天竜浜名湖鉄道 トロッコ列車 THT101
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天竜浜名湖鉄道 トロッコ列車 THT101 THT100形 THT101 2000.3 名鉄住商改造
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
14.186 2.790 3.560 18.6
編成重量60.1t
定員 TH2の出力(rpm) 台車 制動装置
50(50)
補助席を含む
230
(1900)
TR213-2 直通空気B
トロッコ列車そよかぜ号 THT101+THT201-TH211
撮影 天竜二俣駅 2000.8.
種車はトキ28963(JR貨物)S44 日立
鉄道車両諸元表:出典は新車年鑑93年版 鉄道ピクトリアル
日本のローカル私鉄(寺田裕一氏)

 重量級トロッコ列車-天竜浜名湖鉄道そよかぜ号-  

現在、長良川鉄道ではトロッコ列車の運行はありません。
その理由は、トロッコ列車の脱線事故であるということは前々回お話ししました。
ところで、機関車が大破したというのならわかりますが、復活しなかったということは、
他にも理由があったと考えるべきです。
当初、好評を博した長良川鉄道のトロッコ列車ですが、事故当時の乗客はわずか10人だったということを考えれば、
人気に一時の勢いがなく、リピーターを獲得できなかったということにもなるのではないでしょうか。

つまり長良川鉄道のトロッコ列車は、もはや営業的にうまみのあるものではなくなっていたともいえそうです
天竜浜名湖鉄道も、トロッコ列車の運行を取りやめました。
事故があったわけではありません。
車両台枠に亀裂が入ったため、2007年やむなく運行を中止したということだそうですが、
こちらも、それだけが理由とは思われません。

思えば東海地区には数多くのトロッコ列車が運行していましたが、今はその全てが姿を消しています。
トロッコ列車は,もはや飽きられてしまい営業的にうま味がなくなったということでしょうか…。

一方、他社を例にとれば、南阿蘇鉄道は機関車を新調し車両もリニューアルしています。
嵯峨野観光鉄道も好調で、秋の観光シーズンなどは予約なしには乗車できないほどです。
どうやら、その理由は、その会社毎に考えてみる必要があるようです。

いわゆるトロッコ列車は、当時国鉄をお払い箱になった無蓋貨車を有効利用しようとしたのが最初です。
当然乗り心地のいい物ではありません。
しかしそのごつごつした乗り心地もまた、今までにない感触ということで結構好評を博しました。
ただ、それは開放型の客車であったからです。
確かに長く乗り続けるにはツラいところがありますが、眺めは抜群。
谷間の川風に吹かれるのも、ひんやりしたトンネル内の清涼感も本当に気持ちがいい。
本当に天気さえよければ、快適な鉄道の旅を楽しめます。

ところで長良川鉄道のトロッコ列車ですが、私も乗ってみました。
5両編成のうち開放型のいわゆるトロッコ車両は、わずかに1両。他は車掌車改造の客車です。
車掌車は密閉型であり、外の景色を楽しもうにもその窓は極めて小さいのです。
不意の雨天時における避難場所としても、その息の詰まるような車内は、雨にたたられた旅人の不幸を増幅するばかり…。
一度、車掌車に乗ってみたいという思いで、長良川鉄道を訪れた私のようなものはさておき、
一般の旅人にとって快適な鉄道の旅を楽しむ車両とはいいがたいものでした。
…でも、思えば貨物列車の車掌さんは、こんな車内で長時間仕事をされてきたわけです。
ご苦労を偲ぶとともに、長良川鉄道には、貴重な体験をさせてくれたと感謝しています。決してイヤミではなく。

さて、うまくゆかなかった理由を車掌車にばかり押しつけたようですが、それは違います。
トロッコ列車は、元来長時間乗るものではないということを言いたいのです。

トロッコ列車の運行を取りやめた例として、次に天竜浜名湖鉄道をみてみます。
そよかぜ号と命名されたTH100、200形は、長良川鉄道のトロッコ列車同様、
もと国鉄の無蓋貨車を改造したものでした。
違いは気動車牽引のトロッコ列車であるということですが、
無蓋貨車であるトキ25000に運転台を取り付け、牽引車であるTH211を制御するという、なかなか意欲的車両でした。天竜浜名湖鉄道 トロッコ列車牽引用DC TH211
デザイン的にも、なかなかの出来ですし、
レトロな木質感のインテリアは、トキ25000がもともとスチール製であることを感じさせません。
サイクリングトロッコとして自転車を6台積み込めるというのも
おもしろい取り組みです。

ただ、軽量ディーゼルカーで出力が250psのTH211に、
重量級無蓋貨車であったトキ25000をそれも2両(計36.6t)ひかせるというのはちょっと無理があったのではと思われるのです。

元祖トロッコ列車である「清流しまんと号」も気動車牽引です。
が、250ps×2のエンジンを積むキハ54で
10.5tのトロッコ客車(トラ45000)を1両牽いているにすぎません。
同じくJR四国の新しいトロッコ列車も気動車牽引ですが、
こちらは,もと特急用のキハ185が牽引します。
パワーウエイトレシオが、違います。

天竜浜名湖鉄道のTH211は、本来単行で運転することを考えて作られたものです。

また、貨車のブレーキは、通常自動ブレーキですが、
THTでは2両とも、TH211からエアーの供給を受ける直通ブレーキに改造されました。
これもちょっと無茶な話です。
おまけにTHTには、ドアエンジンまで付けたわけですから、
運転手は、エアー不足を常に意識していないといけない車両だったのではないでしょうか。

もっとも「そよかぜ号」は高速運転するわけではありません。
できなかったというのが真相なのですが、
ゆっくり走る分には何の問題もないとされたことに問題があったと思われるのです。

私は、「そよかぜ号」にも乗車しました。
エンジンがブンブン唸る割には本当にのろいのです。
浜名湖畔の風景を楽しもうと期待していたのですが、
思いの外、景色のいい区間は短いのです。
ですから、どうということもない景色の区間については、
「こんなに徐行してくれなくてもいいのに…」という感じでした。
三ヶ日から天竜二俣まで、長い旅だったという思い出が残っています。

夏休みでもありましたので、家族サービスにと思って子どもたちを乗せてやったのですが、
折からの暑さに加え、対向列車の交換時間待ちで子どもたちはとうとう伸びてしまいました。

やはり、トロッコ列車は長時間乗るものではないのです。

のびてしまったのは、TH211も同様ではないでしょうか。
走行距離のわりにはハードな仕事が祟ってか2005年には引退し、
新型のTH3000形(350ps)が、これにとって変わりました。

トロッコ列車の運行は、走らせればいいというものではないと実感した次第です。

南阿蘇鉄道や嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車が、存続するにはそれなりの理由があります。
これらについては、こちらをご覧ください。
 
珍車ギャラリー 南阿蘇鉄道 DB10 へJUMP

珍車ギャラリー 嵯峨野観光鉄道 SK300 へJUMP

一方で新しいトロッコ列車も誕生しています。
2009年、この春開業にこぎ着けた、「やまぎんレトロライン」です。
門司港駅から関門海峡沿いに伸びていた貨物線跡を再利用した。
いわば、街中を走るトロッコ列車です。
こんなのが、果たして成り立つのだろうかと思いましたが、
多くの乗客が列をなして乗り込んでいるのに面食らってしまいました。
団体客と遭遇したわけではありません。
海峡を挟んだ様々な乗り物とセットされたキップなどが用意され、思い思いのキップを皆さん購入されています。

満員で出発した列車は、片道10分ほどで終点に着いてしまいました。でも
わざわざ路線を付けたのではないかと思うほど景色がよく、なおかつ変化に富んでいるのです。
最後にはトンネルもありちょっとした旅行気分です。

このトロッコ列車を運行するのは、平成筑豊鉄道。
運転区間を景色のよい区間に限定し、頻繁に運転することで
他の観光資源との相乗りも考慮して多くのお客様に楽しんでいただくというコンセプトで成功しているのだと感じました。
「長距離乗っていただかないと、収益が上がらない。」
と考えるのもわからないではありません。
しかし、「やまぎんレトロライン」のようにたとえ10分間でも、その眺めが印象的であれば、楽しい思い出になります。
今や九州屈指の観光地となった由布院には、JR九州が「トロQ」というトロッコ列車を走らせています。
当地へは、鉄道以外の交通機関で訪れる方も多いわけです。
そんなお客様にも気軽に鉄道の旅を楽しんでもらうことも視野に入れて運行するのが、JR九州の「トロQ」です。
「やまぎんレトロライン」と同じコンセプトで、列車本数を増やし、数多くの乗客を獲得しているようです。

さて天竜浜名湖鉄道の「そよかぜ号」ですが、出力不足はさておき、
とりわけ眺めのよい三ヶ日-気賀間で往復させ、
奥浜名湖観光の目玉として位置づけることは出来なかったのでしょうか。

東名高速道路三ヶ日インターにも近い当地区は、車で旅するには実に恵まれたところです。
マイカー客頼みというのは、多少悔しい感じがないではありません。
しかし、発想を切り替え、
気賀駅近くに駐車場を用意し、
マイカー客のみならず、観光バスも誘致し柔軟に臨時列車も運行する体制をとっていれば
「そよかぜ号」は乗車定員も多いのです。
多くのお客様に奥浜名湖の魅力を満喫してもらい、
地域にとっても価値ある存在となったのではないでしょうか。

参考文献;鉄道ピクトリアル 新車年鑑 2000

            
-鉄道車両写真集-
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