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2016/11/15 UP | |||||||||
J鉄局TOP>珍車ギャラリー>大井川鐵道 井川線 cワフ0形
今なお残る大井川鉄道のアダプター−大井川鐵道 cワフ0形−今回の珍車は、大井川鐵道のcワフ0形です。形式が0というのは珍しいですね。 0系新幹線は世界的にも超有名な名車ですが、21形とか15形とかいうのはあっても0形はありません。 cワフ0形以外に現存する0形は関東鉄道のキハ0形と千葉都市モノレールくらいでしょうか。 もちろん番号だけで珍しいといっているわけではありません。 画像をご覧ください。自動連結器が上下二つ取り付けられているのにお気づきになりましたか。 加えて、ジャンパ連結器という電車などにみられる列車制御用の連結器も取り付けられた他に見られない特徴を有した車両なのです。 大井川鐵道は、東海道本線金谷駅から千頭までの39.5kmの大井川本線(1500V電化路線)と 千頭から井川へ至る25.4kmの井川線(非電化路線)より成り立っています。 大井川鐵道のcワフ0形が2種類の連結器を装備しているのは、井川線の列車を規格の違う本線用の機関車に連結し、 そのまま本線に直通運転させるためのアダプターとしての役割をもたせるためです。 このようなアダプターの役割を果たす車両を「控車」と呼びます。 青函連絡船が現役だった頃、青森駅などでは多くの「控車」を見ることができました。 貨車を連絡船内に押し込む際に相当な重量となる機関車を船内に乗り入れることはできません。 貨車と機関車の間に控え車を数両つなぐことでこれを回避したのです。 また大きな操車場などでも列車編成時の衝撃を和らげるために「控車」は用いられてきました。 それにしてもなぜ、大井川鉄道でこのような車両が必要となったのでしょうか。 ここで大井川鐵道の成り立ちについてみてゆきましょう。 大井川本線は昭和2年に開業。同6年には全通しています。 奧大井の電源開発と木材輸送を目的として作られた鉄道ですが、 創立当初、株主に電力関係の会社が多く名を連ねているのも 大井川鉄道と電源開発が密接な関係にあるのを裏付けているといえるでしょう。 加えて昭和15年時点での大株主の筆頭はというと、内蔵頭(くらのかみ)とあります。 なんとこれは皇室における株主所有の名義人なのです。 大井川上流域は御料林で、大井川鉄道がこの運材に関わるということで株主となっているわけですが、 奥大井の豊かな森林資源がこれまた大井川鐵道の成り立ちに大いに関わっているのです。 一方、井川線は昭和8年に762mmのナローゲージでスタートしたダム建設用の専用線がその母体となります。 戦後、電力再編成に伴い、大井川電力から中部電力に引き継がれた専用線は、 昭和27年着工の井川ダムに建設資材などを運ぶ工事用専用鉄道として生まれ変わることとなりました。 従来からあった千頭−大井川ダム間の10.1kmを改良し、これに接続するカタチで井川(堂下(貨))までの17.1kmを新たに建設しました。 在来線の規格を引き継いだという事にはなりますが、新線部分は30の橋梁と53の隧道からなる厳しい山岳路線です。 最大幅1.850mm 最大高2.700mmのコンパクトサイズに収められたのは建設費を削減するために他なりません。 ところが、井川まで延長された昭和29年4月、1067mmに改軌されたのです。 なぜでしょう。それは、ダム建設に伴って大井川で流送できなくなった木材輸送を請け負うことになったからです。 そしてそれは大井川本線にも乗り入れる必要があったため、これに合わせて改軌されたのです。 ちなみに新金谷に運ばれた木材は、そこから索道で島田まで搬送されたそうです。 ダムの完成以後、貨物輸送は減少しつづけましたが、沿線の美しい景色は観光資源としては一級品です。 旅客輸送の増加にあわせ、昭和34年8月、 中部電力専用鉄道から大井川鉄道へ移管され井川線は地方鉄道として旅客営業することになりました。 お話をcワフ0形に戻しましょう。 cワフ0形は昭和28年に日本車輌で4両製造されました。 ご覧の通り貨車であるというのはいうまでもないのですが、乗務員扉が付いていますね。 車掌さんが乗り込んで、いざというときにはブレーキをかける緩急車の機能を有した車両です。 ワフのワは有蓋貨車のワ。ワフのフは車掌室付きのフという意味があります。 ただ大井川鐵道のcワフ0形が普通の緩急車と違うのは、 前述したように井川線の列車を本線用の機関車につなぐアダプターの役割を持っているということです。 それにしてもなぜ0形なのでしょうか。 昭和58年までは大井川本線でも貨物営業を行ってきました。 当然大井川本線用の貨車もあって、そこにはト100形も存在しました。 井川線の貨車にもcト100形があるわけで、単に重複を嫌ったわけでもなさそうです。 ちなみに井川線の貨車に記された各形式の「c」は、中部電力所有の私有貨車であることを示します。 書類上混乱することもないでしょう。 やはりここは、規格の違う両線で通し運転をするには欠かせない特殊な車両ということで、 その存在を際立たせるという意味があったのだと思われます。 井川線は「電源開発が地域開発に好影響を与えた例」として高く評価されているようですが、 cワフ0形は井川線の貨車を本線につなぐということで、大井川鐵道を一体化させ、その価値を一層高める役割を果たしてきました。 目立たないものですが、アダプターの役割は大きいですよね。 ただ小さいだけに、すぐなくなってしまうのが、アダプターの運命であるようにも思えます。 ところがどっこい大井川鐵道のcワフ0形は生き残っています。 それだけcワフ0形は大井川鐵道にとって特別な存在感を持っているものと言えるのでしょう。 参考文献:鉄道ピクトリアル 特集「大井川鉄道」1984.9 No436 の記事 |
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