J鉄局TOP>珍車ギャラリー>西武鉄道 401系
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クモハ408 |
(新性能化) |
1965年
(1978) |
西武所沢 製 |
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長さ(m) |
幅(m) |
高さ(m) |
自重(t) |
20.000 |
2.930 |
4.065 |
38.5 |
駆動方式 |
制御器(電圧) |
モーター(kw) |
ギア比 |
平行カルダン |
MMC−HT2046A
1500V/DC |
HS-836-Frb
120×4 |
86:15 |
ブレーキ |
定員(座席) |
冷房機 |
台車(製造) |
HSC |
160(66) |
あり×1 |
FS-372
(住友) |
所沢駅 |
鉄道車両諸元表(電車):出典は鉄道ピクトリアル 「特集 西武鉄道」No560 1992 |
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近江商人と西武401系
西武といえば、その創業者は堤康次郎氏。
彼の出身は滋賀県ですから、知識人の多くは彼を近江商人と解釈し、堤家のルーツは近江商人にある、と世間でも認識しているようです。
しかし、有価証券報告書の虚偽記載で問題となった堤家は,公共性の高い鉄道会社を経営していながら納税を回避するなど、
「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」で知られる近江商人の心得をお忘れであるように思われます。
近江商人といえば、「しまつしてきばる。」という言葉に尽きます。
お金を貯めるのに倹約するのは当然ですが、この言葉は、単なる倹約ではなくて、「きばる」−つまり−徹底してモノの効用を使い切れ。
ということを教えているのではないでしょうか。
事実西武は、戦後徹底して、旧型国電のリユース、リサイクルを行い、「質より量」と後ろ指を指されながらも合理的な経営に努めてきました。
西武401系は、そんな流れをうけて生まれた電車です。
401系は、もともと1964〜68年にかけて新製された411系(クモハ411+クハ1451)という2両編成の電車でした。
しかし、新造とはいっても、ツリカケ駆動でモーターはMT-15。
台車はTR-14A(Mc)、TR-11A(Tc)とその足回りは旧型国電をそのままリサイクルしたというものでした。
主に支線区間で、短編成で走るのだからこれで十分というわけです。
それでも寄る年波には勝てず、1972年にMc車のみエアサス台車のFS-40に取り替えました。
そして、1978〜80年にかけて、今度は車体を再度活用するべく新性能化されることになったのです。
1C8MのMM編成となり、平行カルダン駆動のエアサス台車 FS-372を装備しました。
それだけではありません。イエローの新塗装もまばゆい、冷房車として面目を一新したのです。
本線の増結用車両としても十分使える401系は、末永く西武で活躍するのだろうな。と私は思いこんでいました。
ところが、10年後の1990年には、新2000系の導入により、401系は西武を逐われることになったのです。
「なんで、こんな勿体ないことを あの西武が…」
と思っていると、なんとそのすべて(全38両)が他社に譲渡されているではありませんか。(下表参照;鉄道ピクトリアル「特集 西武鉄道」No560 1992)
西武 |
竣工 |
冷房改造 |
廃車年月日 |
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譲渡先 |
車番 |
入籍年月日 |
クモハ401 |
クモハ402 |
1964 |
1978 |
1990/9/30 |
1 |
三岐鉄道 |
クモハ102 |
クモハ101 |
1990/12/21 |
クモハ403 |
クモハ404 |
1964 |
1978 |
1991/2/11 |
2 |
近江鉄道 |
モハ1801 |
モハ801 |
1993/6/18 |
クモハ405 |
クモハ406 |
1964 |
1978 |
1991/3/20 |
3 |
三岐鉄道 |
クモハ104 |
クモハ103 |
1991/6/26 |
クモハ407 |
クモハ408 |
1964/12/23 |
1978/8/4 |
1992/5/11 |
4 |
上信電鉄 |
クモハ152 |
クモハ151 |
1992/11/7 |
クモハ409 |
クモハ410 |
1965/8/27 |
1978/9/8 |
1993/1/18 |
5 |
三岐鉄道 |
クモハ106 |
クモハ105 |
1993/6/28 |
クモハ411 |
クモハ412 |
1965/9/10 |
1979/9/7 |
1996/12/16 |
13 |
近江鉄道 |
|
|
|
クモハ413 |
クモハ414 |
1965/9/25 |
1979/10/8 |
1995/4/23 |
10 |
近江鉄道 |
モハ1807 |
モハ807 |
2002/3/31 |
クモハ415 |
クモハ416 |
1965/10/13 |
1979/11/6 |
1997/3/17 |
17 |
近江鉄道 |
モハ1803 |
モハ803 |
1999/3/31 |
クモハ417 |
クモハ418 |
1966/8/13 |
1979/12/5 |
1997/3/17 |
18 |
近江鉄道 |
モハ1805 |
モハ805 |
2000/1/28 |
クモハ419 |
クモハ420 |
1966/8/25 |
1980/2/8 |
1996/12/16 |
14 |
近江鉄道 |
|
|
|
クモハ421 |
クモハ422 |
1967/3/20 |
1980/3/8 |
1996/12/16 |
15 |
近江鉄道 |
モハ1806 |
モハ806 |
2000/3/31 |
クモハ423 |
クモハ424 |
1967/3/20 |
1980/8/18 |
1994/4/3 |
6 |
近江鉄道 |
モハ1804 |
モハ804 |
1999/6/29 |
クモハ425 |
クモハ426 |
1967/10/14 |
1980/9/9 |
1994/4/3 |
7 |
近江鉄道 |
モハ1802 |
モハ802 |
1999/3/31 |
クモハ427 |
クモハ428 |
1967/10/14 |
1980/1/10 |
1997/3/17 |
19 |
近江鉄道 |
モハ1810 |
モハ810 |
2005/3/31 |
クモハ429 |
クモハ430 |
1967/10/14 |
1980/10/11 |
1994/4/3 |
8 |
近江鉄道 |
モハ1821 |
モハ821 |
1997/3/18 |
クモハ431 |
クモハ432 |
1967/10/14 |
1980/11/4 |
1994/4/3 |
9 |
近江鉄道 |
モハ1822 |
モハ822 |
1997/3/18 |
クモハ433 |
クモハ434 |
1968/6/21 |
1980/12/3 |
1995/4/23 |
11 |
近江鉄道 |
モハ1808 |
モハ808 |
2002/1/29 |
クモハ435 |
クモハ436 |
1968/6/21 |
1980/1229 |
1995/4/23 |
12 |
近江鉄道 |
モハ1809 |
モハ809 |
2003/11/30 |
クモハ437 |
クモハ438 |
1968/6/21 |
1981/2/2 |
1996/12/16 |
16 |
近江鉄道 |
モハ1701 |
モハ701 |
1988/5/12 |
西武 |
竣工 |
冷房改造 |
廃車年月日 |
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譲渡先 |
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入籍年月日 |
ひょっとしたら、こうなることがわかっていて西武は取り替えを進めたのではないか。と思うほどです。
それにしても、大手私鉄の車輌1系列 その全てが、すべて他社へ引き取られたというのは他に例をみないもので、
「まさに珍車!」と申し上げても過言ではないと思います。
さて、この表からもお解り頂けると思いますが、その多くが、近江鉄道に引きとられています。(32両/38両)
加えて、近江鉄道以外の2社が、譲渡された直後に車輌を入籍運用しているのに対し、
近江鉄道では、最低 2年以上と間隔が開いていることが、特徴的です。
−−−しかしまたどうして?−−−
実は1991年の導入当時、401系のような大型車輌は、近江鉄道線の車両限界を超えており、走らせることができなかったのです。
それどころか、補助金により八日市−貴生川間に大型車が入線できるようになったのは、1999年7月。
なんとそれまで801編成は、8年間も彦根の電留線で出番を待ち続けていたのです。
他の電車も同様です。じっと出番が来るのを待っていたのです。
最新の810編成も2005年のデビューまで8年の間、冬眠していました。
私鉄編成表'07年版によると、07年度中に811編成を登場させるとのこと。
さすれば11年以上の休眠車輌が生き返ることになります。
これは凄い。

上信電鉄は、151編成(写真右)に続いて153.155編成を登場させています。
401系が売り切れてしまったため、4連であった西武の801系の中間車に運転台を取り付けるという工事を余儀なくされています。
上信電鉄にしてみれば、
「近江鉄道が使っていないのであれば、是非401系を引き取りたい。」
という気持ちがあったのではと思われます。
しかし近江鉄道は、冷房車でありかつ、2両編成で扱いやすい401系をずーっと冬眠させてきました。
在来車の寿命が尽きるのを待ち、自社工場で少しずつ復活させる。
はじめから、そういう長期的視点にたって401系を導入したのでしょう。
近江商人の商売の考え方は、短期的利益を追うのではなく、長期的視点で物事を考えることに独特の特徴があるように思われます。
私は、401系をこういうカタチで導入する近江鉄道に、これこそまさに近江商人のやり方だなあ。と思わずにいられないのです。
いまだ再デビューを果たせぬ401系が4両いるわけですが、いずれ残りの401系も、近江鉄道で働いている日が来るような気がします。
それは何年後のことでしょうか。

近江鉄道は、明治29年に創設されました。
旧彦根藩主 井伊家の16代当主だった井伊直憲を筆頭株主とする士族が中心でした。
案の定というか、なんというか、高騰する用地買収費で資金難に陥り、彦根―愛知川間が開通する前の1898年1月に当初の経営陣が総退陣することになります。
代わって経営を担ったのが、沿線に居を構えていた近江商人たちだったのです。
近江商人は、元来、日本全国股にかけて、手広く商売をするのがその本来の姿ですが、彼らの郷土愛とノウハウが近江鉄道を支えてきたように思われます。
近江鉄道は、今年6月16日。創立111周年を迎えました。
参考文献;鉄道ピクトリアル 「特集 西武鉄道」 No'230(1969) No'560(1992) No'716(2002) 「特集 関西地方のローカル私鉄」 No'685(2000) |