J鉄局TOP>珍車ギャラリー>東武鉄道 57系(5700系)C編成 モハ5704
 |
モハ5704 下今市駅 |
モハ5704 |
(もと5720) |
1953年 月
(1965改造、改番) |
汽車会社製 |
|
長さ(m) |
幅(m) |
高さ(m) |
自重(t) |
18.700 |
2.840 |
4.160 |
38.7 |
駆動方式 |
制御器(電圧) |
モーター(kw) |
ギア比 |
つりかけ
もと直角カルダン |
ES534A
1500V/DC |
TDK528
110×4 |
|
ブレーキ |
定員(座席) |
冷房機 |
台車(製造) |
ARE |
74(74) |
なし |
*TRT-52
(東芝) |
鉄道車両諸元表:出典は鉄道ピクトリアル「特集 東武鉄道」1981.7 No392 |
|
初めて直角カルダン駆動を導入した特急用電車 東武鉄道 5700系(C編成)
昭和26年、戦後の混乱期も一段落し、人々の心に旅へのあこがれが戻ってきたそんな時、
首都圏の私鉄に、クロスシートのロマンスカーが相次いでデビューしました。
小田急の1700形と東武の57系です。
ともにSE車やDRCのような華やかさはありませんが、
端正なスタイルは往年の特急車の品格を備えています。
しかし57系は、通勤用車である78系とパッと見た感じ、マスクは同じですし、
国鉄の急行電車であった42系を思わせる旧態然とした車体です。
ところが、1700形が、早々に姿を消したのに対し、57系は平成3年まで、
それも、ほぼ原型に近い姿で40年近く生き延びたのです。
ロングシート改造もされていませんし、冷房改造さえされていません。
彼らが生き延びてこれたわけは、いったいなんだったのでしょう。
彼らが登場したのは昭和26年〜28年。
じつは、登場時彼らには、結構バリエーションがあったのです。
まず、”猫のひげ”と呼ばれたA編成(昭和26年)です。
非貫通の2枚窓でヘッドマークから伸びた3本のひげがいかにも愛嬌満点でした。、 5700-700、5701-701
そして貫通型で半流線形のB編成、(昭和26年から27年) 5710-710、5711-711
最後にB編成と同じスタイルながら、直角カルダン駆動となるC編成(昭和28年) 5720-720、5721-721
の12両です。
それにしても旧態然としている、彼らにカルダン車がいたのです。
それだけではありません 5704(もと5720)は、営業運転では最初となる直角カルダン駆動を採用していたのです。 小田急1700形の後継となる2300系にもこのメカは組み込まれたのですが、
東武の5720形が彼らに先んじてこれを採用していたとは、ちょっと驚きです。
直角カルダンといえば、東急の”青カエル”こと5000形が有名で、(当局の珍車ギャラリーでも熊本電鉄に移籍した5000形を取り上げています。)
狭軌用の台車にモーターと継ぎ手をいかにして組み込むかという新性能車登場時における、苦心の作と申せましょう。
無理している分、案の定、小田急でも東武でもトラブル続きだったようです。
軽量車体とセットで開発された東急5000形や、相模鉄道の車両など、量産されていった例もありますが、
新性能車の主流は平行カルダン駆動となってゆきます。
限られた数の車両を特急用としてやりくりしていた当時、5720形は現場泣かせだったのではないかと推察されます。
でも一方で、手のかかるおてんば娘ほど、親にはかわいいモノであり、
保守にあたった方々にとっては、ひときわ愛着を感じておられたのでは…とも思うのです。
また、他のツリカケ駆動車も、これ以上のトラブルを避けるため、ことのほか手厚く手入れされたような気がしてなりません。
結局、懸命の手当もむなしく、車両保守の問題から、
直角カルダン駆動搭載のC編成はA、B編成と同じツリカケ駆動に改造されることになりました。
また、運用上の問題から、”猫のひげ”A編成もB編成と同じスタイルの貫通式に改造されました。
もはや、5700,5710,5720と区別する必要がなくなり、昭和40年。5700形として改番されるのです。
5710-710→5702-702
5711-711→5703-703
5720-720→5704-704
5721-721→5705-705
57系が、特急車として活躍したのは、1700系が出そろう昭和32年までと短いのですが、
2両編成のユニットで、結果として同一性能となった57系は、臨時列車あるいは団体列車用として使うのには、
大変、使いやすい重宝な車両となったといえるでしょう。
1720系DRCは、完成された特急車であるがゆえに昭和48年製の1781Fまでもが、
100系スペーシアが出揃う平成3年にまとめて廃車されてしまったのですが、
おもえば、なんと57系は、この平成3年まで活躍していたのです。

参考文献;鉄道ピクトリアル 「特集 東武鉄道」1981.7 No392 1997.12 No647 |