鉄道写真管理局 豊橋鉄道 3702 2007.3.4UP
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豊橋鉄道 3700形→豊橋モハ702→モ702→モ3702(ワンマン化S46年)
モ3702 昭和38年7月
入籍
昭和2年5月 日本車輌 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
12.432 2.260 4.200 17.0
駆動方式 制御器 モーター(kw) ギア比
ツリカケ 直接制御
DB1−K7S
HS306E
33×2
65:14
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
空.電 100(28) なし Brill-39E系
(日車)
もと名古屋市電1204

−−−豊橋鉄道の新型LRV 800形と3700形との共通点−−−

*3702の生い立ち

3702は、名古屋市電1200形1204として、昭和2年登場します。
狭軌線用としては国内初の半鋼製車輛で、小さい窓に大きな腰板、
そして全身に打ち込まれたリベットは、がっしりとした作りとともに、重厚なイメージを与えています。
豊橋鉄道には、昭和38年にやってきました。
モ700形(入線時はモハ700形)として、活躍していましたが、昭和43年にワンマン化。
現在のモ3702を名乗るようになります。
僚機の3両は既になく、3702のみが、レトロ電車として、いわば動態保存車的に残されてきたわけですが、
寄る年波には勝てず、いよいよこの春、現役を引退するというニュースを耳にしました。
同鉄道3100形とともに名古屋市電の貴重な忘れ形見であるだけに残念です。
(鉄道ジャーナル No488 2007.6によると、3702は。「3/25のさよなら運転を最後に現役を引退…
引退後は、旧市民病院跡地に豊橋市が建設予定の「こども未来館」に展示される。」とのことです。

*800形

800形は、平成17年4月全廃された名鉄美濃町線、田神線からやってきた部分低床のLRVです。
部分低床構造とは、中扉をノンステップとし両端を従来のステップ付きにしたものです。
とくに車いすで乗車される方にとっては、ここを出入り口とすればよいわけです。
しかし、中途半端であることには変わりはありません。
なぜ全面低床化がなされず、こんな複雑な構造となってしまったのでしょう。

低床化するためには、まず車輪を小さくすればいいのですが、そうは簡単にはゆきません。
回転数がアップすることから、軸受けと車輪そのものの摩耗が激しくなります。
モーターも超小型で高トルクのものが必要となります。
またポイントを通過する際の安定性にも問題が生じるのです。
そこで考えられるのが軸なし車輪です。
これならかつて車軸が陣取っていた部分に床面を落とし込むことが出来ます。
路線バスでも、これと同様のノンステップ車が増えてきました。
確かに乗車するのにはラクでいいのですが、
車内にドドーンとタイヤハウス部分が陣取るようになりすっきりしないのも事実ですね。
さてバスでは、エンジンや駆動装置を後輪に集中していますが、基本的に路面電車は、前後はありません。
そのためモーターや駆動装置を車輪の外側に配置することになります。
LRT先進国の欧米では、当たり前になってきているこの構造も、日本では従来の構造と大きく違うことから、
保守の面からも導入は慎重にならざるを得ません。
そこで、在来の構造を踏襲しながら、低床化の実を取ろうとしたのが、部分低床構造をもつ800形なのです。
前後にむけて10%のスロープで結んだ構造により、
車体中央部の床面の高さはレール面より420mmとなっているのに対し、両端部は720mmとなっています。
このため台車は、このスロープの斜度に合わせるため、
外側610mm(動軸)と内側530mm(従軸)とで車輪径が異なるという珍しいものとなっています。

豊橋鉄道800形豊橋鉄道800形801
モ801 平成17年入籍 平成12年年6月 日本車輌 製
長さ(m) 幅(m) 高さ(m) 自重(t)
14.780 2.220 3.650 18.9
駆動方式 制御器(電圧) モーター(kw) ギア比
WN駆動 VVVFインバータ制御
600V/1500V
60×2 84:15
ブレーキ 定員(座席) 冷房機 台車(製造)
MBS-R
電気指令式
電磁直通空気B
72(30) CU771A
21000*1
FS567
(住友)

豊橋鉄道3702 台車

*異径車輪台車

海外では先例があるものとはいえ、
日本では珍しい異径車輪台車ですが、じつは、
昭和2年生まれの
3702もまた
異径車輪台車を履いている
のです
(前述の3100形も異径車輪台車付き。
他に現存するものとしては、800形以外にはないと思われます。)
もちろん、両端の出入り口付近の床を少しでも低くするためです。
外側610mm(従軸)と内側690mm(動軸)とで
車輪径が異なっています

わずか8cmのサイズダウンでどれほどの効果があるのかは、
わかりませんが、保守の点ではわずらわしいこの台車をあえて導入した
当時の名古屋市交通局のこだわりに敬意を表したいと思います。

*豊橋鉄道という会社

そして、このこだわりを34年の長きに亘り受け継いだ豊橋鉄道という会社も、ハンパではありません。
豊橋鉄道という会社は、どういう会社なのでしょう。
豊橋鉄道は、名鉄傘下の会社であり、三河田原へと伸びる渥美線が、その本体であるように見えますが、
渥美線は、昭和29年。名鉄より譲り受けたもので、軌道線の東田(あずまだ)本線の名が示すように、
軌道線こそが豊橋鉄道の本体で、大正15年に開業した豊橋電気軌道がその前身なのです。
親会社である名鉄が、岐阜市内線を切って捨てたのに対し、
豊橋鉄道は、なんとか路面電車を活性化させようとする姿勢が、そこかしこに見られます。
昭和57年には国内においては14年ぶりとなる新線が建設されました、(井原−運動公園)
平成10年には、豊橋駅周辺の再開発にあわせて、駅前まで路線が延長されました。
これは建設省の「路面電車走行空間改良事業」の適用第1号でもあります。
これ以外にも、路面電車サミットの開催など
路面電車と共に生きてゆくことを前面に打ち出した会社といえるでしょう。

路面電車は、環境に、そして人に優しい交通システムとして注目されるようになり、
広島電鉄をはじめ多くの路面電車事業者が低床のLRVを導入するようになりました。
異径車輪台車をもつ名鉄のLRVを引き継いだ豊橋鉄道は、独自の低床車輛を導入する予定と聞きます。
古い電車が引退するのは本当に寂しいことですが、
豊橋鉄道がどんな新車を登場させるのか。楽しみでもあります。

−鉄道車両写真集−
豊橋鉄道の路面電車たち 

豊橋鉄道3102豊橋鉄道3702















参考文献
;路面電車ガイドブック(東京工業大学鉄道研究部)誠文堂新光社刊 S51刊
;「まもなく誕生。名鉄の部分低床車」(柚原誠氏)鉄道ピクトリアル#688 H12刊


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