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2014/4/30 UP |
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J鉄局TOP>珍車ギャラリー>近江鉄道 701系「あかね号」
恋するフォーチュントレイン 近江鉄道 701系「あかね号」来る電車、来る電車、毎日同じ電車だ…としたら、それはやっぱりつまらないですよね。 私の職場は、阪急宝塚線沿線にあります。 ですから、ピカピカの新車である阪急 1000系 が来たときは、やはりうれしさを隠せないですね。 でも、1000系もいずれその数を増やし、そのありがたさも失せてゆくことになるのでしょう。 対してそのうれしさが失せない車両もあります。8000系です。 京都線と違って、宝塚線はそのほとんどがロングシート車です。 しかし、8000系の宝塚寄りになるこの2両だけが、セミクロスシート車なのです。 その確率は、ざっくり言うと1/10。 私は,8000系に乗り合わせたなら、よほどのことがない限りこのセミクロスシート車に乗り込みます。 もっとも常に座れるというわけではありませんが、ラッキー!という気分に浸れるだけでもうれしいのです。 職場の同僚も「今日、8000系だったよ。」とわざわざ報告してくれます。 こっちまでうれしくなってしまいますね。 700系は、近江鉄道創立100周年(1998年)を記念して作られました。 近江鉄道では、唯一無二の転換式クロスシート車となります。 座席だけではありません。 JR北海道のアルファコンチネンタルなど、イベント列車を彷彿とさせるそのスマートなスタイリングはローカル私鉄のクイーンと申し上げるべき存在です。 「いや、それはちょっと持ち上げすぎでは−−」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。 確かに、長野電鉄の1000系「ゆけむり」、富士急の2000系「フジサン特急」、富山地鉄の16010系アルプスエクスプレス などなど…。 ローカル私鉄でも、特別な車両は存在します。 しかし、それらはかつて大手私鉄あるいはJRの特急車両であり、ローカル私鉄のオリジナルデザインではありません。 対して、700系のデザインは近江鉄道独自のものです。 特に注目していただきたいのは、側窓です。 戸袋のイメージをなくして長く見せた連続窓。そしてこの窓周りにはブラックを配し先頭形状とも一体化を図っています。 これほどの工事を自社工場でやってのける技術。 1編成しか在籍しないのに、これだけのこだわりを見せる近江鉄道に拍手です。 それだけではありません。 「ゆけむり」も「フジサン特急」も列車の時間は決まっています。 言ってみれば特急料金さえ払えば乗車できるのです。 対して700系はというと、特急料金など必要ありません。 でも、いつ来るかはわからないのです。 というのも、在籍する他の2両編成の電車(ロングシート車)と同一運用で使用されるからです。 ですからざっくり言うと1/15の確率です。 700系の運用はHPなどにも公表されてはおらず、特急料金を払ってでも乗りたい700系に乗車するには、まさに運に頼るしかないのです。 「この気まぐれさこそクイーンと呼ぶにふさわしい。」 と私は思うのですが、いかがでしょう。 このページのトップを飾るこの写真は、私が新快速に乗って大阪へ帰るとき、 図らずも米原へ向かう「あかね号」を車中から見てしまったがために彦根で途中下車し、迎撃(撮影)したものです。 「せっかく新快速に座れたのに」とか、「帰りが遅れてしまう」とかいう、恨み言は一切ありません。 ただただ「ラッキー!」という思いでした。 私のような鉄道マニアだけではありません。 沿線住民の間にも、この700系に乗車できるとその日は良いことがある。と言われているそうです。 まさに、フォーチュントレインですね。 近江鉄道700系「あかね号」は、きっと今日も幸せをお裾分けしているに違いありません。 近江鉄道700系は、車体こそオリジナルのデザインですが、 その足回りはというとこれは西武鉄道の401系のものを流用しています。(西武クモハ438-クモハ437→近江モハ701-モハ1701) 「なんだ中古品か。」とは思わないでください。 近江鉄道では、1960年代より自社工場で製作された車体により、車両の鋼体化、リニューアルを図ってきました。 近江形と呼ばれる1形、新近江形と呼ばれる500形も車体はオリジナルのデザインです。 なんと700系は、書類上この1形の改造車(モハ6-クハ218→モハ701-モハ1701)という扱いになっていますが、 これもまた、使えるものはとことん使い回すという近江鉄道の伝統があるからなのです。 ちなみに現在、近江鉄道の主力車両となる800系もそうです。 800系は通勤用車両である西武401系の車体を利用していますが、 当線での車両限界をクリアすべく、妻面の角を欠き取り、前面のデザインもオリジナルのデザインに改められています。 貨物もなくなり、近江鉄道の経営は厳しいものとなっています。 それでも、「始末して、きばる(頑張る)」近江商人の心意気をくんでいただけたらと思います。
参考文献 鉄道ピクトリアル 新車年鑑 1999年版 No676 藤井信夫氏「近江鉄道電車沿革史」 鉄道ピクトリアル 特集「関西のローカル私鉄」 200.5 No'685 |
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