備しました。 特急用のキハ82系も同系列のエンジンですが、これを2台装備しています。 でも8000系はキハ28同様1エンジン車が中心となってしまいました。 昭和44年に増備された8200形は、2エンジンとなりますが、 元来、山間の路線である高山線で使用するのですから、初めからこうすべきだったような気もします。 名鉄線内においても、到底電車の加速には追いつけず、現場泣かせの車両だったとも聞きます。 つぎに、車体幅です。名鉄は、中部地方の私鉄を合併、吸収しながら大きくなった鉄道ですから、 国鉄とは違い、急カーブをもつ路線が各所にあります。 そのため車両限界が狭く、キハ58系の車体幅2944mmに対し8000系は2730mmと20cm以上狭いのです。 このため、床下にラジエーターを搭載できなくなり、車端部の床上に搭載しました。扉の横の鎧戸がそれです。 平成元年には、民営化されたJR東海が、キハ85系「ワイドビューひだ」をデビューさせました。 カミンズ社製の強力なエンジンと、82系とは比べものにならないくらいのアメニティをもつ魅力的な車両です。 大人気に気をよくしたJR東海は、平成2年には全ての「ひだ」をキハ85系に置き換えます。 こうなっては、いかな名車8000系でも、その快適性に於いて歴然とした格差をどうすることもできません。 名鉄版キハ85系、すなわち8500系に後を託して、8000系は引退することとなりました。 キハ8200については、20数年の車齢でしたから、引き取り手を探されたそうですが、 いかんせん42tを超える重量が災いして、それもなりませんでした。 8000系以後の特急「北アルプス」名古屋−鵜沼間を17.5kmショートカット。という優位に立つ名鉄に対し、「名鉄(ライバル)にいい思いをさせてなるか。」というJR東海の方針かどうか。 特急「北アルプス」は、料金面でも、様々な割引が使えず、スピード面でも美濃太田で併結する「ひだ」と所要時間が同じになってしまうなど優位に立つことはできませんでした。 そして悲しいかな、8500系「北アルプス」は,わずか10年後の平成13年に、引退となってしまうのです。 8500系は、素晴らしい車両ではありましたが、8000系が登場したときほどのインパクトがなかったからかもしれません。 それほどデビュー当時の8000系は、凄かったのです。 急行塗装だった8000系が、82系と同じヒゲ?を生やしたことで特急に生まれ変わった。 というふうに、簡単に片付けてしまわないでください。 国鉄の準急に合わせておけばよい。という発想を捨て、 のち10年後も特急として、十分に通用する車両を企画した当時の名鉄の大英断。 これを抜きにして、名車 8000系を語ることはできません。
参考文献;鉄道ピクトリアル No370 特集 名古屋鉄道 |
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