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  仙台市電 400形 カルダン駆動車  2008.1.19 UP
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仙台市電 400形 410
仙台市電 400形 410
モハ405-07 新性能車 1961年4月 新潟鉄工所 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
11.900 2.220 3.695 36.4
駆動方式 制御器 モーター(kw) ギア比
直角カルダン 直接 40×2 34:6
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
電、空 88(32) なし NP-103
(新潟)
408-410もカルダン車 ナニワ工機製 台車はNK-71
鉄道車両諸元表:出典は「路面電車ガイドブック」誠文堂新光社 1961刊


ツリカケ駆動と直角カルダン駆動の台車が混在する 仙台市電400形

 同一形式であるのにもかかわらず、ツリカケ駆動の旧性能車とカルダン駆動の新性能車が、混在する珍車(珍系列)として
前々回 遠州鉄道の30系をご紹介しました。
 実は路面電車にも、このような例が存在していたのです。仙台市電の400形です。

 仙台市がその都市計画に基づいて作った路線網は、その中央に環状線があり、
ここから郊外へむけ3方向、放射状に路線が延長されていました。
理想的な形状であり、昭和30年ごろまでは、市民の多くが仙台市電を利用し、まさしく市民の足として機能していました。
 しかし昭和40年代ともなると、モータリゼーションの波がこの仙台の街にも押し寄せてきました。
その路線網が、市の交通にとって重要な存在である分、
自家用車も集中してしまうという結果となり、渋滞が多発することになります。

 決められた軌道を走る路面電車は、たとえ1センチでも自動車が軌道内に進入してくれば、
これを押しのけて走るなんてことはできません。
するりするりとすり抜けてゆくように走る自動車のような自由な走行はできないのです。
つまり、路面電車は道路上を走る電車ではありますが、自動車と軌道を共用することはできないのです。
 民営である広島電鉄が軌道内への自動車の通行を許さなかったことが、会社の存続にとって、
いかに重要なことであったかは改めていうまでもないことですが、
公営の路面電車を走らせていた仙台市をはじめ大阪、名古屋、京都といった各都市は、自動車の軌道内通行を黙認し、
都市交通政策の名のもと、路面電車の撤退を余儀なくされてしまうのです。
 仙台市電は昭和51年に全廃されてしまいました。
 環境と人にやさしい交通手段として、21世紀の今、あらためて見直されている路面電車ですが、
あっさり切り捨ててしまった当時の行政の判断は果たして正しかったのでしょうか。
 私には、道路行政への見通しの甘さをもっとも安易な方法で解決したに過ぎないように思えてなりません。
地下鉄が必要な場合ももちろんあります。しかし輸送力にあわせて、共存する道も選べたのではないでしょうか。

自動車の通行を許したがため、路上に立ち往生するようになった、仙台市電は、もはや市民の支持を得られるはずもありません。
見事に経営的にも悪化の一途をたどることになります。

仙台市電の400形は、そんな仙台市電の最後となる車両です。昭和34年に401がデビューします。仙台市電 マスコン KR-8
しかし、最終モデルという割には、ツリカケ駆動に直接制御と旧態然としたものでした。
はっきり言って、これでは開業当初の1形となんら変わるところはありません。
仙台市電は、結果そのすべてが、直接制御の電車となるのですが、
あの渋滞の中、重いマスコンのハンドルをガシン、ガシンと頻繁に操作しなければならなかった
運転手さんは本当に大変なことだったと思います。

直角カルダン駆動の台車 NK-71

ところが、そんな400形の中にも新しい取り組みが見られるのです。
405〜410の6両については、直角カルダンの駆動方式を持つ電車が現れたのです。
自動車のエンジンのようにディファレンシャルギアでもって、パワーを直角に分配し車軸に伝えます。
でも普通、電車のモーターは、車軸と平行に装架されるものであって、
鉄道線においても、直角カルダン駆動は、相模鉄道をのぞけば、新性能電車の初期型にしか見られない方式です。
路面電車においても、これは珍しいもので、
自動車におけるクラッチのような、いわば緩衝装置を持たない鉄道車両において,
とりわけON/OFFを頻繁に繰り返す路面電車ではトラブルが絶えることがなかったのではと思われます。

仙台地下鉄の車庫がある富沢には、仙台市電保存館があります。
実はここに、400形とともに、直角カルダンの台車であるNK-71台車が保存展示されています。

仙台市電 400形 NK-71台車仙台市電 400形 NK-71台車

一回り大きなモーターを装架するせいか、異径車輪をもつこの台車は、ナニワ工機製の台車ですが、
仙台市の担当者の苦悩がそのまま姿に現れたようなアンバランスな姿を呈しています。
でも私には、最初に作られた新潟鉄工所製のNP-103台車で得られた様々な教訓が、この形に集約しているような気がしてなりません。

 408号機が登場する昭和36年当時、もはや、仙台市電の先行きは消して前途洋々たるものではなかったでしょう。
一方で旧型でも十分じゃないかといわれながら、限られた予算のゆえ、自動車の部品を流用しつつ、
「少しでも乗り心地のいい車両を創ろう。」
と、こだわりつづけた職人魂…。

車体はともかく、このオリジナリティあふれる台車を残しておきたかった仙台市の担当者のお気持ちが私にはわかるような気がしました。

仙台市電 400形 415 モハ415
(ラストナンバー)
ツリカケ駆動 1952年3月
(1992.6)
日本車両 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
11.900 2.220 3.725 13.7
駆動方式 制御器(電圧) モーター(kw) ギア比
ツリカケ 直接 38*2 63:14
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
電、空 84(28) なし N-107
(日本車両)
仙台市電 400形ラストナンバー 415 と NK-71形台車
「路面電車ガイドブック」誠文堂新光社 1961刊

保存館の目玉は、創業時の電車である1形です。
昭和51年。仙台市電が廃止されたときに、見事に復活を果たし、ラストランをしました。
市民は感動をもってこの電車を見送ったとあります。
これもまた素晴らしいことです。

でも私にとって、この保存館で一番印象に残ったのは、いかにもアンバランスな 「NK-71」台車でした。

−鉄道車両写真集−
仙台市電 

参考文献;鉄道ピクトリアル 「路面電車再見特集 」No319
「路面電車ガイドブック」誠文堂新光社 1961刊

仙台市電保存館 パンフレット  そして、私のお相手をしてくださった職員さんのおはなし。
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